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異世界に咲く花  作者: 勇崎りりは
二章 正義VS悪意 編
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18/19

16話 聡明な少女

ルカは食事を終えた後、クリスティーアと雑談をしていた。


その時の話の流れでルカは町の散策をすることにした。

この世界に関する知識を少しでも増やすためだ。そのことをクリスティーアに伝えるとお小遣いをくれた。最初は断ったが、最後には押し負けた。


ルカの手の中にある貨幣は切符のようで、ただの紙切れのようにも見えた。いろいろな模様が描かれており、数字も記入されていた。子供の銀行ごっこで使われていそうな雰囲気もあり、どこかおもちゃのようなそれは少しでも力を入れたら破れてしまいそうなくらい薄かった。その紙を太陽にかざしてみても何も変化がなかった。



(この程度なら偽札も作れそうだけどなあ。)

ルカの手の中にあるお札に書かれていた数字は100が二枚、10が五枚だった。

ルカは近くの店に入る。新鮮な野菜が売られていた。もちろん買うつもりはない。

ミニトマトのような野菜の値段は30、キャベツは一玉15。

こちらの世界ではルカの知っているお金と価値が違うようだ。10=100円という認識でいいのだろうか?大体それくらいであっているだろう。つまり、ルカの手持ちは2500円くらいと言うことだ。


それを確認すると町をフラフラと歩き始めた。目的地はないが進行方向ならある。

警備隊、マサキのいた町から離れるように歩く。転生詐欺疑惑のあるルカについては、アーロンがごまかしてくれるそうだ。とはいえ、会ってもいいことはないだろう。

そう考えたルカは、転生した時の初期地点に背を向けまっすぐ歩く。



通りすがる人の服装を見ると自分の服がどれほど浮いているのかが分かる。

ルカは灰色のパーカーを着ていた。日本では無難な服装だったが、こちらでは違うらしい。ピシッとした西洋風の服の人が多い中、ダボッとしたパーカーはよく目立つ。


ルカはだんだんと気まずくなり、人目を避けるように少し裏路地に入った。


そこには、使い古された雑巾のような女の子がいた。茶色く汚れた髪に、白く細い腕、ズタズタのワンピース。

体育座りで極限まで体を折りたたんでいるからわかりづらいが、彼女はルカの少し年上だろうか?


ルカは声を掛けた。

「大丈夫ですか?」

ボロボロの少女はピクリとも動かず、下を向いたままだった。

大丈夫ですか、だけでは伝わらなかったらしい。

次はもう少し具体的に言うことにした。


「そこの、えっと、髪が、え、ゴホン、ズタズタのワンピースの方。あれ、この言い方もまずいかな?気を悪くされたらごめんなさい。」


次こそ彼女は上を向いた。彼女の顔を見てルカは驚いた。

灰色に濁り切った瞳、濃い目の下のクマ、薄汚れた肌。それでも彼女は美しかった。

いや、美しいというより、悲劇のヒロインのような儚さがあった。

辛い経験をたくさんしてきて、希望を失った少女を王子様が助けるシチュエーションはよくある。それに登場するヒロインを思わせるような状態だった。


創作物で見る分には「そうなんだ」で終わるが、実際にそういう人を見ると衝撃が凄かった。右手で口元を抑えそうになるが、その手を胸のあたりまでおろし、強く握る。そして左の手を少女に向けて差し出す。

その時のルカの頭の中はグチャグチャだった。

例えるならば、歴史で習った戦争の被害者に実際にあっているような、貧困に苦しむ国の子供に会っている時のような、そんな気分だった。



意味なく動いていた唇を開き、話しかける。

「私はルカです、大丈夫ですか?」


彼女は弱弱しい声で答える。

「わたし……。わたくしはユーカ、ですわ。」

ユーカは震える手を精一杯伸ばした。

ルカはユーカの見た目に合わないしゃべり方に驚いたが、にっこりと笑い、ユーカの手を取った。


ユーカの生気のない瞳に命が宿った瞬間を、ルカは見た。

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