097話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編②:竜との決戦(前編)】
<ルビア・モンス・ラオクス サイド>
『ぐ・・いったい何があった?』
竜は突然の出来事に混乱している、最強種の自分が隙をつかれ攻撃されたことにだ。
そのため、まだ周りの状況に意識が向いていない。
攻撃を開始したところで竜が起き上がってきたが、そのまま攻撃を開始する。
初手はフタマタカチョウから竜に対して火球を・・え?何あれ?
フタマタカチョウが2つある首をぐるぐると巻き付けて、合わさった2つの口から火球と雷撃が合体したような攻撃が飛び出したのだ。
それが竜の体に到着するとバリガリと身を削るような凄まじい音が響き、竜が驚き苦しみだす。
そのまま竜に舞い降りて羽の先にある鍵手と尻尾で竜を殴りつけ、吹き飛ばした。
しかも、その足で竜を掴み上げ振り回した挙句、投げ飛ばしてミミの結界に叩きつけた。
「カチョウが強くなってる!?」
しかし、搭乗するビーチェは平然としていて、いつも通りの戦闘をしているように見える。
『く・・・貴様、鳥風情が無礼な!』
怒れる竜の顔にトドメの糞を べちゃり 落として、さらに激昂させている。
竜が立ち上がり溶岩弾を吐こうとしたところ、死角から近づいたダイアンウルフが竜の右足に爪による双撃を加えた。
『ぎゃ!?今度は何だ?・・こそこそと犬風情が!』
「あれ?・・・ウルフ、いつもより大きいよね?」
『ああ、でかいな』
そのまま撹乱・・と思いきや正面から竜に突撃して溶岩弾を交わして、何やら黒い液体を竜の顔に吐きつけた。
『おわっ・・おげ〜〜〜〜〜!くせーーーー!!!』
その場でゴロゴロと転がりまわる竜に、カチョウからの雷火球が降り注ぐ。
更には、双撃を加えた場所にウルフが噛みつき皮膚を引きちぎる。
「ねえ、ギラちゃん。私達必要ないかも?」
『いや、あやつらも新しい力を試行錯誤しているようだ。必ずスキが出る。そこまで出番を待つぞ』
その後、カチョウが首の絡み方を変更した。あれって何か意味が?
そう見ていると、今度は風を纏った水弾が放たれる。
周囲の風が竜の皮膚を刻み、そこに苦手な水が擦り込まれていく。
『ああああああーーーーくそが〜!うっとうしい!』
カチョウによる傷を負った場所と牙で引きちぎった場所に、黒いオーラに包まれたウルフが突進して体当たりをしていく。
そして、その傷に黒い靄が取り残されて、その場所からなにやらジクジクといやな音が響く。
経験のない痛みに困惑する竜の顔に べちゃり また糞が落ち、ばしゅ 黒い嘔吐物を吐きつけられる。
『うがーーー!!!ゴミ共が調子に乗るなーーー!!!』
『あやつは闇属性では無かったはずだが?確か水だったはずだ』
「闇・・あ、そうえいばシアーラが闇属性だったわ。あの嘔吐は闇と水なのね」
あれ?もしかして二人も私の合一に近いスキルを得た?でも、それなら更なる戦力アップになるの。
「ん?カチョウは火と風だけど、ビーチェは水だけのはずなの」
『・・・あやつは宝珠を2つもらっていたな』
そういえば『頭が2つあるから2個寄越せ』ってイツキちゃんに強請ってたって、ビーチェが呆れてた。
「それが雷?」『おそらくは』
「・・・もうイツキちゃんが神様にしか見えないわ。抱き枕に神様機能がついてるなんて・・子爵の全財産でも買えなそうなの!」
『私はおまえの能天気さがうらやましいぞ』
その戦闘を見て・・正確にはその戦闘に歓喜するルビアを見て、自身の新たな力を見せて褒められたい衝動に駆られるミミ。そう!ルビアの主役は私なのよ!
『ふふふ、イツキちゃんから頂いた神聖属性の技を披露してルビアの笑顔を!くふふ』
ミミの右手の人差し指に神聖属性の輝きが灯り、徐々に圧を高めていく。
その圧に全員が気づいてミミに振り向くと、その指から銀色の何か、おそらく神聖力の準備が完了する。
『見よ!セイクリッド・ミミ・ブラスター!』
ビシッ、と右手の人差し指を竜に振り向けると、銀色のビームが竜の右腕を蒸発させ・・そのまま結界も切り裂き、消滅させた。
それを確認した竜は、慌てて大空に飛び立ち・・・逃げだした。
「ミミのばかーーーー!!!」
『あああああ、ごめんなさーーい』
だが、やらかして困惑するミミを救う救世主が現れる。
「ミミ、ナイスタイミングだわ!」
逃げ出した竜の上空に、大剣を手に持つ左腕を右後方に配置し、全身をねじった状態のイツキが舞い降りる。
「『イツキちゃん!?』」
「くらえ!奥義・・【万死】!!!」
全身からの力の流動を左腕1点に集約して、その解き放たれた力で相手を袈裟斬りで2分割するイツキの奥義が炸裂した。
その斬撃の光は竜の左肩から右腰までを切り裂いた。
竜は血を吹きながらルビア達の元に落下した。
だがイツキの顔がゆがむ。なぜなら傷が治っていないからだ。
もう一つの奥義、治癒の【佳夢】が発動しなかったということは・・・殺せなかった事になる。
「うーん、イケると思ったんだけど、空中での足の踏ん張り不足と予想以上に硬かったわね」
『我の主として、修行が足らんぞ』
「言葉もないわ・・もっと修行しないと」
「いえ、さすがは師匠です!」
「いたたたたたた!!!力が暴れまわる〜」
神器デウスに指摘され、ステンド・ジャチ・コディーマ女伯爵が師匠を絶賛し、名も無き女騎士が発氣の発動で苦しんでいた。
ずずーーーん!・・そう音を立てて、血まみれの竜が地面に落ちた。
「ふう、これで討伐完了ね」
そう気を許した面々に、イツキとギラちゃんの怒号が飛ぶ。
「まだよ!速攻で殺しなさい!」
『気を抜くな小娘共!』
『ゆ、ゆるさぬ・・許さぬぞ!人間どもがーーー!!!!』
流れ出した竜の血が、溶岩流に変わり傷ついた竜の失った腕を含めた体を治癒・再生していく。
そして、立ち上がった竜の全身から「【火砕流】!!!」周囲に数百度の熱風が放たれた。
気を抜いたルビア騎士団が高熱で焼かれようとしたその瞬間、救いの手が差し伸べられる。
「ステンド!」「お任せを」
気を抜くこと無く準備万端だったステンドの聖具【氷華】から絶対零度のトルネードが竜ごと火砕流を飲み込んだ。
「すごいです師匠!ご指導の成果で得られた発氣との融合技!氷華も喜んでおりますぞ」
「いや、話だけで使いこなせるあなたもすごいわよ」
「恐縮です!・・さて、なんて技名にしようかしら」
「ルビア、ギラちゃん、遊んでないで、さっさと攻撃しなさい!」
「『はい!』」
そう指示はしたものの、二人ではまだ殺せないだろうと、再度【万死】で待機する。
『今度はぬかるなよ?』
「誰にものをいってるの?今度は上位版を見せてあげるわ」
『ほう、それは楽しみだ』
本当に生意気な神器よね・・ふふふ、優しくしようと思ってたけど不要のようね。
余計な一言が死を招く、沈黙は美徳・・この後、神器:宵闇剣デウスは心に刻む事になる。




