093話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編②:メイド:ウランの回収】
<イツキ・ルノワール サイド>
何故か気絶したフィーネが起きたのは夕食の時間帯だ。
「ううう・・アサシンズブラッド・・怖い・・怖い・・」
「なんか強そうな名前ね?もしかしてGちゃん達のこと?」
いまだにガタガタ震えるフィーネから理由を聞き出したところ、金竜に滅ぼされたフィーネの国ではGは「人が襲われた時点で都市を放棄」しなければならない程に非常に獰猛で狡猾な魔物らしい。
もしや!?地球のGも魔物なの?・・・あいつらはギトギトして全く可愛くないけど。
ゴミを食べている内は害はないが、間違って生きてる哺乳類の血肉を摂取すると周囲のGすべが狂う。
そして、それ以降は死ぬまで哺乳類のみを襲い、生者のみを獲物として襲いかかる。
しかも狂いながらも狩りは冷静。僅かな隙間に潜み続け、狙った獲物の隙をつき暗殺者のごとく襲いかかる。
そして1ヶ月も放置すれば万単位の犠牲者が出るそうだ。
「うわぁ・・10cm程のサイズでしかも集団でそれをやられると一般人は生き残れないわね」
「やつの茶苔刃は剣豪の一撃です。人の首などたやすく切断します。その狡猾なアサシンズブラッドが堂々と目の前に現れたら・・そこが死地なのです」
「恐怖した理由は分かったけど、ここのは別種でオーラルの配下で味方よ」
「・・・はい」
納得しなかったので、Gちゃん達に先払いで褒美の魔石を食べさせる仕事を与えて慣れさせた。
「ふう、本当に大丈夫ですね・・お礼に金貨を頂きましたし」
「でしょ?あとは食事で癒やされなさい」
魔法で背脂ラーメン+ぎょうざ+からあげ+チャーハンを作って与えると「なにこれ!?うまうま〜」と無心で麺を啜り始めた。
移動時は干し肉だったし、そもそも1年間山の中で暮らしていたのでろくなモノ食べてないでしょう。
そのフィーネの肩の上で、キラキラした瞳で後の排泄を期待しているシマエナガ姿のミッチェル(サイズの縮小可能)。
2日経ってもまだ気づいてないようだけど、それを食べる機会は永遠に訪れないのだ。
ん?餓死させるのかって?それについてはフィーネが食事を分け与えているから問題ない。
やつにとってフィーネの排泄物は主食ではなくさる宗教のパンと同義らしい。
「さて、2人の状況を把握したことだし、アホ共へのいやがらせ作戦開始よ!」
二人を捜索したところ、侍女ロアとメイドのウランは既に解雇されている事が分かった。
ロアは不明だがウランの方はこの領地の宿屋(資金はGちゃん提供中)に待機しているそうだ。
ならもうここに用はない。いやがらせ&慰謝料とウランを確保してさっさと領地を出る。
そう宣言するとGちゃん達は音もなく移動する。
しばらくすると各所から悲鳴が聞こえ、襲撃の開始を伝えてくる。
「じゃあ、慰謝料回収に行くわよ」
鍵は既に闇魔法で腐食させていたので、たやすく破壊して牢屋の奥に進む。
最奥の牢屋は扉は鉄扉だが、貴族用なのか?上流階級の寝室のように広く綺麗できちんと家具が配置されている。
その中で、地下室なのに存在している豪華な暖炉をくぐり抜けると右奥に進む道があり、その先に宝物庫があるそうだ。
この場所はGちゃん達からの情報提供で、ウランへの軍資金もここから出ているそうだ。
だが、6畳程の広さの宝物庫に入ると・・ほぼ何も無かった。価値がありそうなのはテーブルの上にある数十枚の金貨と小箱のみだ。
Gちゃん達いわく「美味しそうなものが色々あった」そうだが、あのゴミ(父親)が一代で散財したらしい。
そのゴミが急死したため、この場所は引き継がれなかったのだろう。
だが、ゴミは入り婿のため正式な子爵の血統は母の系譜となる。
ゲーム設定上、その正当な後継者たる私のものにしても問題はない。
金貨を回収し、小箱に触れると『血統を確認・・解錠します』との声が響く。
「へー、これが血族魔法なのかしら?」
小箱の中を見ると、小型の銃?と指輪が入っていた。
神眼で調べると銃が試作型の魔法銃、指輪は・・おおっ!アイテムボックスだ!
