第27話:形勢と警世
ハイトさんが来てくれた援軍は人数は少ないが高ランクの冒険者たちで構成されているようだ。
「しかし…こりゃどうなってんだ?あんだけいた魔物達はどうなった?」
彼は情報収集を行っていた張本人のなので、ここの状況を知っている。
着いてみたら魔物が減っていたので不思議に思ったのだろう。
「ハイトじゃねぇか!」
俺の隣にいた冒険者が彼に声をかける。
「説明よりもまだ村の反対側は魔物が多い。援軍はそっちへ回してくれ!」
「む、了解した」
ハイトさんが指示を出すことで救援に来た冒険者達がばらけていく。
「随分と早くないですか?」
さっきギルドでは往復一時間って聞いたぞ?
だけどおよそ10分程で到着してる。
「お前は…さっきの、ええと?」
「あ、シンです」
簡単に説明して貰えた。
どうやらホルンを守っている防衛軍が所有する特別な馬をギルドマスターが領主と打ち合わせした際に
借りたようだ。駿馬と呼ばれており魔導具を装備しているため足が速いらしい。
・・・それはそれとして、その馬の魔導具あとで見せて欲しい。めっちゃ気になる。
「んで?こっちはどうなってる?」
そばにいた冒険者が代わりに説明してくれた。
「・・・お前そんなに強かったのか...」
「疑うのは無理もないです。俺はただの一般人ですから」
「一般人⁉」
おっさん、驚くところそこか?
「え?冒険者じゃなかったのか?」
「違います」
ギルドに一度も登録したことないですし、なんだったら今は身分証もない不審者です 。
「雑談は終わりにしましょう。今は魔物をどうにかしないと」
「そ、そうだな…」
まだ戦いは終わってない。といってもここは今いる人達だけで問題なさそうだ。
彼はここに残りこっち側の指示をすることになった。
俺はハイトさんと村の反対側へと向かった。
「シンさん!ご無事でしたか!」
村の反対側に着くとハーミトさんが駆け寄ってきた。
「俺は大丈夫。他のみんなは?ハーミトさん1人だけ?」
「外にでて魔物と戦っています。私は個人ランクがDなのでここで遠距離支援です」
村に攻めてきた魔物だったが、今は冒険者側が攻めているようだ。
話によると救援に来た高ランク冒険者のうち、魔術に長けている人たちで一気に殲滅魔術を使用したらしい。それによって魔物が減り形勢が逆転し始めているとのこと。
今はさっきいた場所と同じように近接職が外に出て戦っているらしい。
ただ魔術師たちは魔力が枯渇してしまい村の中で休憩中とのこと。
それとハーミトさん含む初期防衛組で個人ランクは低い人はここにいるとのこと。
前線へ出るわけにもいかないから安全なところから支援しているらしい。
「よし、俺も行ってくる」
「え?あ!ちょっと!」
ランク?冒険者じゃない俺には関係ないね。
それと頭痛も収まってきた。俺は急激に魔力を消費しただけであって魔力切れを起こしたわけじゃない。
なのでまだ戦える。
入口付近の魔物はいなくなってたので今度は門から行く。
飛び出すと正面に魔物は掃討され、今は左右で乱戦が起こっているようだ。
そして反対側から来ている援軍との挟撃作戦は成功したいるようだった。
ぱっと見た所、右側の方が多いな…そっちに行こう。
「加勢する!」
近くにいる人に声をかけつつ戦闘に入る。
目標はオークとゴブリン、正確には人型を優先して狙う。
何故人型か?それは、
「急所を狙いやすい!」
人型の魔物は人間と同じで基本胸元に心臓がある。
そこを狙えばいい。
獣形も一応同じ場所にあるが、あっちは素早いうえに四足歩行のため狙いにくい。
オークの心臓めがけて突きを入れる。
チッ…棍棒で左に弾かれた。
ならばその弾かれた力を利用してその場で回転、斬り上げ見舞う。
「Buaaa!?」
今度は対応出来なかったようで、オークに傷を負わせる。
「トドメ!」
斬り上げた剣をそのまま振り下ろし首を落とす。
「次!」
まだまだ魔物の数は多い。魔術を使いたくなるが過度な使用はまた頭痛を起こすのでなるべく温存。
幸いこちらが押しているので今はここまま剣で行きたい。
・・・でも使わないから守れないのは嫌なのでね。
「〈火よ、我が標的を、撃ち抜け→ファイヤーショット!〉」
フレイムショットとは違いファイヤーショットは威力低め、爆発なし。
つまりは下位互換だがこれでいい。
狙いはまたオーク、たださっきとは違い少し武装をしている。
そしてその目の前には体制を崩してしまった冒険者がいた。
