第12話:過去と今、そして完成
サンドイッチを食べながらちょっとリンと話すことにした。
「そういえばリンって魔王の時のこと、どれくらい覚えてるんだ?」
「・・・正直、記憶が曖昧なんだ」
リンの説明を簡単にまとめるとこうだ。
魔王の時は身体から永遠に瘴気が発生し続ける。
その瘴気の影響で闘争本能が強制的に刺激され、自我は失われる。
戦闘を行う際に攻撃方法として瘴気を使うため、影響が薄れ意識が少し戻っていた。
その時はまるで操られているみたいな感覚とのこと…。
そして、自分が人を殺すところを長年見させられてきた…。
地獄かよ…。
「だから目が覚めた時、身体が自由に動いていてびっくりした。シンが真横にいて、また誰かを殺してしまうんじゃないかって思って…」
「なるほど…それであの時はあんな感じたったのか…」
もう誰も傷つけたくないからか故の、あの反応だったってことか。
ふと、気づいたことがある。
「もしかしたらリンがリフレクトを使ったときにイメージしたのは拒絶だったのかもしれないな」
「拒絶?」
「あぁ、本来リフレクトは反射をイメージするんだけど、もしかしたら拒絶でも同じ事が出来るのかもしれない」
物を反射する、全てを拒絶する、共通するものなのかもしれない。
「じゃあ、僕はそれをイメージしたらその魔法が使えるってこと?」
「推測だけどね。でも憶測での使用はやめた方がいい、事故の元だ」
「わかった」
そうこうしている内にサンドイッチは食べ終わった。
すぐに作業に戻るのもあれなのでもう少しだけ会話を続ける。
「リンってさ、生まれたときから魔王なのか?」
「・・・どういう意味?」
言葉足らずだったわ、ごめん。でもずっと気になってたんだ。
「魔王って後天的になることもあるのかなって思って」
「後天的?」
「そ。リンはさっき身体から瘴気が発生してると言った」
「生まれたときからそうだったのか、もしくは生まれてからそうなったのか」
アニメとかゲームでよくある設定だと思うんですよね。
例えば、生まれたときから勇者だったとか、ある日突然聖女の力が覚醒したとか。
もしかしたらリンも元々魔王ではなくて普通の人だったのかもしれない。
何らかの影響で魔王化してしまったとかあるのかもと思ったのだ。
「後者なら、瘴気に蝕まれる前の記憶とかないのかって思ってさ」
「う〜ん…わからない。でも...」
「でも?」
「過去のことは気にしてない」
「なんで?自分の過去、気になったりしないの?」
本当の名前とか、両親とか。
「シンがくれた今があるからいい」
「・・・そっか」
そう言ってくれるなら助けた甲斐があったてもんよ。
さて、そろそろ作業に戻るとする。
次は蒼願石の錬成を始める。
手順は銀と同じようにする。
と、その前に…。
「まだまだ時間かかるからな…眠かったら先に寝てていいぞ?」
「うん…でも見てたい」
そうかい?まぁリンの自由にしてくれ。
蒼願石は本来装飾以外の価値がなかった鉱石だ。
しかし、付与魔術が発展してから評価が一転した。
なぜなら、この鉱石は書き込める術式の量が多いのだ。
小粒でも簡単な式なら書き込める。
また美しく軽いため、貴族の騎士などが防具につけていることが多い。
この鉱石を圧縮しようものなら大量の式を書き込めるわけだ。
だが、蒼願石を錬成するには高度な技術が要求される。
はずだが…
「なんか思ったより早くできたな?」
本来銀よりも倍以上時間がかかるはずなんだが…同じように小一時間程度で完成した。
まぁいいや、そしたら次は…と?
「う~ん…」
リンの眠気が限界に来たようだ。
肩にもたれかかってきてそのまま胡坐をかいてる膝上で寝てしまった。
・・・そこ寝ずらくない?
とはいえ起こすのもなんか嫌なのでこのまま作業を続ける。
ちなみに大体6割完成といったところか。
次に銀と蒼願石を合成させていく。
よく指輪って輪っかの中に小さい宝石が埋め込まれてるじゃん。あれを完成形として作業する。
これが一番難しい。
今までの作業は圧縮と形状変更だ。ゆっくりと変わっていくため、普通に時間がかかるだけ。
一方で合成は物質AとBを混ぜていく。錬金術式に負荷がかかり失敗すれば素材がゴミと化す。
気を引き締めて、集中していく。
30分後…。
「よし、完成だ」
本当は気持ち的に叫びたいが夜なのとリンが寝ているので我慢する。
にしてもさっきの錬成といい結構すんなりいったな。
以前だったら全体的にもっと時間がかかっていたはず…不思議なもんだ。調子が良いのかな?
なんとなく膝上にあるリンの髪をなでる。おぉサラサラだぁ。
今度髪留めでも買お、髪長いからポニテとかよさそう。
さて、そろそろ刻印をやろう。
何を付与しようかなぁ、魔導具作りはここが一番楽しいんだから!
しかも蒼願石だぜ!書き込める限界値を刻印したいじゃん。
「見てろよ…超高性能アクセサリーを作ってやる!」
「う~ん…」
おっと、静粛にっと。
大体空が少し明るくなったであろう頃、魔導具は完成した。
「出来た…出来たぞ…」
名付けて、魔力抑制術式圧縮型戦闘補助魔導具・・・長いな。
とりあえず完成はしたが...さすがに眠い。
思えば森で目覚めてから狼と戦い、ここまで歩いて来た後は質問とか検証とかしてきたからな。さすがに疲れた。
さっき外で寝るとか考えてたけど膝の上にリンいるし、なりより俺ももう限界だ。
魔導具の名前、後で考えよ...。
結局俺はそのまま寝てしまった。
Topic:錬金術
錬金術は知名度が低いです。
まず付与魔術と同じく魔術への理解が必要となります。
また心域による術式圧縮が使えません。
そのため完成までが長いです。
例えば今回の指輪型だと、普通に作ると圧縮と変形だけで2週間以上かかります。
合成を行う場合はさらに2週間以上かかります。
質はかなり落ちますが鉱石を鍛造→加工した場合4〜5日で完成するので納品が圧倒的に早いです。
さらに加工に比べて、耐久性が錬金術の方が劣ります。
錬金術が勝っているのは魔導具の触媒にしたときのみです。
さらに魔導具の場合は付与者も必要となります。
そのため労働費とコストが釣り合わず、高級品となってしまいます。
こんなものを買ってくれるのは面白がった貴族くらいです。
結論から言うと時間がかかる上に売れるかわからない物を作る不遇魔術です。
それも相まって錬金術を知らない人も多いです。
ちなみに高ランク冒険者などは魔導具をいくつも装備していることが多いです。
1つで済ませようとするのは少数です。
なおシンの場合錬金術式がオリジナルのため速いです。
術式の7割を魔法(イメージ力)で補っています。
錬金魔法といった方が正しいかもしれません。
また、女神が再生の際に付与した能力アップも影響しています。




