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魂の勇者は元魔王とスローライフを送りたい  作者: ミゼル
第1章:主人公に憧れた者
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33/35

第31話:主人公なら...

多忙による私用で週一投稿に失敗したので3話ほど連投します。

瘴気は人体に悪影響を及ぼす。

症状として動けなくなるほどの激痛と身体麻痺、意識の混濁。酷い場合だと精神汚染による発狂、最悪の場合は死に至る。また、少しでも存在すると再び体に纏わりついて蝕み始める。今動けるのは、瘴気の影響を受けなかった俺のみ。これに関しては昔から効かなかった。多分勇者か転生者が関係していると思う。


・・・とはいえ状況はかなり最悪だ。


動けなくなった人を庇いつつ、奴を倒す。それしかここにいる人達が生き残る方法はない。

でも武器はない、魔力も空に等しい。完全に詰んでいる。



・・・いや、まだだ。


まだ諦めない。


「すみません。武器借ります」


近くで落ちていた冒険者の剣を拝借する。


物語の主人公ってこういう時、諦めたことってあったか?

否、ないだろ。


最後は必ず勝ってハッピーエンドだ。


今、俺が諦めたらどうなる?

ここにいる冒険者はみんな死ぬ。

この村先にいる人達もみんな死ぬ。


諦めて、全滅して、バットエンド?


・・・そんな未来、断固拒否する!


あの日、あの時決めたんだ。

もう二度と、目の前で誰も失わないって!


「だから俺は!」


蛇に向かって走り出す。

ふと、ホルンを出る前にリンに言われたことを思い出した。


ー後悔したことあるんでしょ?


あぁ、それは絶対に忘れることのできない、俺の罪。


ー自由ってなに?後悔すること?


違う。自由ってのは思いっきり、後悔しないよう好きに生きることだ。


ーシンは自由?


「そうさ!だから俺は今、ここにいる!」


全力で剣を叩きつける。まだ硬い部分だったのか鱗によって弾かれてしまった。

ならばと、近くにあった傷がついている場所に突き刺す。今度は通った。


「ShaaA⁉」


まだ動ける奴がいたとは思わなかったのだろう...悲鳴が聞こえる。

その後尻尾が飛んでくるが横に大きく跳んで避ける。

お互いに睨みつける目が交差する。


「やっとこっちを見たな」


このまま注意を俺に向ける!

冒険者達が動けなくなってしまった以上、被害を出さないためにも俺にヘイトを向けさせるしかない。


「うおぉぉぉぉぉ!!」


声を上げ、再び切りかかる。前方を尻尾が薙ぎ払ってくるが飛び越えて避ける。

その際に兜割りの応用で傷が酷い場所を的確に攻撃をしていく。

しかし、以外にも刃は通らなかった。


もしかして瘴気によって強化されているのか?


口元観察してみると少し黒い靄が溢れていた。


「だったら!」


既に空になったであろう魔力を無理やり絞り出し、スカイステップで再び跳ぶ。

瘴気で強化されている可能性があるうえ、また再びブレスが来るか分からない以上、口は最優先で潰す!


「セェイ!」


跳ぶ際に腹へ斬り上げをお見舞いしつつ、頭上より高く跳ぶ。

ポーチから投げナイフを取り出し顔の横、目をめがけてぶん投げる。


当たらなくてもいい。何かリアクションさせるのが目的だ。


そして横に避けてくれた。俺は重力に従って落下していく。

奴から見れば俺は空にいて身動きの取れない満身創痍な獲物。

そして己は消耗した肉食である蛇。


「口を開けてくれて、ありがとなぁあ!!」


口の中に入った瞬間、舌に向けて剣を突き立てる。


「!!」


声にならない悲鳴が聞こえるが、一切気にしない。


「知ってるか?魔力が無くても魔術を使う方法ってあるんだよ!」


正直原理とか俺もよくわかってないけど、自身の生命力を犠牲にすることで魔力の変わりになるらしい。

やり方とか知らない。でも今なら出来る気がする。


「中から吹き飛べ!〈フレイムバースト!!〉」


自身を中心に爆炎が巻き起こる。

うわすっげぇ!!自分という存在から抜いてはいけない何かを感じつつ放った一撃はいつもより遥かに威力が高かった。


ただその威力分衝撃がすさまじく口から放り出され、俺は勢いよく地面に激突した。


「ガハァ!?」


肺から息が抜ける。左腕から凄く嫌な音がする。

数回バウンドしてしまったが、何とか体制を立て直して確認する。


・・・うっわ腕が変な方向に曲がってる。


どっからどう見ても骨が折れている。

回復したいが魔術は攻撃に使いたいのでアサルトリングのリジェネで我慢する。

回復はできないが気休め程度の痛み止めにはなるだろう。


ふと…影がさした。


「あっぶね⁉」


まじかよ…口の中爆発したのにまだ生きてるのかよ⁉


「ハッ!上等だ!お前が倒れるまで、命燃やしてやるよ!」


だが先程拝借した武器は口の中で突き刺した後どっか行ってしまった。

また武器を拝借させてもらおう。近くで使えそうな武器は・・・あそこか。


「〈シャイニングランス!〉それと〈リフレクト!〉」


光の槍が蛇へ向かうが避けらる。だがその槍は反射され背後から突き刺さる。

あは、やっぱり威力が高い!いつもだったら弾かれてただろう攻撃が通る。そして怯んだ隙に武器を回収する。


それにしてもちょっと距離がマズイな。今武器を回収した位置は瘴気で動けず倒れている冒険者達が近い。急いで離れないと攻撃が流れてしまい被害が出る。

とりあえず走って距離を詰める。途中、尻尾の先端が鋭くなったのが見えた。


「また刺突か?見えてるのに二度も喰らうものか!」


でも避けるのは無しだ。今言った通り直ぐ後ろに人がいる。


だから上に弾く!片手だけだろうがやってやる!

いつでも弾けるように剣を下段に構える。



・・・来る!


タイミングを合わせて、尻尾の刺突を打ち上げる。







・・・おい待て、なんか高くないか?


迎撃しようとした尻尾は頭上よりも高い位置にある。まるで狙いは俺じゃないみたいに。

フェイントの可能性もあったがとっさに後ろを向く。尻尾の矛先には見覚えのある人たちが倒れていた。


「…っ!させるかぁああ!!」


急いで走り出すが間に合わない。剣も届かない。手が届かない。

それでもと、手を伸ばす。


絶対に、諦めない!!






突然、世界がモノクロになった。


そして、世界が止まる。



俺はこれを、この感覚を知っている…。

Topic:生命力

ゲームで言うところのHP。使いすぎると突然死ぬ。

一応寿命ではないので回復はするが魔力回復速度より遥かに遅い。

使用には代償がともなう。何が起きるかは不明。

軽症のものから取り消しのつかない重症のものもある。

また、使用中は魔力と違いどれくらい使ったか気付きにくいため、戦闘中いきなり瀕死になることもある。

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