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幕間003話 イツキの宿敵が参戦開始

比売神撫子ひめがみなでしこ サイド>


伊月ちゃんが、テロ事件に巻き込まれ行方不明らしい。


比売神撫子ひめがみなでしここと、ひめちゃんは伊月ちゃんと学校は違うが同学年。

伊月ちゃんのレディース「魔天使」と敵対する「闇夜の鬼」を率いる総長である。

黒髪を膝あたりにまで伸ばしているが、典型的な日本人の容姿で特に特徴もない、どこにでもいる女性。

その実、ひめちゃんは既に人を超越して永遠を生きる存在だ。

ひめちゃんは、いままで自身の力の強化以外には興味はなかった。

だが、当時4歳児の山本伊月が見せた底の見えない程の深淵なる暗黒力を偶然に見ることになった。

しかもただの暗黒ではない、深淵たる暗黒なのに気高く美しく感じる相反する力に魅了された。


「あれこそが我らが目指す【至高なる闇】だわ!」


だが、当時の伊月には敵が多かった。伊月を嫌う両親は撃退されたが、伊月に瘴気を浴びせ続ける謎の存在に、生き物を玩具と思っている天界神ガイアにも気に入られてしまった。

これからは玩具を弄くり回す様にガイアからの干渉があるだろう。

嫌悪されながらも一応世話をしていた親も居なくなったし、あの周囲の瘴気では・・1年もつかしら?

まだ4歳のか弱い存在だ。一瞬の瞬きで消えゆくだろう。

惜しくもあるけど、全てに敵対してまで欲しいと思うほどでもない。

いいものを見せてもらった、それにだけは感謝しよう。


そう残念に思うも、無視出来ずに観察していたのだが・・予想に反しその後は自身が大切と思うものを守り、逆にその大事な者達に守られるようになり(幻獣には驚いた)敵意に屈する事無く順調に成長していった伊月・・伊月ちゃんに次第に興味を持つようになる。

そして、ついに伊月ちゃんに対する興味は最高潮に!

伊月ちゃんが超難関高校に入学する際「一緒に生活を送ってみたい」と入試を受けるが・・試験内容がさっぱり分からなかった。

特に歴史・・日の本を統一した功労者、征夷大将軍の織田信姫ちゃんが出てこないなんて。

それなら「伊月ちゃんのライバルになろう!」そう方針変更してお金があれば誰でも入れる高校に入学した。

そして、早速レディースを結成して嬉々として伊月ちゃんの高校に乗り込んだ。


「おら〜!山本伊月いるんだろ?ちょっと可愛いからってちやほやされやがって〜、私が教育してやるから・・出てこいや!」

これが伊月ちゃんとの初対面・・・結果、ボコボコにされた。人を超越している私がよ!

流石に真の力である暗黒力は周囲に多大な影響を与えるので使わないけど、それでも下位属性の闇で対抗したのよ?それでも自衛官100人くらい軽くひねれる位には強いのよ?それでも負けたの・・あの発氣って反則よね!

それから3年間、私も特訓をして決闘を続けた末に「なかなかやるわね」と交友を結び、時折二人で遊びに行ったりもする仲になった。

だからこそ・・友達の伊月ちゃんの動向が心配でたまらない。

そのモヤモヤを日本妖怪を統べる、ぬらちゃんにぶつけようと呼び出した。


「先日、伊月ちゃんの不在を知った妖怪が騒ぎを起こしたそうね、ぬらちゃん?・・ひめちゃん悲しいわ」

「お騒がせして申し訳ありませんでした」

あら?いつもは冷や汗を流しながらしどろもどろになるのだけど・・今日は何かあるのかしら?

日本妖怪の取りまとめ役である、ぬらりひょん。記録にも多く残っているが過去には妖怪達はやりたい放題だった。

だが、ひめちゃんがこの日の本に来た江戸中期以降、敵対を恐れて異相に引きこもり活動は小規模になっている。

更にイツキちゃんが現れてからは、小さな問題を起こす度に怒られるパワハラ上司に仕える中間管理職にまで成り下がっている。


「現在、乱れた異相を調整中です。ただ、その原因が・・どうやら天界神ガイアと伊月様にあるようでして」

なにやら興味深い話だけど、正直伊月ちゃんには天界神との敵対はまだ早い。

不在の理由・・もしや?伊月ちゃんが・・死!?

