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異世界に咲く花  作者: 勇崎りりは
一章 散策編
3/13

2話 転生

ふんわりと、意識が浮上してきた。

光が眩しくて、目が開けない。

ここは、どこだろうか?


ぼんやりとする頭を必死に働かせる。


死んだと思ったのに……、人間とはここまで丈夫なものなのか。





ここはどこ?


何日寝ていたの?


痛みを感じない。もう完治したのかな?


カンナちゃんは、大丈夫だったのかな。

あのトラック、人、乗ってたっけ?

乗ってたら、絶対ケガしたよね。

慰謝料って、車を運転してた人が払わされるんだっけ、

きっと、大変なんだろうな。私には何もできないけど。



……私にも、何か出来たらよかったのに。





あ、授業……どれくらい遅れたのかな。

来年、受験生なのに。



そんなことを考えていると光に目が慣れてきた。

慎重に瞼を持ち上げる。

一番最初に目に入ったものは花びらだった。

そうだ、ノースポール!

ルカはトラックにひかれた後の記憶に映っている血の色に染まった花を思い出した。

ルカは目を見開く。



次に枝が見えた。

確実に、ノースポールではない。

まあ、あの独特の臭いもしなかったし、当然か。


それはそうと、どうやらルカは、木陰に寝かされていたらしい。


怪我をしたはずの左腕が動くのを確認してから、髪についた花びらを取る。

知らない花だった。

カンナちゃんなら知ってるかもな、とか考えながら花びらを捨てる。


両腕を使って上半身を起こす。

足を折り曲げ、体育座りを少し崩した体制であたりを見渡す。

キラキラと輝く湖、小さな小屋、美しい草花。

明らかに日本ではない。少なくてもルカはそんな場所を知らなかった。


ルカは両手を思い切り頬にたたきつけた。

「痛っ」

頬がじんじんと痛みを訴えてきた。

どうやら夢でもなければ、痛みを感じなくなったわけでもないらしい。


ついでに声も問題ないことが分かった。

ルカの知っている範囲ではあるが、体に異変がないか調べ終わった。

どう考えても健康そのものだ。



「いや、漫画じゃないんだからさ……。」

ルカは思わず頭を抱えた。

ルカの知っている、この状況にぴったりとあてはまる言葉を。


「異世界転生、か。」

中学二年生というドンピシャな年齢であるルカは、すぐにこの結論へたどり着いた。

思い返してみたらこの状況、お決まりのアレだ。

転生ものは死ぬ時、誰かを庇うことが多い。トラックから女の子を助けて~~から始まる漫画なんて数えきれないほどある。


そしてもう一つのお決まり、それは主人公補正だ。

戦闘ものだったらチート能力が、恋愛ものだったら候補者達からの好感度が。

今の所、それらを受け取った気配はない。悪役かモブにでも転生したのだろうか?

最近そういうのが流行ってるのは知っていたが…。



まあ、それならそれで構わない。命にかかわる話になったら文句の一つや二つ、言いたいところだが今のところは平気そうだ。異世界スローライフ系だろうか?

そんなことを考えながら立ち上がる。

木の幹と自分の体をぴったりとくっつけて大まかな身長を図り、ため息をつく。

「せめてもう少し、身長欲しかったなぁ。」


もう、主人公補正など、どうでもいいから身長が欲しい。これで成長期が過ぎているのが信じられない。


最低でも155cmは欲しいなぁとか考えながら湖へ向かう。



恐ろしく透明度の高い水だった。

普通に鏡として使えるくらいだ。顔をグイッと近づけて確認する。

今までと変わらない顔だった。

肩にかかるくらいの水色髪、桜色の場所も変わってない。たれ気味の目はいつも通り紫色だ。

外見は変わってない。

転生ものの中でもキャラクターに憑依(?)するタイプのものもあるが、ルカはそういう状況ではないらしい。

どうせなら凛々しい美女になりたかった。つり目で背が高ければ、ルカという名前も似合うだろう。


彼女は自分の名前が好きではなかった。別に嫌いでもないけれど。

ただ、似合ってない、と思う。

ルカもそうだが、一番は秋風という苗字だ。

水色の髪で秋風は似合わない。何が秋だ。春か夏だろう。

この世界が、苗字のない世界であるのを願うばかりだ。


_________


おとぎ話に迷い込んだのか、と錯覚するほど美しい庭園。そこにある椅子には美しい、人形のような少女が座っていた。

少女が来ている服はあの時の泥だらけの物ではなく、きらびやかなドレスだった。

少女のそばにいる老婆の従者はテーブルの上に紅茶のポットとカップを置いた。

「ありがとう、白秋。」

「ありがたいお言葉だねえ、××さま。」

白秋と呼ばれた老婆は気軽に話しかける。

白秋は老婆らしい白い髪を持っていた。しかし、彼女の目は虎のように鋭く、まるで老婆に化けて無力な振りをしている、妖怪のような不気味さがあった。

「××さま、メイドが一人行方不明なんだが、捜索依頼でも出すかい?」

世間話をするかのように白秋は問いかける。

「人手が足りなくなり、闇雲に人を集めたんだ。やる気のない奴はごまんといる。そいつはメイドとして働くのが嫌になり、故郷にでも逃げ帰ったのだろう。」

少女はぼんやりと答える。

白秋はクツクツと不気味に笑い、楽しげに言う。

「××さまがそういうなら、それが真実なのだろうねぇ。そのメイドも、気の毒だねぇ。」


「ところで白秋。」

少女は真剣に言う。

眉間にしわを寄せ、目を細め、少女は言う。









「改名する気はあるか?」


「はい?」

白秋はゆったりとした語尾もとれて、素っ頓狂な顔をした。

老婆の姿はあくまでも演技なのだろう。この姿を見たらだれでもわかる。

そのくらい、顔に見合わぬ表情をしていた。

「えっと、改名ですか?……ねぇ」

念のため付けました、と言いたげなくらい雑な語尾だった。

白秋は演じるのが得意なタイプではないらしい。

「そうだ。あの子と同じ字を持っているお前が羨ましいんだ!」

いつもの威厳はどこへやら。駄々をこねる子供のような態度の主人に白秋はあきれる。

「そ、それは秋のことかねぇ?この字を持つ者はワシだけじゃのうて、大勢、おるからねぇ。」

いろいろと雑だが、何とか意味は伝わる文章を白秋は口にした。

「そういう話はしていない。」

この後、必死で主人のご機嫌取りをする自分の姿を思い浮かべた白秋は、そっとため息を吐く。


××さまは0話の少女と同じです。

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