第28話:見えざる脅威
身体が痛む中、突き刺さった何かを確かめるべく触れる。鱗のようだが弾力のあるザラザラした感触。
まるで蛇のような皮だった。
にしてもコイツ…
「いつ…まで…刺して、やがんだ、この…やろぉ!」
魔導剣に魔力を通し、突き刺す。
「Shaaa!?」
赤熱した刀身が何かに突き刺さりる。
身体がものすごい速度で振り回されるが、構わず込める魔力の出力を上げる。
高温の刃はさらに深く突き刺さる。
だがこっちの限界が来てしまい魔導剣から手を放してしまった。
それと同時に俺の身体から何かが乱暴に引き抜かれた。
「がはっ!」
受け身が取れず地面を転がり、吹き飛ばされる。
「ぐっ・・・うぅ!!」
急いで起き上がろうとしたが何故か思うように動かない。
このままではまた攻撃が来た時に避けられない。
「な、なんなんだこいつ!?」
近くにいた人が声を上げる。
再び空間が、今度は大きくゆがんでいる。そこには紫の鱗が見える。
空中に双方の光が反射していて、それは獲物を狙うような眼のようだった。
間違いない。ギルドで聞いた蛇型の魔物だ。
思ってたよりもかなりででかい。人なんか一飲みにできそうなほどだ。
「シンさん!」
「ぁ…アック、さ…ん?」
いつの間にか近くにいたのか、守備旅団のみんなが集まってきた。
ただ、意識はしっかりあるのに口も思うように動かないのがもどかしい。
「マスカ!」
「あぁ!村へ連れて戻るぞ!」
「シンさんごめんね。止血はできないから我慢してね。今はここを離れるよ!」
マスカさんに背負われ、俺達はサンソン村へと向かった。
「シンさん!?」
「おい!大丈夫か⁉」
村に戻ると再びハーミトとハイトに会った。
何かに応えようにも今の俺にそんな余裕はない。
「ハーミト、回復できるか?」
「傷が深いですがやってみます!」
杖を腹の上に掲げ、詠唱をする。
「〈光よ、彼の者を、癒したまえ→ヒール!〉」
暖かな光と共に少しずつ傷が癒えていく。
ハーミトさん支援職としてマジで優秀過ぎない?
身体に穴空いてるのに場違いなことを思いつつ治療を受ける。
「ネヒト、何があった?」
「ヘビだ!ギルドで言ってたヘビ型の魔物が出たんだよ!」
「なっ!」
ネヒトの言葉にハイトは驚愕していた。
「馬鹿な!ここからは確認できなかったぞ!?本当にあの大型の奴なのか?」
そうか、ハイトは情報を集めるために一度ここに来た。その時にあの魔物を見たって言ってたっけ。
だから姿を知ってるのか。
「あいつ…透明に…」
傷が塞がってきたので答えようかと思ったが、なんだこれ?…すごくしゃべり難い。
まるで痺れたような・・・っ!
「ハーミ…トさん…ディス…べル…」
「えっと、ディスペルですか?わ、分かりました」
一度ヒールを解除して再び詠唱を行う。
「〈光よ、彼の者に、纏いし呪縛を、解呪せよ→ディスペル!〉」
彼女が唱えた瞬間、身体の不自由さが消えた。
「ありがとう、もう大丈夫。あとは自分で回復できる」
自分にヒールをかけつつ、分かったことをみんなに伝える。
「あの魔物は透明、または風景に擬態出来るんだと思う。攻撃を喰らった際は確かに見えなかった」
触れることは確認できているので、消滅ではなく透明が正しい。
「そして攻撃を喰らってしまうと体が痺れてた。恐らく麻痺毒か魔法のどちらかかも…」
「デカくて透明で麻痺持ちって、また面倒くさいのが出たな」
今思いつく中でこの条件に該当する魔物が分からない。せめて姿をしっかり見ておきたい。
「ハイトさん。俺たちはもう一度戦場に戻る。このことをみんなに伝えないと…」
「待てマスカ、俺も行く。ここを指揮する立場だがほかの奴らも彼と同じ状況になってたらマズい。確認ついでに少しでも離脱させる」
「わかった。行きましょう」
守備旅団とハイトは急いで戻っていった。
「俺も、傷が癒えたら行きます」
「シンさん、無茶です!」
「かもね、でも試したいことがあるんだ」
今、俺は一つある疑問が浮かんでいる。
あの蛇が俺を攻撃したときは消えてたのに、なんでそのあと姿を現したんだ?
