第9話︰最優先事項
仮の身分証発行を発行してもらえた。
正式な物は大きい街じゃないといけないらしい。
かくして、俺たちは検問所を出たわけだが……。
内心かなり荒ぶってます。
先ほどリンの気持ちを聞いた。一緒にいたいと言った…。
・・・それ不意に言うことかい!?本人の前で!
一緒にいたいってのは何というかその恥ずかしいぞ!
当の本人は発言の意味をあんまり理解してなさそうだし…。
こっちだけが気恥ずかしいだけって……!
・・・本当のことを言うと...俺はリンにこの世界のことについて教えた後、別れる予定だった。
リンはもう魔王ではない。魂同化問題とかはあるけど、普通の人間だ。
彼女には自由に生きてほしい。
魔王時代散々苦しんだのを俺はなんとなく知っている。
もう勇者とか魔王とか、そういう過去のしがらみからは解放されていいはずだ。
と、思っていたが...どうしたものかねぇ。
もしかしたらするとリンは人が怖いからそう言った可能性もある。
それか精神的に不安だからであって......。
「よし、色々考えるのは後!」
今あれこれ考えても仕方がない。
彼女が不自由なく生活できるようになったら頃合いを見てまた聞いてみよう。
その時はまた気持ちが変わってるかもしれない。
それまでは俺が守る。それが助けた者の責任だ。
・・・とりあえず!
「今は直下の問題を解決する!」
「どうしたの?」
どうしたの?じゃないよ!
「最優先事項を片付ける!」
「さいゆうせん?」
「服を…買う!」
「・・・あ。」
あ、ってもしかして忘れてた?マジで?
今更思い出したかのように赤くなっても遅いよ?
いざ、市場へゴー!
服を購入するついでに情報収集を行う。
ここの場所…宿屋…雑貨屋…etc.
そして分かったことをまとめる。
どうやらここは集落とは少し違うらしい。
【中継拠点:信託の森 麓】
そう呼ぶらしい。なんか大層な名前だな。
中継拠点というのは冒険者協会及び国が管理する拠点だ。
街と街を結ぶ道中に設置することで物資を安全に輸送することが出来る。
また、冒険者が遠征に使用したり商人が休憩したりする場所でもある。
ちなみに元々ここは集落だったらしい。
外観から判断できなかったのはそのためだ。
今は住んでいる人はほとんどおらず、労働者はみな街から出張して来ている感じらしい。
・・・それはそれとして…
「いい服あった?」
「よく分かんない。シンが決め…「駄目です。服は自分で決めてください。」…むぅ。」
リンは自分の意思が弱すぎる。
もう少し自己主張してほしい。
子供みたいに…とまでは言わないが、せめてこれが欲しいみたなことを言ってほしいものだ。
ちなみに中継拠点なのになんで服が売っているかだか、ちゃんとした理由がある。
というか服以外にも雑貨・道具とかも売っている。
旅や戦闘を行うと服や道具は摩耗し損傷するものだ。
服の場合ボロボロのままだと着心地が悪い。
傷薬などは足りない場合がある。
そのためここで買って補給するってわけだ。
種類は少ないし輸送費とかの兼ね合いで街に比べると割高だが背に腹は代えられない。
「・・・これにする。」
お?どうやら服が決まったようだ。
「見せてみ。」
ふむふむ、白いシャツにズボン。靴に白コートと…あれ?これなんか…。
「シンの格好と似てたからこれにした。」
そっか~。色は違うが雰囲気はおそろかぁ…。
・・・リンが決めたことなので良しとする!
「店主さん、これください。」
「あいよ、銀貨7、銅貨6だよ。・・・ちょうど確かに、まいどあり。」
ちなみに異世界あるあるの貨幣価値についてだが前世換算だと、
金貨 10000円
銀貨 1000円
銅貨 100円
とまぁ大体こんな感じ。10円貨幣はなかった。
銅貨以下のものはまとめて売られている。
今回の場合7600円ってところか…。
「更衣室ってあるか?」
「簡易なものだが、そこのカーテンがそうさ。使うかい?」
更衣室を借りたので早速着替えてもらう。
そういやサイズあってんのかな?確認してなかった。
しばらくして、リンが出てきた。
「どう?サイズあってる?」
「…ズボンがちょっとゆるいかも…。」
あれま…丈は合っているが、確かにゆるそうだ...。
「店主、いい感じのベルトない?」
「そうだねぇ、これなんかどうだい?銅貨5枚だ。」
そう言って出てきたのは普通のベルト…とポーチ。
「これ両方セットで銅貨5枚なの?」
え?安くない?銀貨予想してた。買うわ。
「まいどあり~。」
リンにベルトを着けてもらい服装問題は解決した。
ちなみに俺のコートは返してもらった。
なんだかんだしていたら日が高く昇っていた。
大体12時頃だろうか?この時間になってくると大事なことを思い出す。
「腹減ってきたな…。」
よくよく考えたら目覚めたのが夜で今は昼。
その間一回も食事をしていない。
しかも森からここまで歩きっぱなしだった。そりゃ腹減るわな。
店でも探すか…。
本当はガッツリ食べたいところだか今は我慢する。
日が出ている内にやりたいことが山積みだ。
少し歩くと屋台があった。
これは…串焼きか?
「いらっしゃい!何か買ってくか?」
「店主、これは何の肉だ?」
「こいつはラビットバイトの薬草焼きだよ!今朝冒険者が取ってきた新鮮なヤツさ!」
ラビットバイトかぁ…。嫌いではないんだがちょっとクセがあるんだよなぁ…。
リンもいることだし出来れば無難なのがいい。
「こっちは?」
「これはブルダストの屑肉だな。一昨日ここいらで合同討伐依頼があってな、その時の残りだ。」
お、いいねぇ。ブルダストは味が落ちにくい上質な肉だ。屑肉は安くてうまい。
「ブルダストの串焼きを2つくれ。」
「まいど!」
昼飯を入手したので、リンと一緒に座る。
「ほれ。」
「あ、ありがとう。」
串焼き受け取ったのを確認した後、食べ始める。
「いただきます。」
お?程良く火が通ってるな。
燃料が炭と薬草だからだろうか?匂いと風味がいいんじだ。
俺が食べ始めたのを見て、リンも一口いった。
『っ!おいしい!』
どうやら気に入ったようだ。
「うまいか?」
「うん。」
それは良かった。
そうやぁリンは目覚めて初めての食事か?
一発目が串焼きってどうなんだ…。ちょっと申し訳ない気がする。
街についたらもう少し豪華にいきたいなぁ。
さて、物足りなさ半分といった感じたがまだやるべきことがある。
宿探しと街への移動方法確保だ。
どうやらここは偶然人が多くなっているらしい。
移動手段は簡単に見つかるだろうが…問題は宿だ。
中継拠点で人が多いとはつまり、泊まっている人も多いということ。
まず最初に宿を確保しに行く、野宿は勘弁な。
Topic: 信託の森
かつて天界と繋がっており、神の使いが光臨し信託を授けたという伝承がある森。
そこは幻想的な景色が広がり、魔が入ることが出来ないといわれている。
だが近づくと霧が濃くなり気が付けば元居た場所に戻されてしまう不思議な場所。
そのため未だ誰にも発見されたことがなく、真実を知っているものはいない。




