14話 眼帯メイドの目からは逃れない。
食堂のそばにある手洗い場で手についていた汚れをながす。
手をタオルで拭くと、食堂の中に入る。
中にいたのは五人程度で、まだほとんどの人が集まってなかった。
その中には金髪碧眼のエルフ、クリスティーアと白髪眼帯の幽霊メイド、スミレもいた。
唯一顔見知りである二人のもとへ行くと、できる限り美しく見えるように礼をした。
「おはようございます、クリス様、スミレさん。」
「ええ、おはようルカ。」
「……おはようございます。」
優しげな笑顔を浮かべるクリスティーアと、けだるげな雰囲気を何とか抑え込んでいるスミレはとても対照的だった。
「ルカはそこの席を使っていいわよ。」
「ありがとうございます。」
クリスティーアが指した席は、クリスティーアやスミレの近くで、クリスティーアの気遣いが感じられて嬉しかった。
ーーーーー
10分後、配膳が始まった。
しかし、席はまだ埋まっていない。
大きめの机が五つあるが、二つ埋まっていない。
アーロンやリオン、トーヤ、マティアなどが見当たらないことから、正義科と反逆科が別室で食事をとっているのだろう。あの二つが『混ぜるな危険』なのは今日一日でよく分かった。そういうことだろう。
食事は洋食だ。パンにオムレツに紅茶、その他。
オムレツにはしっかり火が通されていた。この世界では生ものに気を付けよう、と思った瞬間だった。
クリスティーアの合図で皆が一斉に食事を始めた。
ここの人は全員、クリスティーアを慕っているらしい。
なぜかわからないが、この組織、やたら生活水準が高い。日本出身のルカが何不自由なく暮らせていることがまずおかしいのだ。昨日町を見てよくわかった。この世界は21世紀比べ、全然発展していない。
それなのにクリスティーアはかなり裕福だ。この国は平等を掲げているらしい。ということは富の一極集中が起こるとは思えない。
けれどそれが起こっていないと貴重であると思われる鉄を、ナイフやフォークと言う形で使うなどあり得ないのではないだろうか。
この世界について知れば知るほど、一番最初に不法侵入した小屋の異常性が分かる。あると便利だから、と何かを持ち出さなかった一日前の自分に感謝だ。
そんなことを考えながら紅茶に手を伸ばす。
「ルカ、紅茶のカップの持ち手に指を通すのはマナー違反です。」
「は、はい!」
ルカは慌てて紅茶を置く。真後ろにスミレが立っていた。さっきまでクリスティーアの後ろに控えていたはずなのに……すごい早業である。
しかし、ルカはスミレの言ってる意味がよく分からなかった。紅茶のカップは普通のティーカップだった。
控えめに周りを見るが、答えはわからない。
後ろの圧がどんどん強くなっている。
普通に怖い。焦りで心音が倍速以上になってる気がする。
かちゃ、と、控えめなガラスのぶつかる音がした。
その音は小さいのに、とてもよく響いた。
その音がした方向に目を向けると、クリスティーアが紅茶を飲んでいた。ティーカップを持ち上げる動作がとてもゆったりとしていて、見やすかった。
手元をよく見ると、ティーカップの、指を通すところだと思い込んでいた所を、人差し指と親指でつまんで持ち上げていた。
ハッとしたルカに、クリスティーアはいたずらっ子のような笑顔を向けた。
お姉さん系の美人のこういう顔は破壊力はすさまじい。
ルカは自分の手元に目を向け、ティーカップをクリスティーアと同じように持ち上げてみた。
(筋トレかよ!)
ルカの心の声はその一言だ。
紅茶がたっぷりと入った容器は、二つの指で持つには重すぎるのだ。
ルカの手はブルブルと震えていた。本当に重い。
これを優雅にできるクリスティーアはすごすぎる。
ルカは紅茶をこぼさない様に細心の注意を払い、ティーカップに口をつける。
一口で少し多めの量を飲んだ。次持ち上げる時のため、少しでも軽くしたかったのだ。
一仕事終えた気分のルカはティーカップを置いた。
「……まあ、いいでしょう。」
スミレ的には赤点ギリギリだったらしい。不満気だが、圧が気持ち控えめになった。
ルカはそっと、安堵のため息を吐いた。
少し投稿頻度が落ちるかもしれません。
申し訳ありません。




