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異世界に咲く花  作者: 勇崎りりは
一章 散策編
9/11

8話 クリスティーア

「ルカ、お前、組織に入らないか?」

「え、?」


アーロンの言葉に目を見開く。

ルカは今も混乱していて、まともに頭が回っていない。


「そうだ。さっきの能力は素晴らしかった。最初はどこかに就職できるまで支援するつもりだったんだが……≪能力≫持ちならスカウトした方がいい。」

「の、≪能力≫?私がですか?」


「?ああ、ほぼ間違いないだろう。それにしても、何を願ったらあんな力使いこなせるんだ?転移者様にはすごい力が与えられると聞いたことがあるが……それなのか?」


ルカは心のどこかで、あれは自分の力ではないと思い込んでいた。

だって、意識がフラフラしてて、あの力は自分の力ではなかったから。






漫画の中の最強に憧れた。だって、かっこよかったから。


その立場になると思うと、眩暈がした。だって、≪能力≫なんて危ないもの、どうしていいかわからないから。




「……わかりません。」


ルカは自分が、平凡な中学生であることを自覚していた。

勉強も、運動も、友達も、学校生活も、そして、自分自身も。それらすべてが普通に与えられて、ただ普通に生きていた。

性格も普通だった。

幼いころは泣きまくって、わがまま言って。小学校では社会が求める大人の土台を作らされた。


そんなルカの心の奥底にある言葉はいつも同じだった。

『自分の為じゃなくて、誰かのために行動しなさい。』

『誰かに優しくなりなさい。』


『『誰かの為に。』』


それがいつも、まとわりついてくる。



だから、私には何もない。

簡単に洗脳される、意志の薄い存在。


そんな存在に、≪能力≫なんて芽生えるわけがない。


「あれは、私の力じゃない、です」


「つまり無意識だったと?」

アーロンの目が金色に煌めく。

なんとなく下を向いて小さく返事をする。


「……はい。」



「そうか。」

アーロンの目は元の色に戻る。



「でも、能力を研究されているトップには会って貰うが、いいか?」

ルカはこの現象の意味が分かるかもしれない、と考え、頷く。

「わかりました。連れて行ってください。」



ーーーーーー




組織の場所は近くにあった。

花園のような場所に建物が建っていた。


見たことない場所なのに、どこか既視感を感じる建物は、いたるところが花で埋め尽くされてた。


建物は不思議な形をしていた。出入り口がある建物は五角形で、四つの建物と廊下でつながっていた。

廊下はかなりの距離があり、建物は一つ一つが一軒家と同じくらいの広さはあるだろうか?



キョロキョロと辺りを見回していると、アーロンは慣れたように、建物の裏に回り込む。



ついていくと、美しい女性が紅茶を飲んでいた。

金髪、碧眼、高身長の彼女は、アーロンを見ると、お淑やかに微笑んだ。


「お疲れ様、アーロン。」

「ありがとうごさいます、クリスティーア様。」

クリスティーアの長い髪がわずかに揺れた。


金色のレースの隙間から見える耳は長かった。

エルフ耳、と呼ばれる奴だろうか?


彼女の澄んだ瞳がルカをとらえる。

「貴女はどうしたの?」


「すごい≪能力≫を持っていたので、来てもらいました。」

「そう。アーロン、少し下がっててくれる?」

アーロンはぎょっとして言う。

「クリスティーア様っ、それは……!」

「スミレもいるし、問題ないわ。」

「……わかりました。何かあれば、お呼びださい。」


それだけ言うと、アーロンは建物の中に入っていった。


クリスティーアはルカにもう一つの椅子に座るように促す。

いつもより背筋を伸ばし、椅子に腰を掛ける。


「わたしはクリスティーア。この組織の長よ。貴女は?」

「ルカ、です。」

今の所、苗字を使ってる人は見てないので、名前だけ名乗る。


「そう、良い名前ね。ルカ、貴女は何でここに来たの?」

「えっと、連れてこられただけで……。」


クリスティーアは目を細める。

「いいえ、貴女はわたしに聞きたいことがあるわ。それを聞かせてくれる?」


クリスティーアには人を引き付ける何かがあった。

悩みを相談したくなるような、穏やかな雰囲気。

ルカは気が付いたら悩みを口にしていた。


転生したこと。

能力に目覚めてしまっているのかもしれないこと。

体が操られるようになったこと。


全てを。



クリスティーアはずっとにこにこしていた。

「話してくれてありがとう、ルカ。」


「えっと、クリスティーアさ、様は……」

「長くて言いづらいでしょう?クリスでいいわ。」


「じゃあ、クリス様は≪能力≫について、詳しいんですよね?この現象について、何かわかりますか?」

クリスティーアは下を向いて悔しそうにする。

「いいえ、わたしは詳しくないわ。≪能力≫について教えてあげられことはない。」


でも、とクリスティーアは続ける。


「でも、安心しなさい。ここでは貴女が主人公。貴女が……貴女の願いを叶える場所よ。

いらっしゃい、私の大切な……『フラワーガーデン』 へ。 歓迎するわ。」

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