「どちらも良いものね。剣と銃・・戦闘スタイルとして面白そうだわ・・アイテムボックスは解析して量産しましょう」
基本的に私の魔法で色々と作れるけど、イメージの出来ないものは難しい。
アイテムボックスも出来ない分類だったけど、ようやく実物が手に入った。まずはコピーをしながら解析していこう。
「ほい、フィーネ。アイテムボックスよ」
「え!?もうコピーしたんですか?」
「この部屋程度のものしか入らないアイテムボックスだから余裕よ」
「絶対に余裕じゃないと思いますが・・ありがたく使わせて頂きます」
よし、ここでのやることは終わったわね。
「さあ、抜け道から出るわよ」
「あの、Gちゃん達は回収しなくていいのですか?」
「みんなは子爵領で作戦を継続するそうよ・・あの元王弟、臭くて嫌いだから追い出すって」
「Gちゃん達に臭いって嫌われる王弟って・・ぷぷっ!」
宝物庫の先にある通路を抜けると、最終的に裏庭に出た。
もちろん子爵邸は大混乱で私達に気づくものなど皆無だ。
そのまま子爵邸を出て、ウランの居る宿屋に向かおうとするも・・私の匂いに気づいたウランが既に子爵邸前で待機していた。
そしてものすごい速度で近づき、警戒態勢だったフィーネの捕縛をかいくぐり私に抱きついた。
その人外の俊敏さ・・あんたそれ発氣よね?いつの間に覚えたのよ!
「はぁ〜・・・これ!これよ!このかぐわしい香りをどれだけ待ち望んだことか!」
「・・・イツキ様、その変態はなんですか?」
「これがメイドのウランよ。言ったでしょ異常な程の匂いフェチだって」
「一般人って話でしたよね?なんですかあの移動速度は?」
それは私も疑問なのよね。別れた時は普通だったのに。それに答えたのはウランだった。
「はい!イツキ様と再会したら二度とにが・・置いていかれないよう鍛えていました!」
目的はあれだけどすごい素質ね・・ところで後ろにいる男性はなにかしら?
「あ!これは私の婚約者ジェスといいます・・気に入らないなら捨てますので」
・・・なんて言い草。ジェスが動揺しているけど婚約破棄が嫌って感じでもなさそう?どういう関係か気になるわ。
「個人の自由は尊重するわよ。でも、この世界を離れる事になってもいいの?」
「はい!いろいろな世界を見て、最終的に世界を股にかけて商売をしてみたいのです!なんならうざいウランは捨てて私だけでも!利益はすべて差し上げますので!」
食い気味に答えたのはジェスのほうだった。ちなみに今は二人で喧嘩中だ。ちょ!?発氣使ったらジェス死ぬわよ!
えっ!?おいおいおい、ジェスも発氣を使って対抗してるんだけど?何?こいつら。
それはともかく、うるさいので2人を大剣でしばいてから話を聞いてみた。
「ううぅ・・ジェスは幼馴染でイツキ様の事を話したらそれはもう興奮しまして。なら結婚して一緒に行こう修行しました」
「いたたっ・・だって!この小さな世界以外にも数多の世界があるなんて!もう最高じゃないか!それを・・それを・・お前だけ行こうなんてずるいだろ!」
そういう理由から「「弱いと置いていかれる。強くならねば」」そう誓い合って二人で鍛えながら私の帰還を待っていたらしい。
発氣は自己流ではそんな簡単に習得出来ないんだけどね。
「ぎゃー!うるせー!私はイツキ様の匂いの深淵を探求するのよ!お前みたいな広く浅い低俗な理由とは違うのよ!」
「なんだと!お前はただの低俗なストーカーだろ!?俺はすべての世界が見たい&商売したい!という至高な理由だ!」
「なによ!全なるものより唯一の追求が至高なのよ!」
「いーや!全なるものこそ永遠なる究極のテーマだ!」
全なるとか言っている事は意味不明だけど、とりあえず二人の目的は把握したわ。
「連れて行くのには否はないけど、それなら無理に結婚する必要はないわよ」
「「いえ、結婚するのはこいつだけと決めていますので!」」
そ、そうなのね。綺麗にハモって仲がいいのか悪いのか。まあ意思は尊重するわ。
しかし、世界を股にかける商売ね。とても面白い発想で気に入ったわ・・金は大事だもの。
ただ、私は専門外なのでジェスについては後で財閥令嬢の立花に丸投げすれば良いだろう。
ウランのほうは正直良く分からないけど殺しても死ななさそうなので鍛えがいがありそうだ。
「じゃあ、次は侍女ロアに会いに行くわよ」
ウランの話ではロアは死亡扱いになっている私の貴族位を復活させるために、昔いじめられたフランソリ侯爵婦人に直談判しに向かったそうだ。
そうなのよ!私の貴族位を復活させないと7歳時のスキル授与儀式に参加出来ないのだ。
スキル授与場面がゲームスタートなので、このままではスタート前に敗北となってしまう。
ただ、今の時点で1年の猶予があるので、最悪でも成果を上げて貴族位を得ることも出来るはずだ。
進路は北、ラオクス子爵領、コディーマ伯爵領の2領を超えたところにあるフランソリ侯爵領へ
「時間がないから空から行くわよ!」
「「「空?」」」
フィーネ、リンダ、ジェスをプラズマで包んで空を飛ぶ。
「「ぎゃーーーーー!!!」」
「すごい!すごい!すごい!空を移動するだけで今までの世界とは違って見える!?まるで人がアリのよう・・視点が違うだけでこれほどとは・・私はまだ狭い思考に囚われて・・・」
一人うるさいのがいるけど、このままかっ飛ばしましょう。




