091話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編②:ぶらり一人旅②】
<フィーネ・ラ・サールス サイド>
「ごめんなさい!イツキ様、ごめんなさーーーい!!!」
ようやくイツキ様に再開できて、以前の愚行をお詫びしようとした。
だけど、その前にあいつの・・・とばっちりを受けてしまっている。
「聖女様は私のような 下賤! で 傲慢! な小娘を・・正道に導いてくれるのよね?」
イツキ様との久しぶりの対面なのに、いきなり丁寧な言葉を?え?聖女?
しかもイツキ様が下賤で傲慢?・・私の導きの神に対して・・一体誰がそんな妄言を!
理由が分からず周囲に視線を向けると、堕天使族のリーダーであるミッチェルが鼻息荒くドヤ顔で頷いている。
ミッチェル!おまえかーーーーー!!!
まずい、まずいわ。イツキ様はあやつの妄言に溶岩のごとく怒りをフツフツと溜めている状態だ。
しかも、あいつがまだ元気だという事は、現在その怒りが私に向いていることは間違いない。
堕天使族は、修行に集中するための生活サポートをしてくれる便利な存在である。
その発端はリーダーであるミッチェルの呪いを沈静化させた際、その対価としてのサポートを受けるようになった。
呪い自体はとても複雑で、私の力不足で解呪出来なかったが「それでもいい」と言われたからだ。
ミッチェルからは「聖女様」と粘着されたけど、私を聖女と呼んでいたのは彼だけだったので適当に相手をしていた。
ただ、その後も堕天使族を介して相談事を解決していたら、いつの間にか近隣の魔物達に聖女と呼ばれていたのだ。
どうやら問題解決時に「聖女様に感謝を!」とミッチェルが信仰を広めていたらしく、気づいたときには手遅れだった。
『ちょ!エウスリーネ、バルダキン、助けてよ〜』
一縷の望みを掛けて、私の保護者の二人に相談してみるのだが・・・
『フィーネ、言い訳してはいけません。たとえ無実でも黙って罰を受けるべきです・・・さすればイツキ様の恩恵が・・・くふふ』
『そうだな、それがよい。しっかりとご褒美・・ではなく懲罰を受けるのだ・・しっかりとな』
この理由の分からない事を言うのが、元滅龍剣インベイジョンと元軽鎧ドラゴンデストロイだ。
イツキ様に破壊された際、意思だけは私の体内に逃げこんだそうだが、依代もなく消滅を待つだけだった。
だが、イツキ様が立ち去る際に提供してくれた魔石とスライムのお陰で無事に私の体内で定着することが出来たそうだ。
その際に【聖剣エウスリーネ】【聖盾バルダキン】という新たな名まで頂いて、その能力も数段向上した。
まあ、それの弊害なのだろう。二人はすっかりイツキ様のファンだ。
イツキ様がたとえ体罰とはいえ、私に触れる事で【至高神の御力が!】と感動するのだ。
私も感謝はしている・・しているのだけど、体罰を喜んで受け入れる事は出来そうにない・・それに出来たらそれはそれで嫌われそうだ。
昔の二人なら『何よりもフィーネが一番!』だったのに・・・ちょっと嫉妬してしまう。
ええい、もう自ら人身御供になるしか道はない!そのほうが八つ当たりは軽微になるはず。
覚悟を決めるのよフィーネ!
「イツキ様、あそこのアホが何か言ったのでしょうが、私は無実です。ですが・・もう手遅れなのですよね。ならば!甘んじて罰を受けます」
どうとでもしてくれ!という意思表示にイツキ様の前で大の字に寝転がる。
すると・・あ!すごい優しい目つきになった。これは・・もしかして・・賭けに勝った?
そう、フィーネの予想通りこの行動でイツキからは「あら、かわいいこと言うじゃない。きちんと反省してるようね」と許されたのだ。
だが、それとあの粘着羽虫に腹が立ったのは別腹だった。
あの粘着羽虫が一番ショックを受ける方法はなんだ?・・それは聖女と崇めるフィーネの醜態だ。
なのでとばっちりを避けることは出来そうにない。
「そんな体勢では風邪を引くわよ。フィーネ」
「あ、ありがとうございます」
イツキ様に優しく抱き起こされ、許された事を確信した。
が、その数瞬後には仰向けからうつ伏せの体勢に替えられ、しかもズボンをずり降ろされ私のお尻が露わに。
え?まさかイツキ様!?こ・・こんなとろこで床上手を?・・ぎゃー!魔物とはいえ皆が見ている前であんなことやこんな事を・・・
ばっっちーーーーん!!!
お年頃のくだらない妄想は、イツキの尻叩きですべて吹き飛ばされた。
「ぎゃーーーー!!!痛い痛い!」
『『ご褒美キターーー!!!』』
『この波動!』『もっとくれー!』
「悪い子にはお仕置きしないとね。聖女と持て囃されて 正道 を外れないように・・ね!」
ばっっちーーーーん!!!
