098話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編②:竜との決戦(後編)】
<ルビア・モンス・ラオクス サイド>
火砕流は防げたが、氷風を消し飛ばして現れた竜は溶岩のごとく赤く光り輝いている。
近づくだけで熱風で焼かれそうなほどの高温だ。
高温に耐えられずにカチョウやウルフが撤退する中、イツキちゃんに叱咤された銀の騎士が高速で竜に向かっていく、それが私なの。勇ましく書いたけど、実情は・・・
「あつい、あつい、あつい、あついーーー!!!」
『我慢せい、私もきついが全身に氷属性を付加しなけれればならんのだ。ルビア!風をもっと吹かせろ』
そんなこと言っても・・私の風は貧弱で・・・あまり意味が・・・
「発氣と混ぜて使いなさい!ギラちゃんもよ!」
発氣で?・・でも、あれは身体強化では?・・ん?強化?・・そうか!「『魔力も強化!』」
イツキのその一言で、発氣の使い方の一つを学習したルビアとギラ。
魔力と発氣で強化された渦巻く風氷を纏って竜に接近する。
「痛い痛い痛い痛い!」
方やイツキの隣で、発氣に苦しむ女騎士。
「症状がひどいわね。なら、あなたはこれを使って攻撃しなさい。体中にある痛みの元をこの銃を使って吐き出すの」
痛みが無くなる!?やるわ!そう女騎士は歓喜した。
イツキの言葉にすがって、魔法銃をにぎりしめる。
「まだよ・・そうここ!さあ・・いまよ!スッキリしなさい!」
イツキが照準を合わせ、準備ができたところで女騎士に合図を送った。
「あーーーー!痛みの元!さっさとでてけーーーー!!!!」
その瞬間、銃口から膨大な氣力が現れ、10m程に膨らんだ後、竜に向かって放たれた。
「うわ、この娘すごい氣力ね。これは痛いはずよ。最優先で使い方指導しないと。この娘死んじゃうわ」
「くぅぅ、師匠に褒められるなんて。スザンヌ!羨ましいぞ!」
ここでようやく、スッキリして気絶している名も無き女騎士の名前が分かった。
しかし、これほどの力の塊だ。竜も当然気が付き3枚の『土竜壁』で防御体勢をとる。
だが、イツキの想定通りふらふらと無自覚な動きをする光球。
これは・・サクッと交わして竜に激突する。そう思われたが、なにせサイズが大きすぎた。
上に浮き上がった後、そのまま降下して土竜壁ごと、竜自身も圧壊した。
『ぐああああああっっっっ!!!』
『好機!決めるぞルビア!』
「はい!決めます!」
「・・・予想以上の氣力だったから、今度こそイケるかしら?」
そう指示をしながら、もしものためにイツキも追撃の準備を開始するのだ。
「いくよギラちゃん!」『おう!』
剣を前に突き出し、威力が増大した氷属性に身を包み周囲の風で凍度を更に上げ、発氣全開で冷気をたなびかせながらの高速移動、大砲のごとく苦しむ竜に突進していく。
「死ね!ホワイトアローーーー!!!」
純白の大砲がそのまま竜の腹に突き刺さり、赤く輝いていた竜の体を白く染め替えていく。
『があぁ・・あ・・あ・・・あ・・・あ・・・』
竜の断末魔が聞こえ、全身が白に染め替えられていく。
その純白が、最後に残る顔に差し掛かった時、ギラリ、と竜の瞳に地獄の炎が灯った。
「やば!?」
そう叫んだのは誰の声だったのか?その数瞬後・・竜が、体に残る熱を一気に放出した!
『がああああああーーーすべて焼き死ねーー!!!』
幸いにも、ほとんどの人は避難して無事なのだが、一組だけはその熱で全身を炙られることになる。
それが私とギラちゃんだ。
「きゃーーー!!!」
『ぐああっ・・だめだ!ルビアだけでも・・あああ、守りきれん!』
眼の前が真っ赤になり、全身を痛みが包み込む。
発氣で抵抗はしているが、耳も強化されているのか?ジリジリと体が焼ける音が聞こえ鬱陶しい。
ああ・・ごめんね・・ギラちゃん・・それと、ミミにまた会いたいな。
そのまま焼け落ちそうになったが、一筋の光明が差し込んだ。
『私のルビアに何しとんだーーー!ごらあ!』
ミミが・・その身を焼かれながらも・・竜に飛び蹴りを食らわせていた。
「ナイスよ!ミミ!」
それと入れ違いに、全身からバリバリと音を発するイツキちゃんと「あだだだだ!」と泣き叫ぶ剣が【万死】の体勢で飛んでくる。
「これが【万死・改】よ!」
今度は全身をエレ氣で強化しての【万死】。威力は数倍に増強されている。
しかも今回は、宵闇剣デウスにもエレ氣を通しているので更に強い・・その代償でデウスは激痛に見舞われているのだが。
その静かな光の一閃で、すべての音、力の残滓までもが消し飛とんだ。
その静寂の中で ズズン 竜の崩れ落ちる音が響き、数瞬後に周囲から歓声が上がる。
「うわぁ・・・最悪だわ・・キモすぎ」
だが、竜を退治したイツキちゃんは何か変なものを食べたような顔をしていた。
嬉しくないのかな?と見ていると・・・
「ルビアーーー!!!今すぐ治すからね!!!」
「『ぎゃーー痛い!痛い!』」
ミミが突進して抱きついてきた。もっと優しくして〜!!!
