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魂の勇者は元魔王とスローライフを送りたい  作者: ミゼル
第1章:主人公に憧れた者
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第25話:最速の救援

「うおぉぉぉ⁉」

「ひぃぃいぃぃい⁉」

「なんだこれぇ⁉そらぁ⁉」


みんなが驚愕の声・・・というか怯えたような驚いたような悲鳴を上げている。

1秒前まで地上にいた俺たち今、空中を移動している。


「これ…飛行魔術ですか!?」


ハーミトさんは魔術師だからか、空にいる事よりもこの魔術が気になるのだろう。でも残念ながら違う。


「これは飛行なんて上品なものじゃないよ」


そう、これは空を飛んでいる訳じゃない。

空に向かって吹き飛ばされているのだ。


カタパルト・アクセライズ…そうカタパルト(射出)だ、フライ(飛行)じゃない。


飛行と違って空中での軌道修正は出来ない。ただ一直線にぶっ飛ぶだけの魔法。

最大の利点は瞬間最高速度がおよそ時速300キロ、新幹線級の速さが出せる。


ただこれを生身で受けると呼吸しにくく、衝撃で体も痛めてしまうためその後の行動に影響が出てしまう。

それを防ぐためにエリア・エアシールを併用し、俺たちを守っている。


要するに、風の球体を空に向かって射出しただけだ。


「・・・見えた、あれだ!」


ほんの数分でサンゼン村と思わしき村を見つけた。

エアシールを操作することで反対方向に風を放ち減速を始める。

速度を完全に打ち消してしまうと下に落下してしまうので完全に止まれるわけではない。

上手いこと調整を行い滞空を試みる。

そして少しずつ落下していく中で、可能な限り上空から索敵を行う。


「なんだ…これ?」


空から見たサンゼン村は異常な光景だった。

村の中心に人が集まっているのが見える。そして情報通り、村の全周は魔物に囲われている。


ただ、数がおかしい。

俺が個人的に想定していたのは50~60体程だ。でもはこの感じもっと多い。

余裕で100体は超えている。下手したら200体かもしれない。

そして魔物の種類はゴブリンとオークと聞いていたが、よく見るとその他の魔物もいる。


「いったいどこからこの数の魔物が出てきたっていうんだ…」


明らかに異常だ。


「おい!あそこ!」


ネヒトが村の中を指差した。場所をよく見てみると…。


村の中に数体、ゴブリンがいた。


「もう侵入されてしまったのか⁉」

「っ!まずいぞ!!」


ゴブリンが村人に襲い始めた。

冒険者にとってさほど脅威ではないが、そうでない人には十分危険だ。

そして防衛している冒険者達は壁に張り付いて戦って・・・侵入に気づいてない!


「みんないい?減速を解除する、んでもってもう一回ぶっとばす!」


今度は村とは反対側をに魔術を構築する。


「着地に備えて!」


エアシールの外側に魔法陣が展開される。


「〈ストーム・ブラスト!!〉」


地面に向かって加速する。着弾地点は、村に侵入したゴブリン。

アイテムポーチから中継拠点で買った剣を取出す。


間に合え…ゴブリンが走って村人に近づくのが見える。


間に合え…ゴブリンが獲物を振り上げるのが見える。


「まにぃいいあえぇえええ!!」


ゴブリンの首先に狙いすまし、剣を構える。

そして・・・




side:アック


「まにぃいいあえぇえええ!!」


シンの雄たけびが聞こえた直後、とんでもない衝撃が全身を襲った。


「ぐはぁぁあ⁉」


ちょっと気絶しそうになるのを何とか意地で堪える。

砂埃が舞ってしまい、さすがに咳き込んでしまった。


「ケホ…そうだ!ゴブリン!」


急いで武器を取出し、戦闘態勢に入る。砂埃が薄れ、ゴブリンを探が…


「おいおい、まじかよ…」


そこにあったのは転がってる3体のゴブリンと、その先で膝をついて剣を振り切ったシンがいた。


着地と同時に全て仕留めたってことかよ!!