底なしの穴に落ち続けているような不安感に襲われながらも、冷静を装い無言で話の先を促す。

それを見つめるぬらりひょんは『新参者が偉そうに!だが伊月のことになると扱いやすい』と心の中でほくそ笑む。

当然ながらそれを表面に出すことは一切ない・・出せば殺されるから。


別の世界から現れたいけ好かない比売神撫子ひめがみなでしことその一派、分類的には天狗という妖怪種族であるが、その強さは別物だ。

天狗とは闇を渇望する余り、人から妖怪に変化した闇の修験者であり求道者なのだが、比売神一派は修行の末に闇を修め、神聖と対を成す暗黒の扉を開いた神と同等な者達なのだ。

そして神聖たる象徴である神と敵対する集団「天仇てんぐ」、その長が比売神撫子ひめがみなでしこであり、基本的に闇の系譜である我らの上位種、決して逆らえない存在である。

自分を『ひめちゃん』とか言う、こいつにむかつきはするものの、大きな騒ぎを起こさねば基本的に我らには無関心だ。

一番厄介なのは、なぜか妖怪の一部に絶大な人気を誇る山本伊月のほうだ。

こいつらみんな居なくなるといいな〜と、いつも思っている片割れがようやく居なくなったと、内心歓喜している事を知られる訳には行かない。


「撫子様、落ち着きなされ。この話は悲劇ではありませぬ。これは最高に笑えるお話なのですぞ」

「ほう・・ぬらちゃんの推薦なら、さぞ面白そうね。さあ・・早く!」

まず、伊月ちゃんが無事という事にほっとした。

そして、喜劇ならイツキちゃんの武勇伝が聞けるのだろうか?

そう思うと一転してわくわくと瞳を輝かせる。

「まずは、テロ事件の最中に起きた出来事なのですが・・・」

だが、話の導入部である異世界からの強制転移の話の段階で・・・


「ひめちゃんの大切な・・伊月ちゃんを・・強奪しただとーーー!!!」


殺気を爆発させてぬらりひょんを気絶させてしまった。


「す・・すまぬ。伊月ちゃんの事になるとどうにも・・困ったものだわ〜」

「い・・いえ、私も不注意でした」


長生きしすぎて老化で前頭葉が劣化してるんじゃないか?

くくく・・ちょっと嫌がらせしてやる。

日頃の恨み・・怒りに任せて調子に乗るぬらりひょんは余計なことをしてしまう。

「ですが・・殺気にアテられて、少し体調が・・このお話は明日以降に・・ひっ!」

気がつけば周囲を底の見えない暗黒が取り巻いて・・逃げ場などどこにもない。

「そう・・なら記憶だけ残して本体はふよ『そ、そこまでご興味をいただけたとは・・ぬらちゃん、がんばってお話します!』・・流石は妖怪代表ぬらちゃんね、ではよろしく!」

怖かった・・超怖かった!やっぱ長いものには巻かれておこう!

改めてそう決意するぬらちゃんだった。


「ふはっ!何?ガイア、伊月ちゃんに力を奪われたの・・ぶふふくくく・・早速挨拶に行ってこよwww」

ぬらちゃんの話では、天界神ガイアは伊月ちゃんの異世界転移を阻止しようとしたらしい。

まあ、伊月ちゃんはガイアもお気に入りだから当然だろう。私でも同じ事をする。

その際に力をごっそりと伊月ちゃんに取られたらしい。

どうやったのかは知らないけど・・ぶふふふ!やっぱりあの娘は最高ね!