だが、その状況も長くは続かなかった。
死んだはずの竜がむっくりと起き出してきたからだ。
慌てて戦闘態勢を取ろうとするが・・・
「よう、マザコン。私にあんなキモいの見せやがって!もう一度死ね!」
その言葉にビクッと反応して、慌てた顔でイツキちゃんを見る竜・・その顔がちょっと可愛かった。
だが、その直後にイツキちゃんの今日一の蹴りが炸裂して首がチョンパされていた。
その後、いやいやながらに首をつなぎ治していたイツキちゃんが・・なんか笑えたの。
そして、二度目の復活をして目が覚めた竜といえば・・イツキちゃんの前で土下座をしていた。
『どうか!どうか!あのことは内密に〜!!!』
「いやよ、領地を攻撃したんだから・・国中に知らせるわ。あなたは笑いものね」
『あれは出来心なんです〜、愛しすぎて暴走したっていいますか』
「まあ、話によっては黙っているわ・・あなた、私の下僕になりなさい」
『げ!・・下僕!?いくらなんでも高貴な竜に対して・・そうだ!お前を殺せばいいのだ!』
再び竜の全身から、猛火が沸き起こるが、イツキちゃんの一言で沈下する。
「あ〜、こわいこわい。ならすぐにここを逃げるわ。逃げながら〜大陸中に伝搬するとしましょう」
「ごめんなさい!嘘です!下僕・・喜んで!」
竜を手玉に取ってるイツキちゃん・・やっぱりすごいの。
「まあ、そんなことしなくてもあなたは自ら私の下僕になるもの」
「え?いくらなんでも、心底はないですよ?・・隙を見て殺そうかと」
竜の言葉を無視したイツキちゃんは、なにやらゲートという魔法を使う。
そして、その黒き空間から2体の白竜が飛んできて、イツキちゃんにじゃれ始めた。
「久しぶり〜」「早くなでろ〜」
「あなたたち、見る度にペット化してるわね。エンシェント・ドラゴンの名が泣くわよ」
え!?・・え・え・エンシェント・ドラゴン!?その小竜達が?私達はその言葉に絶句する。
そして、そこだけのほんわかした光景をボーゼンと見ていた竜が突然ブルブルと震えだし・・あ、鼻血を出した。
「うそーーーーーーん!!!そ、その御方達は・・・全竜族のアイドル!神聖竜ちゅぁぁん、では!?」
「そうよ、私の娘たちよ・・この娘達のお婿さんを誰にしようか悩み中なのよね」
イツキちゃんがそう言うと・・・竜が壊れた。
「お・・お・・・お義母様ーーー!!!娘さん達を私にくださいーーーい!」
「却下よ!・・あのキモい場面を思い出してしまったわ」
飛びついてきたところにイツキちゃんのフルスイングの拳が炸裂・・・あっけなく吹き飛ばされた竜が白目を向いている。
そこに二体の竜から非常にもブレスが放たれ、尻尾がこんがり焼け焦げた・・あ、なんかいい匂い。
「私にすら勝てない貧弱さでは駄目ね。そもそも二人一緒に娶るとか・・論外よ!さあ、フィル、ティエ、あの尻尾で食事よ」
「「やったー!」」
イツキちゃん一人で簡単に・・・私達の死闘って一体なんだったのか。
『そう言うな、我らにとってはいい経験だったぞ』
「たしかにそうなの・・でも大怪我したからミミがすごく過保護になりそうなの」
『それはルビアが説得するのだ』
「はーーーぃ」
その後、みんなに配られた竜の尻尾のお肉は塩だけでも最高に美味だった。
『おおおっ!この肉最高じゃないか!?お義母様!ぜひこの魔物の名前を教えてくれ!』
「義母じゃねー!弱いくせに娘たちに手を出したら・・今度こそ食べ尽くすぞ!」
『いや、その前にこのお肉は私が狩り尽くして、結納代わりにします』
「・・・じゃあ狩り競争しようか?」『私が勝つ!』
「この肉の正体は・・土炎竜よ『ど・・え!?私!?』さあ、狩り尽くしましょうか!」
「フィル〜、ティエ〜、新鮮なお肉よ〜」
『冗談はやめて・・流石に燃やしますよ!あれ?力が出ない?ぎゃ、痛い痛い!その足はまだ生です!生きてますから〜!!!』
目覚めた竜に自分の尻尾のお肉を与える非常なイツキちゃんだが・・竜がイツキちゃんに足を食られる場面は超怖かった。
トドメの「後で治せばお替りも出来るわ」という言葉で竜の戦意が完全に折れて、しくしくと泣き出した。
「あなたの陳腐な脳でも上下関係が理解出来たかしら?」
という言葉に竜は全力で頷いていた。ちょっと竜に同情してしまったのは内緒だ。
領都に引き上げる際
「みなさん、お荷物をお持ちしますよ」
あの竜が忠犬に変わっていたのも、うなずける出来事だった。