彼の戦いを見るのは初めてだが、もしかしたらとんでもない実力者なのかもしれない。


「アック?アックなのか?」


突然聞き覚えのある男の声がした。


「この声は…父さん!」


そこには野菜を収穫するときに使う鎌を持った父親がいた。

それで魔物を迎撃しようとしていたらしい。


「よかった、無事だったんだな!」


「あ、あぁ。間一髪だったがな」


とりあえず、無事で何よりだ。


「村の被害状況は?」


「マスカ君!てことは守備旅団は全員いるのか?」


「あぁ。いるよ」


「そっか、皆無事だったんだな」


村人は全員中央に集まっていたからか、俺たちを確認するなり寄ってきた。

どうやら村の人たちは全員無事なようだ。


「感動の再会中、申し訳ないが今は時間がないぞ」


そんな中、シンは話を切り替えた。


「君は?」


「シンといいます。今の村の被害はどうですか?」


すると村長が出てきて答えてくれた。


「一応、今のところ冒険者たちのおかげで村への被害は出ていない。もっとも、アックたちが来てくれてなかったらどうなっていたことやら」


「そうですか」


村長とみんなは状況を確認してく。


「そういえばお前たちはどうしてここに?」


「依頼が終わってギルドに向かったらイルスがいてさ、村がピンチだって聞いたから急いで来た」


「イルス?そうか、無事だったのか...良かった」


「そういえば何であいつホルンにいたんだ?」


「乗馬の練習で村の外に行ってたんだ。あの子は賢いからな、村に戻れないと判断してホルンに向かったんだろう」


「なるほどそうだったのか…」


それでイルスはホルンにいたのか。


「アックさん、そろそろ」


「おっと、親父またあとで」


別れを告げた後、守備旅団と合流する。


「マスカ、どうだ?」


「ある程度は把握したが、今はやはり防戦一方といったところらしい」


「それと冒険者たちに疲弊が見えてきていて、今の情報も上手く伝わってないそうです」


「もしかしたらゴブリンが抜けた場所に守備の欠けがあるのかも」


「・・・よし」


「ん?シンさんどうかしたのか?」


今まで黙って何か考えていたようだったが何か思いついたような顔をしていた。


「ちょっと大きな声をだします。耳をふさいでください」


よくわかって無いが、とりあえず従っておく。


「〈・・・・・(リフレクト)〉」


何か魔術を唱えたのだろうか?耳をふさいだせいでよく聞こえなかったが、突然空中に透明な板が何枚も生成された。


そしてシンは全体を見渡したあと大きい声を出した。


「全員いいか、よく聞け!!」

「うぉ!?」


うるさ!?・・・てか声デカ!?


耳をふさいでる俺たちですら大きく聞こえる声量で彼は叫びだした。


「知っての通り、今この村は魔物に包囲されている!俺たちは一足早く到着したが、救援の本隊が来るのはまだ先だ!!」


もしかしたら城壁で戦っている冒険者や衛兵にも聞こえるようにしているのかもしれない。


「本隊到着はおよそ30分後!それまで、なんとしてでも生き残るぞ!!」


「「ぉぉ!!」」


遠くから気合の入った声が聞こえる。

どうやらの冒険者たちにも届いたようだ。


「それから!!ゴブリンが数匹侵入していた!もしかしたら守りが薄くなってる場所があるかもしれない!注意してくれ!!」


その言葉を最後に透明な板が消えた。


「すごいね、シンさん」


「あぁ、さっきの魔術といい、剣裁きといい、力が底知れないな」


ネヒトとマスカが彼に称賛を送る。


「よし、ここからは別行動だ。守備旅団はパーティーとして動いた方が効率がいいだろ?」


彼の言う通り、こちらはPTとしての戦術がある。そして俺たちは守る戦い方が得意だ。

なのでこれから他の冒険者と合流して城壁での防衛をするだろう。


「でも、シンさんはどうするの?」


ネヒトの言葉も適切だ。彼一人で戦わせる訳にはいかない。

となると、先程のようにここで村のみんなを守ってくれると助かるのだが…


「俺は…」


だが続いた言葉は衝撃的だった。


「俺は外に行く」

Topic:カタパルト・アクセライズ

シンのオリジナル風魔術。元々はトラップ魔術であるものを改良したもの。

地上でのみ使用可能。

地面に魔法陣を展開し、そこから強烈な突風を発生させることで自身を吹き飛ばす。

魔力消費が激しいため、連発は非推奨。

全力で使用するとシンの魔力量で大体40%を消費する。


カタパルトと謳っているが、実際の挙動はフルスイングで放ったゴルフボールのそれ。

単体で使用すると色々危険。

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