そのまま消えていればよかっただろうに...。
考えられる候補がいくつかある。
でもどれかが正しければ...
「もしかしたら、相手の透明化を無効化できるかもしれない」
「無効化ですか?」
「あぁ」
今一番可能性が高い仮説を考える。
まずあいつが透明化を解いた瞬間、何があった?何をした?
俺は攻撃を加えた。魔導剣で赤熱した刀身を突き刺した。
その時はまだ透明化のままだった。
そのあと威力を高めるために魔導剣の出力を上げた。
そう、そのタイミングだ。蛇が透明化を解いたのは。
あの透明化は魔力による干渉を受ける?可能性はある。他には?
魔導剣は火属性だ。なら火に弱い?まだあるはずだ。
火・・・ミスリル・・・魔力・・・麻痺・・・毒・・・
・・・あれは状態異常の発展系か?
「ハーミトさん、ディスペルって遠距離から連発できる?」
「え?えっと…遠距離は難しいですが、連続発動は出来なくもないです」
まぁ、もともと遠距離で使用できるものじゃない。
だが連射できるのはありがたい。
「みんなが戻ってきたら相談したいことがある」
後は俺を信じて作戦に乗ってくれるかだが…。
ハイトたちが戻ってくるまで傷の治療に専念する。
ヒールで大分治った。ここからはまた魔力を温存したい。
そこで左手に着けた魔導具、アサルトリングに付与したリジェネイトを起動する。
これは自然治癒能力を高めてくれる。軽傷程度なら数分で治る。
「ちょっとまずい状況になってきたな」
そうしていると、ハイトたちが戻ってきた。
その後ろには何人か別の冒険者がいて人を担いでいた。
「彼らは?」
「君の言った通り奴は麻痺持ちだ。見えないところから攻撃されてやられた」
「死者は?」
「幸い、まだ出てない」
透明な攻撃に対してこの程度の損傷で済んでるのか...凄いな。
「どうやら奴の攻撃方法は尻尾か何かでの刺突がメインらしい」
刺突…確かに俺が喰らったのも刺突だった。
「相変わらず透明ではあるんだが、攻撃してくる部位付近に剣が刺さってんだとよ。それを見てうまく防いでいたらしい」
剣・・・あ。
「多分、俺のやつだ…」
さっきカウンター気味に突き刺した魔導剣がまだ刺さったままで目印になってるか。
でもあれはただ刺さってるだけだ。抜けて落ちてしまうと完全に見失ってしまう。
「ハイトさん、それに守備旅団の皆さんも」
「どうした?」
傷はもう塞がった。立ち上がりつつ言葉を続ける。
「試したい作戦がある」
あの透明化をなんとかする。そのための作戦はすでに思いついてる。
ただ、これにはDランクのハーミトさんを前線へ連れていく必要がある。
彼女は守備旅団のPTメンバーで、今ここを指揮してるのはハイトだ。
だから彼らを待ってた。
「方法なんだが…」
Topic:ディスペル
光属性の解呪魔術。魔力による付与能力を解除する。一部毒などにも有効。
魔力とは関係ないもの、カゼなどの病気には効果がない。
魔術式が普通の術式と違うこと、また魔力制御が難しいため習得してる人が少ない。
扱えれば戦闘を有利に進められる。なお対人などで用いると嫌な顔される。
ゲームで言う身体強化などのバフを開幕解除してくるうざいやつと化す。
・・・なお、
魔毒・呪いを解除するのがディスペル。
病気を治療するのはキュア。
傷を治すのはヒール。
上記3種を統合したハイ・ヒールなどもある。




