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異世界に咲く花  作者: 勇崎りりは
一章 散策編
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7話 化け物のような、圧倒的な能力

(ああ、もう泣かないで、苦しまないで、傷つかないで、どうか……。)


赤、赤、あか。



体が一気に軽くなった。


時間の流れがとても遅く感じる。



視界が少し晴れた。

赤色しか見えなかった視界が、世界を映す。


神のように、世界を俯瞰(ふかん)してみている。

そんな気分だ。


人々の感情を肌で感じる。

恐怖、苦痛、焦り。

それらが、体を這いずり回っているような不快感。



視界が戻った。

アーロンの傷はさらに増えていた。




(誰かの為に、優しくなりたい。)


願い、望む。


心優しき少女に、神が応える。



『力の一部を、あなたにあげる。』



声が聞こえた。なのになぜか、理解ができない。


そのなことより、アーロンさんを助けないと。



ルカは足を一歩前に出す。

違和感が凄く、動かし方もわからなかった羽も、息を吸うくらい簡単に動かせた。


半透明の羽が、空をなでる。



自分の体なのに、自分の体じゃない気がする。

誰かに操られているような、ふわふわした気分だ。


羽の動く速度が上がる。


ルカは自然と姿勢を低くし、足を曲げた。

前傾姿勢になると、空に向かって飛び出す。


簡単に飛べた。


敵の斜め上で動きを止める。


アーロンは驚いてこちらを見る。

ルカは当たり前のように、手を前に出す。

自分でも何をするのか、わからない。


次の瞬間、地面から、人間の胴体と同じくらいの太さの木の根っこが、大量に飛び出した。


ルカも含めて、その場にいた全員が自分の目を疑う。


≪能力≫とは思いの強さに答えるもの。

手に入れられたとしても、ほとんどの人が自分の意思ではコントロールできなくなる。

例え自由自在に扱えるようになったとしても、ほとんどが弱い効果だ。


心が読めたり、対象者の身体能力を上げたり、嘘が分かったり。

その程度の小さな力。


物理的な≪能力≫を発現させる意志。そしてそれを制御する精神。

それは、それを扱えるものがいたとしたのなら、それは……





『化け物』 だ。



全員が動揺して、一瞬、動きを止めた。

ルカも例外ではない。


その間に、木の根は伸びていき、あっという間に敵を拘束した。

ルカは無意識のまま、敵の真上まで飛んでいき、羽をバタバタと強く仰ぐ。

鱗粉(りんぷん)のようなものがパラパラと敵に降りかかる。


それを吸い込んだ瞬間、敵は倒れた。

次の瞬間、化け物のような外見だったモノは小さな少年の姿になった。それを確認すると、急に力が抜け、体が傾く。

地面にぶつかる寸前、自分で羽を動かし減速する。

さっきの飛行でコツをつかんだらしい。簡単に、とはいかないが、普通に空を飛べるくらいの実力はついただろうか。


「おいルカ、今のは何だ。それにその目は……。」

「え、?」


ルカの目は血のような赤色だった。

いつもの穏やかなものと違い、感情も読み取りずらく、鋭くとがっていた。

が、次の瞬間には暖かい薄紫に変化した。


それと同時に木の根は消え、少年と大きな穴の開いた地面のみ残った。


「んんっ、、」

少年は目を開く。

ルカは警戒心を持ちながら近づく。

それより先に、端っこにいた親子の娘が駆け寄る。


「お兄ちゃん!」

「リア・・・?ここは……。」



次に母親も近づき、二人を抱きしめる。

「本当に、無事でよかった・・・。」


「へ、か、母さん?」


どうやら少年は肉体強化系の≪能力≫を手に入れていたらしい。

しかし、急に身の丈に合わない力を渡されて、暴走してしまったようだ。

彼らは遠い村に引っ越すらしい。さすがにこんな事件を起こしたらご近所さんとも気まずいからだろう。


ルカはなにがどうなったのか、まるで理解していなかった。

ルカが自分の意思で動いたのは、最後の着地だけだ。

それ以外は何もしていない。


そんな中、アーロンは口を開く。

「ルカ、お前、組織に入らないか?」


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