棍棒が振り下ろされる、その前に火球がオークの顔面に直撃する。
急な奇襲に対処できず火を消そうと顔を覆った隙に距離を詰める。
「アサルトリング起動!〈サンダーショット!〉」
左手を掲げ薬指に装備しているアサルトリングを起動。
刻印された魔術回路へ魔力が流れ術式が呼び出される。
使用する魔術はサンダーショット、瞬間的に電撃を与えることで相手を痺れさせる。
動けなくなったところでさらに近づいて首を斬り飛ばす。
「た、助かった?」
「怪我は?」
見たところ傷は浅く大丈夫そうではあるが、肩で息をするくらいには消耗が激しそうだった。
「大丈夫。気が付いたらPTからはぐれちゃって...助けてくれてありがとう」
胸元に冒険者ランクを示すプレートがちらっと見えた。書いてある文字はC。
見た目的にもまだ若いのでおそらくDランクから上がったばかりだろう。
「今のところこっちが優勢だから危険だと思ったら下がって」
これは俺の勝手な判断だが傷は浅くても体力、精神的には限界そうだった。
このまま戦い続けると同じようなミスをして最悪死んでしまうだろう。
それにPTからはぐれているのであればなおさら危険だ。
「分かった。一度下がらせてもらうよ。たださっきみたいな普通より強い個体もいる。君も注意してくれ」
今一度魔物達を見回すと確かに強そうなやつらが混じってる。
上位種だいたい防具や武器を装備していることが多いが、この乱戦ではぱっとみ外見での判断がしにくい。
PTなら対応できたかもしれないが乱戦でのPT行動も制限されてしまい難しい。
彼のように一人で戦わなくてはいけなくなることだってある。
上位種をランクギリギリの人が一人で倒すのは厳しいだろう。
「忠告どうも」
彼のように自分の限界が分かってる人は良い。
無理に意地を張り突っ込まないで引き際を分かっている。
そういう人は将来有望だ。
だから死なせたくないな...。
「次、なるべく上位種を狙っていくか」
少しでも犠牲を減らせるように狙いを定める。
ついでに危なっかしい人をサポートしつつ前線で戦いを続けていく。
剣で斬る。
魔導剣を起動し投げる。ひるんだところを斬る。
振り下ろされる剣をこちらの剣で弾く、そして魔術で追撃し斬る。
む、刃が少し欠けたか?
「〈エッジ〉」
魔術で切れ味を確保してまた斬る。
奥から魔術が飛んでくる。
知能の高い魔物がいるのか・・・。
避けると後ろの人にあたりそうなのでリフレクトで反射する。
どれくらいたっただろうか?
流石に俺もかなり息が上がって体力の消耗を感じる。
温存しているとはいえ魔力も残り少ないだろう。
「だいぶ魔物が減ってきたな」
「あぁ!このまま行けば勝てるぞ!」
ふとそんな会話が聞こえ、周りを見渡すと確か魔物が減っていた。
彼らの言う通りこのまま行けばこの戦いは終わりを迎えるだろう。
・・・このまま?
急に違和感に気付き、足を止めてしまう。
何か忘れている…何だ?
嫌な胸騒ぎがする。
魔物が減って…形勢が逆転?
減った…それはつまり倒したってことだ。
空から見た時にいた、あの大勢の魔物を?
いくら援軍が来たからといってあの数の魔物を倒したのか?
別に冒険者の実力を疑う訳じゃない。殲滅魔術を使ったって言ってた。
なんだ?なにを見落としている?
・・・数?
魔物を倒している。倒したなら何故、魔物の死体が数が少ない?
この乱戦、ポーチとかに回収する暇はないはず。
じゃあ何処へ消えた?もしかして逃げたのか?
突然、不自然に空が暗くなった。
「何だ?雲か?」
周りにいた人たちが空を見上げる。
俺もその声につられて上を見た。だがそこには青空が広がったままだ。
ふと…視界の隅で、空間が歪んだ。
(すごいおっきくて…!村の周りを…!魔物を食べて…!)
「っ!」
違う!魔物は逃げたんじゃない!そもそもの数が減ったんだ!
「マズい!全員逃げろ!!コイツは「グチャ」ま…も・・・?」
冒険者達に伝えようと叫んだ直後、嫌な音とともに腹部に衝撃、その後謎の痛みが走った。
下を向くと…
見えない何が腹に刺さっていた。
Topic:駿馬(ホルン防衛軍輸送部隊所属)
魔導具を装備した馬。疲労回復と筋力増強がかかっており長距離の移動に適している。
もともとは輸送用だが、荷台を外した時の速さには目を見張るものがある。
ただし振り落とされる危険性も高まるため扱える人は少数。
一部高ランク冒険者は扱えるように訓練を受けている。




