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第8話︰僕がしたいこと

目視換算で大体8時ころ、集落へ着いた。

日の出が大体5時頃?だから、3時間くらい歩いたのか。

道中ほぼ無心だったので覚えてない。

ちなみにリンは背中で寝てしまった。

森を抜けるまで結構かかったし、疲れていたのだろう。


柵門付近へ近寄ると人がちらほら見えた。

どうやら検問中らしい。あ、終わった。


「次の人!」


さて、どうしたものか...。


「見ての通り二人です。中へ入りたいだけど身分証なるものがない。」

「身分証がない?」

「はい。」


基本、町への出入りには身分証が必要になる。

残念ながら今持っていないのだ。

そういったものは全部ストレージの中に入れていた。

そしてリンはそもそもない。


「・・・こちらへ来い。」


そういって案内されたのは検問所の隣に建てられた小屋だ。

多分怪しいやつを取り調べる場所。

まぁ身分証持ってないもんな、怪しさ全開だ。


「しばらく待て。」


…と、そろそろリンに起きてもらおう。

椅子に下ろしてから声をかける。


「リン…起きて。」

「うにゅぅ…。」


身体も揺すってみたが起きない。朝弱いのか?

だが寝たままでは衛兵と話すこともできない。


「リンさんや、起きてくれまいか?」

「ぅ〜?」


ほっぺつついてみた。もちもちしてる。

う~む…起きたっぽいが、うとうとしてる…。

・・・しかたがない、最終手段だ。


「『リン、起きて!』」

「うひゃあ!!」


あ、起きた。さすが心話。

にしてもなんかやけに明るくない?さっきまでの物静かな感じはどこいった?

寝て気分がスッキリしたんかね?


「・・・・・・始めてもいいですか?」


あ、衛兵さん来てたんだ。


「すみません、いいですよ。」

「・・・軽く、質問をさせてください。」

「わかりました。」


質疑応答が始まった。

何かリンずっと俯いたままなんだが?大丈夫そ?


「まず…君から…」


衛兵から聞かれた内容について回答していく。


名前︰シンです。

年齢︰18歳です。(前世合わせるともっと上だけど。)

出身︰王都にある孤児院です。

仕事︰冒険者を予定してます。(勇者じゃなくなったため無職です。)


衛兵は答えたことを紙にまとめていく。


「身分証がないのは?」

「失くしました。」


嘘です。ストレージ内にあります。

俺の中でストレージ使いたいカウンターが回る。


「次に、旅の目的は?」


旅の目的かぁ、俺としては当初の予定通りスローライフしたいんだがなぁ…。

ただ、リンのこともあるし…。


少し悩んだが結局、本音を言うことにした。


「楽しくのんびり住める場所を探して旅をしています。」

「その歳でか?変わったやつだな…。」


まぁ、18歳でセカンドライフをやろうとしてるようなものだからな…。疑問にも思うだろ。

ちなみに途中いい場所があればそこにするつもりだ。

人生思い立ったら吉日って言いますしね。


「まぁいいか…考え方は人の自由だしな。」


お?いいこと言うじゃん。


「シン君に関しては以上だ。」


あら?思ったより早く終わった。

衛兵はもう一枚同じ紙を取り出した。


「さて、次は君の番だ。」


リンへの質問が始まった。


ーーーーーー


Sideリン


シンへの質問が終わり次は僕の番になった。


「まず、名前は?」


と聞かれた。

答えなきゃ…と思うのに、口がうまく動かない。

どうして?シンとうまく話せるのに…。

その答えはすぐに解った。


(あぁ…『怖い』んだ。)


また誰かを傷つけてしまうことが…。

僕に関わることで、きっとまた……。


「『大丈夫』」


(!)


シンがこちらを見て、声をかけてくれた。

この声を聞くと落ち着く…。怖いと思う感情が消えていく。

それでも、あと一歩を踏み出す勇気が足りない。

ふと、シンの手を握ってみる。


(暖かい…。)


この暖かさが、僕の不安を溶かしていく…。


「僕は…僕はリンと言います。」


気がつけば自然と口が動き出していた。

そこからはスムーズだった。


「年齢は?」

「18歳?です。」

「…なんで疑問形なんですか?」

「ご、ごめんなさい。」


スムーズじゃなかったです。

どうしよう、僕の年齢が分からない…。

魔王時代も含むと多分200を超えてるけど…。

正直その辺含め僕の記憶は全体的に曖昧なんです。

どうしたらいいのか分からなかったので、とっさにシンと同じにさせてもらった。

そういえばシンって18歳だったんだ。


「…出身は?」

「うぅ…。」


出身…これも難しい。

僕は魔王だった。なら、魔族領が正解なのかな?

ここで魔族領出身と言っても良いのだろうか?


「衛兵さん、すみません。」

「ん?どうしたシン君。」


悩んでいたら突然シンが話しだした。


「リンは記憶喪失なんです。」

「どう言うことだい?」


…僕が知りたいです。

シンは小声で「まかせて。」と言った。


「旅の途中、倒れていたのを俺が助けました。」

「その時から記憶がなく、自分の事や家族の事などを覚えていませんでした。」

「実はリンって名前も俺が付けました。呼び名無いと不便ですからね。」


僕を記憶喪失と偽った言った理由が分かったきがする。

今シンが言ったことはあながち間違ってはいない。

倒れていたわけではないが、助けられたのは事実。

記憶がないのも確かだが、魔王の時のことは少しだけ…特にシンに助けてもらった時のことは覚えている。

そして、名前はシンがつけてくれた。

小さな嘘を真実で固めていくことで、本当のことっぽくする。


「なるほど…大変だったんだな。」


衛兵は信じてくれたみたいだ。


「となると出身、職業、身分証については回答不可だな。」

「そうしてくれると助かります。」

「承知した。ではリンさん、最後に一つ。」

「は、はい。」

「答えにくいかもしれないが…一応仕事なんでな。旅の目的を聞かせてくれ。」

「今後は自分を探す旅でもするのかい?」


旅の目的…。

僕は何をしたいんだろう?

シンは自由に生きていいと言ってくれた。


僕はどうしたいんだろう?


「シンといたい…。」

「ん?なにか言いましたか?」


小声でも口に出したら理解した。


僕を救ってくれた、僕の英雄。


勇気をくれる…僕の勇者。


そんな彼と一緒にいたい。


「僕はシンと一緒にいたい。それが理由です。」


今度ははっきりと言えた。

Topic:衛兵~とある酒場での愚痴より~

「なぁあ、聞いてくれよぉ。」

「どうした?」

「今日お前からから身分証ない奴の取調べ依頼されたじゃんかよぉ?」

「あぁ、朝方の2人か…片方記憶が無いって聞いたぜ?」

「そうなんだがよぉ、あいつら取調べ小屋に入ったら…イチャついてたんだぜ…。」

「え?何してたの?」

「彼氏っぽいやつが、彼女のほっぺ突いて遊んでた。」

「取調べ小屋でか?」

「取調べ小屋でだ!」

「しかも記憶喪失の彼女さんに質問しようとしたらそっちから手ぇ握り始めるし!」

「・・・記憶ないんだろ?不安だっただけじゃね?」

「旅の目的がぁあ!」

「うお!?」

「一緒にいたいからってなんなんだよぉお!!」

「・・・水、飲むか?」

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