第33話:0.0秒で視た未来
白黒の世界ですべてが止まって見える。
俺も周りも一切動かない。呼吸すら止まっている。けれど思考は普段通り出来る。
魂の勇者能力:心眼
この力には何度も助けられてきた。
だけどおかしい、この能力が使えないことは一昨日確認した。なんだったら女神が封印したとも言ってた。
だからありえない。でも今、確かに発動している。 なぜ?どうして?
・・・いや、今はそんなことどうでもいいか。
こいつが使えるならまだ出来ることがある。なら使うさ!
今攻撃を繰り出している蛇の尾に集中する。そうすると赤色の輪郭が表れてゆっくりと進んでいく。そして刺さった場所には見知った冒険者、ハーミトがいた。
こいつ・・・ハーミトさんが狙いだったのか...。
多分、一緒に透明化を解呪しまくったからヘイトが向いていたんだろう。
次に俺がどう動くべきかを考える。
走っても間に合わない。剣は届かない。となると魔術で何とかするしかない。
有効だった火属性で火柱でも作って進路を塞ぐか?
いや、ダメージは通るが止めることはできない。
なら実体のある土魔術で壁を作るか?
そう考えると地面から青色の土壁が盛り上がってきた。
蛇の尾から伸びた赤い輪郭と青色と土壁が激突する。結果、赤が弾かれた。
よし、瀕死で動きが鈍くなってるおかげか威力は落ちてる。これなら防げるだろう。
ならそのあとは?防がれた後、奴はどんな行動をする?
再び俺と戦うか...もう一度彼女を狙うか、または別の行動を起こすか...。
その時の攻撃方法は?右からの噛みつき?尻尾での刺突?俺に何が出来る?どう対処する?
世界の至る所で赤色と青色が衝突しては消え、衝突しては消えを繰り返していく。
そうやって止まった時の中で起こりえる全ての可能性を予測していく。
何度も・・・何度でも・・・
・・・これはダメ、被害が出る。こっちの場合は俺が死ぬ。
これは倒せるが…さっきの土壁が邪魔になってしまう可能性がある。
なら最初からやり直す。
考えることを止めない。今、この時、この瞬間・・・時間は無限にある。
この止まった世界で、どれくらい時間がたっただろう?
分からない。だが現実は停止しているため問題ない。
世界は青く染まっている。
もう未来は決まった。
正直、これでもまだリスクはある。だがこれが最適解。まだ世界は動かさない。心の中で詠唱を開始する。使うのは全元素魔法。そう魔術じゃない…これは魔法だ。そしてこれが勝つための切り札だと思っている。本来ならこれ単体では使えない魔法。だが心眼が起動している今なら出来る。
集中しろ…
「我、糸を紡ぐ者〉」
「〈森は礎となり、大地は鋼と成す〉」
「〈火は打ち響き、闇は魔を望む〉」
「〈光はそれを抱き、水はそれら癒す〉」
「〈雷は導き、風は矢のごとく運ぶ〉」
「〈これら自然の災い、されど転じて恵みとなる〉」
「〈故に危うく、されど美しき剣と成れ!〉」
そして世界が動き出すと同時に
「〈全属聖剣:エレメンタルセイバー!〉」
詠唱を完了させた。
Topic:心眼
世界がモノクロに変わり、自分を含む全ての時間が停止する。
正確には知力が飛躍的に向上し、高い演算状態になっているため世界が停止したように見える。
敵の攻撃を赤い輪郭で再現、自分の攻撃を青い輪郭で再現するこで起こりえる未来を予測する。
例えば・もしも・あるいは、の場合も計算するため予測を終えるのには膨大な時間が掛かる。
止まった時間の中で魔術・魔法の使用は不可。詠唱は可能。
時間を再開してもその結末が正しく終えるまで、世界がゆっくり流れる。
また、発動中は瞳の色が変化している。
要はゼロワンの初変身時に行ったラーニングをイメージするとわかりやすいです。




