第30話:ショウキ
その後も消えようとする度に俺とハーミトが解呪する。そして見えてる状態になったら近接職の冒険者が囲って壁となり魔術担当が火属性で削る。そうしていくうちに硬かった鱗も熱されたのか、だいぶ柔らかくなっているようで剣や槍でも攻撃が通るようであちらこちらで傷が目立つ。
動きも鈍くなっている。透明になろうとすらしないのでもう虫の息だろう。
「やっと終わりでしょうか...」
隣で一緒に魔術を酷使していたハーミトを見る。ネヒトさんに肩を支えられていてだいぶ顔色が悪い。
「大丈夫ですか?」
「えぇ、ただの魔力切れです」
「ごめんね、こんな無茶な作戦に付き合わせちゃって」
ハイトさんに確認してもらったがこの戦いにディスペルが使える人はほかにいなかったので解呪担当は俺たち二人だけで行った。
あの野郎、透明を引っぺがす度に直ぐ消えようとしやがった。合わせて20~30発ほどディスペルを使う羽目になったぞ。
おそらく彼女には相当な負荷がかかっていただろう。
「シンさんは大丈夫ですか?」
正直なところ、俺も立ってるだけで結構キツイ。吐きそう。
途中アイテムポーチにマナポーションが入ってるのを思い出して使った。さらに他の冒険者から何本か貰ったくらいだ。
けどそれでも魔力切れだ。
「よ、お疲れさん」
ハイトさんが合流してきた。
「といってもまだ戦ってるから、終わってないがな」
「でも、もう勝ったも同然だろ?」
ハイトの言葉にアックが返す。彼の言う通り勝機はこちらにある。
もうこれ以上何かしてこない限りはここから負けることはない。
まるであの時と同じように…。
だから油断した。
だからこそ注意する。
・・・だから、奴の変化を一番に感じた。
「あいつの口!なんか変だ!」
俺の声に気づいた者は確認しようとするが、勝機と見込んで攻めに行っている人達は警告を無視し、突撃していく。
「この期に及んでいったいなんだって…」
ハイトも訝しげにしながらやつを見る。
そこには、突然頭を天高く上げ口元から何か漏れている蛇の姿があった。
「まさか、ブレスか⁉」
だとしたら魔術じゃないと防げない!
まだ奥の手があったってことか!!
急いで魔術式を展開するが、魔力切れのせいか発生が遅い。
「まずい来るぞ!」
黒い霧が俺たちに向けて放たれた。全員防御は間に合わずに直撃した。
クッソ、警戒はしてたのに手段を用意してなかった!これじゃあの時の経験何も活かせてない!
俺の後悔などに構わず、ブレスを全身に浴び肌がひりつく。
・・・だけで済んだ?
「毒ブレスじゃないのか?」
特に体には何も異常がない。逃げる用の煙幕とかにしては全く濃くないし...なんだこれ?
突如ドサっと誰かが倒れる音がした。
「っ!ハイトさん!?」
さっきまでの話してたハイトさんが倒れていた。
いや、ハイトさんだけじゃない!
見渡すと大勢が倒れ込んでいた。片膝立てて踏ん張っている者もいれば、うずくまって痙攣してる者、なかには一切動かない者もいた。
そして俺とは違いみんなには今の霧が纏わりついていてた。
「おい、大丈夫か⁉」
ハイトに近づいて無事を確認する。何かボソボソ言ってる?
口元へ耳を近づけると辛うじて聞こえた。
「・・・体が・・・痛い…息が、苦し…」
「あ、おい!?」
激痛・呼吸困難・意識を失う可能性。原因はひりつき感覚のあった纏わりつく…黒い霧。
・・・纏う霧?
「まさか⁉」
急いで魔術を詠唱をする。
自分の魔力が足りないとかそんなこと言ってる場合じゃない。
「〈風よ、吹き荒れろ→ストーム!!〉」
大規模な暴風を発生させ周囲の黒い霧を霧散させる。ついでに蛇に近い冒険者たちをなるべく遠くへ吹き飛ばす。受け身とか取れないだろうが許してほしい。
「やってくれたな!!」
この黒い霧の正体、人にとって有害でしかなく、ある意味俺と因縁のある物資。
瘴気だ。
Topic:瘴気
基本的には黒い霧で発生する。
主に魔族が持っていることが多く、魔物で保有しているのはかなり珍しい。
魔族と魔物以外には大変危険な有害物質である。
身体に纏わりつき、放置すると浸食される。
症状は激痛・麻痺・呼吸困難・精神汚染・腐敗・身体能力強化が確認されている。
勇者は能力として高い瘴気耐性を得ているが、一般の人で完全に無効化できる人は少ない。