「そして今は天界マーキュリーに。現在は例の【トゥマーン】と敵対しているようです」

「なに!?【トゥマーン】だと!何故あの崩壊寸前の天界にやつらが居るのだ?」

爆笑から一点、その敵の名前に驚いてしまう。

【トゥマーン】とは我らが勝手に呼称している、最近勢力を拡大している謎の組織だ。

表に出ているのは黒の女神という存在だけ。

そして世界を股にかけ、いくつもの天界を陥落させているらしい。

暗黒を極める修行として神々と敵対している私達とは違い、世界の暗転を狙っている面倒な組織だ。

天界神ガイアと仲が良いとも噂されているので、ろくでもない組織確定だ。

ならば、ひめちゃんも伊月ちゃんの元にいかねばなるまい。


魔姫まき闇皇あんこう、ガイアをからかいに行くわよ。鬼鬼ききは伊月ちゃんの居場所を四天王に連絡してきて」

「御意」「やった〜!このはのお菓子が食べられる〜」

魔姫まき鬼鬼ききは了承したが、闇皇あんこうが疑問を投げかけてくる。

「なんだよ、ひめちゃん。伊月のところじゃねーのかよ?」

いつの間にかひめちゃんの周囲に現れた深き闇達に仰天しているぬらちゃんは放置する。


ちなみに、魔姫まきは十二単を着た日本女性、天仇のナンバー2。

闇皇あんこうはかつてアフリカを統一した部族で魔神の称号を持っていた最強戦士。壮齢の黒人男性で今の姿は異国のサラリーマン。

鬼鬼ききはアメリカ大陸で横暴な移住者の首を狩りまくっていたインディアンの女性狩人。かつてはスク水愛好家で自身の容姿を誇示していたが、伊月ちゃんに「女性が無闇に肌を晒すな!」と超怒られて現在は高校の制服姿、当然スカート丈は膝下である。

いずれも恨みつらみからではなく、真摯に闇を渇望する暗黒の求道者達だ。


「ばっかね〜、ガイアをからかい尽くした後に『なら、代わりにひめちゃんが伊月を殺してこよう』って、提案するのよ。これなら楽に天界マーキュリーに行けるわ」

「なるへそ、一石二鳥だな」

天界マーキュリーは崩壊危機のため巻き添えを危惧して鎖国中、ひめちゃんほどの強大な存在が仲間を引き連れて楽に行くには神ルートが最適なのだ。

「それに・・成長した伊月ちゃんの暗黒を・・食べちゃっても良い頃じゃない?」

そう言い切った私に、部下たちは抗議の声をあげる。

「却下・・ひめちゃん虚勢はだめ」

「伊月と敵対?大反対!」

「負けてスッキリ配下になりたい!って言えばいいのに」

・・・すっかり心を読まれているわ。

そろそろひめちゃんも立花達みたいに伊月ちゃんと一緒に戦いたいもの。

でもね、組織の頭として一度はガチンコしないと仲間に示しがつかないのも事実・・・


「「「なにより、伊月のごはんは最強なんだから!!!」」」


へ?食事?・・・あなた達、なに?伊月ちゃん達の家に入り浸ってるの?

そもそも・・なんでひめちゃんも誘わないのよ!?

って、ごはん!?伊月ちゃんご飯作れるの?・・え!?このはの料理より美味!?

それを・・なんでひめちゃんに献上しないのよ〜!!!

一部のものしか知らないが、伊月が仲間に作る料理は何故か非常に美味しいのだ。

「伊月ちゃんの【愛】が、たっ〜ぷりとこもっているから美味しいの」

そう、伊月の料理の秘密を語るのは綾瀬このは。同じ材料でも目を見張る程に味が違うらしい。


実は・・・これはあながち冗談な話ではない。

以前タツキに『イツキよ。【美味しくな〜れ】という魔法の言葉があるらしいのじゃ。それで作った料理を食べたいのじゃ!』と可愛くねだられた。

当時中学生だった伊月は、可愛い娘のタツキのために言われた通り作ったところ『最高にうまいのじゃ!』と大絶賛された。

以降、心の中で無意識レベルに行っているようで、同じ台所に立つこのはだけが知っている秘密だ。

きっと、魔力的な・・発氣的な・・何か未知の何かが入っているのだろう。


く!?部下に抜け駆けされるとは・・このイライラ・・ふふふ、ガイアに嫌味たっぷりで晴らしてくれようぞ!


ひめちゃんたちが拠点を出て1週間後、天界ガイア=地球の北半球に観測史上最大の熱波が到来して大騒ぎとなるのだった。


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