3話 転生詐欺
ルカはすぐ近くにあった小屋の扉をノックする。
「すみませーん、誰か~いませんか?」
返事がないのを確認して、扉を押す。
ギギギ、と音を立てて開いた。
「お邪魔しま~す……。」
小屋はボロボロで古臭い雰囲気があったが、中身はとても綺麗だった。
派手ではないが、とても実用的で、異世界なら家一つ変えてもおかしくないものも、ちらほらあった。
その代表が鏡だ。部屋の隅には大きな姿見があった。異世界にこんなものがあるのか、と感心して近づいてみた。
その鏡の性能は21世紀の日本の物と大差なかった。
「あれ?なにこれ?」
背中の、後ろの壁の一部にフィルターがかかっているみたいになっていた。
上半身と同じくらいの大きさで、リボンのような形だった。
よく観察してみると、羽のように見えてきた。
水色がかった半透明の羽は、違和感が凄いが少し、動かすことができた。触ると実態があり、感覚があるのもわかった。
人外。
その言葉が脳裏をよぎった。
アニメなどでケモミミやエルフ耳などを見る時はかわいいな~くらいだったが、実際なってみると違和感が凄い。
それ以上にこの世界が人外に対してどのような対応をしているのかが気になる。
魔物にあたりが強い作品も少なくないため、ルカにとっては不安なことがさらに増えただけで、まったく嬉しいニュースではない。
ついでに今着ている服がただのパーカーなため、神秘的な雰囲気もなく、あまり似合っていないのだ。
小屋の中を確認している時、ふと思った。
「この小屋、誰かが住んでたらどうしよう。」
ゲームで誰かの家に入るのが普通過ぎて、当たり前のことも思いつかなった。
ここが誰かの家である可能性を思い出すと、ルカの表情はどんどん硬くなっていった。
背中に嫌な汗が流れる。顔面蒼白と呼ばれる顔色のルカは、いち早く小屋を出ることにした。
小屋を漁ってるときに見つけた地図によると、ここから湖と逆方向に歩くと町があるらしい。
手ぶらの状態で小屋を出て、町の方向へ向かう。
町までは意外と近かった。最悪、何時間も歩くことを覚悟していたルカにとって、嬉しい誤算だった。
町はそこまで発展しておらず、あの小屋の鏡や本、日用品はすべて高級品だったのだろう。
家の中以外は地面がむき出しになっているし、家は木製の物ばかりで、都会育ちのルカにとって珍しい光景だった。
しばらくキョロキョロと辺りを見回していると、いかにも無害そうな三十代くらいの女性が声を掛けてきた。
「あら、あなた、見ない顔ね。どうしたの?」
「え゛、あの、ぁ~っとぉ。あ、た、旅の者でして。」
過去一パニックになりながら、大げさな身振り手振りをしていいる間に、何とか言い訳が思いついた。
何とか捻り出した言葉に、女性は眉を顰める。
「それにしては荷物が少ないし、軽装すぎるような……。」
「荷物をおとして、道に迷っちゃって……」
「まぁ、若いのに大変ね。最初は別世界から、いらっしゃった転移者様なのかと思っちゃったわぁ。
ほら、ここら辺じゃ見ない服着てるから。」
途中当たり前のように出てきた単語にルカは目を丸くした。
「え、転移者様?」
「おとぎ話みたいなものよ。まあ、あなたは妖精のようだから違うだろうけど。
ああ、話過ぎちゃってごめんなさいね。迷子なら警備隊の事務所に行けばいいわ。」
「それはどこに?」
「三つ先の角を右に曲がると、一つだけ立派な建物があるわ。そこの受付の方に事情を話せば、きっと助けてくださるわ。」
「ありがとうございます。」
ルカは女性に言われた道を歩きながら考える。
どうやら自分は妖精らしい。そして、転移者なるものも存在するとか。
警備隊というのは警察と同じようなものだと仮定しよう。
正体不明の怪しい妖精女より、転移者というものがあるなら転生者を名乗った方がいいだろう。
嘘ついて疑われるより、そっちのほいうがいい。
この町は安全そうだが、昔の時代は少し疑いが出ただけで拷問だったり、処刑が行われていたらしい。
親が見てるドラマでそういう描写があった。
転生してすぐに拷問なんて本当に嫌だ。冗談にならない。
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ヘタに嘘つくより、真実を話した方がいい。そう結論を出したルカは、レンガのようなもので作られた建物に足を踏み入れた。
対応してくれたのは二人の男だった。
ルカが今までの出来事をすべて話すと、一人の男が神妙な顔つきで言った。
「なるほど、よぉ~っくわかったぞ。」
真剣な人で良かった、とルカは安心して、
「貴様の目的は金!転生詐欺を働いて我々から金を騙し取るつもりだろう!」
落胆した。
しかももう一人の男はパチパチと拍手をしながら「さすがマサキさん!素晴らしい推察です!」などと言っている。
どうやらこの二人組、アニメで見る分にはいいが、現実にいてほしくないランキングトップに君臨する、ポンコツ属性持ちらしい。