「ごめんなさい!イツキ様、ごめんなさーーーい!!!」
『『マジヤバ!サイコー!』』
ああ・・・あの野郎、私がイツキ様の道を正す聖女とかいったんだろうな。
お仕置きが終わったら、あいつの羽をむしり取ろう!そう心に誓ったフィーネだった・・あと二人ともうるさい!
フィーネは悪くないと分かったのでイツキの尻叩きは5発で終了、次は本丸の攻略だ。
イツキ様に促されボーゼンとしていたミッチェルを拘束し、二人で羽を分け合ってすべてむしり取った。
今は、逆さに吊るして・・「暴力的な聖女様も大好きでーーす!」・・反省・・してないわね。
「なんでこんなに好かれてるの?」
「それが、こいつの呪いを沈静化して以降、付きまとわれてまして」
「は?・・・ストーカーなの?」
その瞬間、どす黒い殺気が周囲を舐め回す。
その殺気に周囲の魔物達がバタバタと倒れていくが、気を失っている訳では無いようだ。
この近隣最強のミッチェルですらガタガタと震えている。
私はイツキ様の【電離氣体】を体験しているので平気だが、集まっている魔物達には厳しいだろう。
しかし・・周囲を巻き込む程に怒る理由はなんなのだろうか?
その理由をフィーネが知る筈もない。何故ならイツキは中学時代にその美貌からストーカーに集られた過去があり、それこそが憎悪の対象なのだ。
「・・・殺せないのが残念ね。あ、そうだわ!フィーネ。欲しいペットある?」
???イツキ様は突然何を?・・・あ!そういうこと?可愛くなるならこいつでも問題ない。
イツキの企みを以心伝心で理解するフィーネ・・それは良い事なのだろうか?
「私、鳥が良いです。確かオーラル様が七面鳥?ハゲタカ?って鳥が可愛いとか」
「・・・あいつの美的感覚は信じちゃ駄目よ。そうね、雪の妖精って言われてる鳥でいいかしら?」
「雪の妖精・・ですか。いいですね、それでお願いします」
「あなたたちも私の御業を見届けなさい」
その言葉に周囲の魔物達は恐怖の中で、なんとか視線だけをこちらに向けている。
その手から魔石とスライムを生成して、それぞれを魔力を使って改造しているようだ。
「フィーネ、こいつに指示しなさい」
「あ、はい。ミッチェル、それを飲み込みなさい」
「はい!ゴクリ!」
「躊躇なしね・・・フィーネ、あんた魅了でも覚えたの?」
「聖女様の存在こそが魅了!たとえ排泄物だろうが・・あ、聖女様のならそれこそ至高といいますか」「だまれ!」
オカシイのはこいつだけですよ。ほら、周囲の魔物達は呆れていますから。
後日、ミッチェルが本当にフィーネの排泄物を常食していたことが判明、聖剣が発動する程の大騒動になるのだが・・汚いので割愛する。
ここの魔物達は無性のため、愛情表現も色々とおかしな事になっているのだろう。
さて、イツキが与えた魔石とスライムが徐々にミッチェルの体を変革していく。
最終的に可愛らしい全長1m程の巨大な黒い毛玉、雪の妖精・・雪?まいいか。黒いシマエナガの姿に変じた。
怯えながら見ていた魔物達は、周辺のボスであり恐怖の存在ミッチェルを手玉に取るイツキを見て、ようやくヤバい存在に手を出してしまった事を認識した。
「性別をメスにしたわ。これなら抱き枕に最高よ」
「うわぁ、可愛いですね・・手触りもふわふわです」
「あら、ほんと。予想以上に手触り最高だわ」
「きゃ〜!聖女様と超聖女様にもふられてますわ〜!うれしいです〜!」
「超聖女?・・ああ、呪いを解呪してあげたの分かったのね」
あれを解呪したんだ。流石イツキ様だ。
羽が白くなるという良く分からない呪いだったので仕組みが分からなかったのだ。
しかし、堕天使族にとっては黒い羽が白くなることは大問題らしい。
もう、白いシマエナガになったので呪いはどうでもいいのでは?と思うけど本人は満足しているようだ。
「ちなみに獣魔という新種にしたわ。フィーネが望んだ時だけ前の姿に戻るわ。しっかり教育しときなさい・・堕天使が天使に戻るほどにね」
「!!!はい!ありがとうございます」
ふふふ、公衆の面前でお尻ペンペンされた屈辱・・地獄の訓練で晴らしてあげるわ!
そしてイツキ様・・うざかったあいつがこんな可愛く・・本当に!本当にありがとうございます。
だが、それすらも ご褒美 と喜ぶミッチェルに愕然とすることになるフィーネが見れるのは、あと少し先。




