088話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編②:ゲーム本番開始準備⑤】
<イツキ・ルノワール サイド>
「我ら魔王国はイツキ様の配下に下ります」
女神ムーアとの交渉を終えると、美の魔王チワワ・デ・アルソーネを筆頭に幹部が全員が膝をつき、そう宣言された。
やらかしている自覚はあるので修行する1年間、武力で無理やりここに居座ろうと思ったけど、向こうからお誘いを受けるとは。
「別に同盟程度でいいんだけど?」
「いえ、全員の総意としてイツキ様を【大魔王】としてお迎えしたく、伏してお願い致します」
「それに、気のおけない隣人として色々やらかされるよりは、もう配下になったほうが気が楽だと気づきました!」
それは・・ちょっと申し訳ない気になるわね。
まあ、それ以外にも亜人の敵である女神ムーアと対等以上に交渉した事や【魔王】スキルを封印して暴走状態の黒鬼父を救った事で信頼を得たようだ。
それ以外にも、魔物達、フィーネ、黒鬼父の件で『酷使されると心配だったけど、イツキ殿って身内には面倒見がいいぞ』と魔王が気づいたこともある。
「そういうことなら私が【大魔王】として、オーラルは【魔神】でいいかしら?」
「「「「お願いいたします」」」」
「私の配下になるならには、しっかりと守護してあげるから安心しなさい」
「ありがとうございます」
・・・そうね、この権限を使ってアレを片付けましょう。
毎日見せつけられるのは鬱陶しいものね。
「ただし、受け入れるにのに3つ条件があるわ」
「な、なんでしょうか?」
まあ、大した条件ではないので安心して欲しい。
「ひとつめは、美の魔王チワワ・デ・アルソーネに国政を、前魔王シュティームも魔王に昇格して軍務を、2大魔王体制でそれぞれ任せます」
私はゲームをクリアしなければならないので、細かな事は二人に任せておけば良いだろう。
「それはこちらとしてもありがたいですが・・イツキ様の目指す国とかがあるのでは?」
「それだと四六時中、訓練と他国との戦争の日々よ」
「そ・・それはちょっと」
実際にはそこまではしないけど、今回は国政に深く関わる気はないからあえて大げさに、ね。
「目指すは世界最強なので私とオーラルは名義貸し程度の扱いでいいわ。ただ、問題があれば出張るから相談して」
「わかりました(やはり私の考えは間違いないようだ)」
雑務が出来る配下がいなかったので、色々丸投げが出来てこちらも助かるわ。
「ふたつめは、チワワとシュティームの婚姻よ」
「「・・・・へ!?」」
あーあ、二人で見つめ合って顔を真赤にして、わちゃわちゃ始めたわ。
どんだけ恋愛偏差値低いのよ、こいつら。
この恋人未満の淡い恋模様を間近で毎日見せられるなんて無理、とっととくっつけるに限るわ。
「相思相愛がバレバレよ。妖艶な美女と厳つい男性のうぶで淡い恋愛なんて誰もみたくないの。とっとと夫婦になりなさい」
「あわわわわ!」「しょ・しょれは時期を・・見て・・あの」
こいつら戦闘では堂々としているのに・・・残念すぎるわ。
その後、ふぁびょる二人を無視して満場一致で婚姻が決まったわ。
幹部たちも周囲も二人の恋愛未満の状況がうざかったんでしょう、とても感謝されたわ。
「最後のみっつめは、私達の就任式と二人の婚姻の慶事を祝う宴会を開催するわ!」
「せめて・・私から・こ・・ぎょく・・ひゃく・・する猶予・・を」
「自分から告白?それなら明日の宴会までに済ませなさい」
「「そ、そんな〜」」
ヘタレのこいつらを待っていたら10年以上掛かりそうだし、明日もこんな調子では困る。
仕方がないわ、チワワだけでもその気にさせるか。
「チワワのスキルを観察してたんだけど、あなたのスキルは【女性らしさ】を追求した美を追い求めることで、強さと美しさを得ているのよね」
「はい、私もそのように認識しています。ですから毎日体型チェックは欠かせません」
「でも、今は伸び悩んでいるわよね」
「!?なぜそれを」
そう、何故かチワワは体型維持については必死だが、その他美容関係には無関心なのだ。
つまり、伸びしろがまだまだ多いという事だ。
その辺りの伸び代を説明したあとに・・トドメの一言で締めくくる。
「その女性らしさ・・化粧などの美容にまだ余地はあるけど終わりは近いわ。でもね【恋人】【妻】【母親】【家族】での女性らしさは・・・まだ未開拓でしょ?」
「!?・・・確かに」
「そこにはまだ未開拓の【美】のフロンティアが広がっているのよ!」
「!?!?」
「難しく考えなくていいわ、明日の婚姻で相手を確保するの。あとはのんびり開拓していけばいいのよ・・・知ってる?優良物件ってすぐに完売するのよ?」
実際にはこの国の住人は誰も黒鬼父に恋愛感情など向けないだろう。
砂糖を噛むようなチワワと黒鬼父の恋人未満の生暖かいやりとりが続く中、しかも魔王のお気に入りを狙うものなどいるはずがない。
「確かに!?・・ティムはモテる・・先に確保・・ぶつぶつ・・なるほど!」
そして数分悩んだ後、美の魔王は決意する!
「ティム!あなたが大好き、結婚します!」
「ああぁ・・うれし!けど・・はずか・・出来れば・私・・あの・・じ、自分か・・ら」
厳ついお前が真っ赤になってモジモジ照れても可愛くないわ。
この期に及んでも告白すら出来ないヘタレ黒鬼父は・・もう放っておこう。
「じゃあ、明日の夜に婚姻式と私達の就任を祝う、住民全員参加の宴会を開くので準備しなさい!食材とお酒についてはこっちで提供するわ!」
「「「「おおぉーーーー!!!」」」
あとは・・チワワ!明日の朝までにこのヘタレを仕留めなさい!
「さあ、ティム!美を極めるわよーー!!!」
「ま、まままま、まって、ぽぽーずーわたー!!!」
ヘタレの角をつかんで、あの巨体を軽々と引きずりながらチワワは豪快に去っていた・・このやり取りだけで更に強くなっているわね。
魔王と言うだけあって潜在能力は高いだろうけど、美のスキルって、すごいわね。
翌日、私はと言うと使用可能になった魔法で食材を大量生産していた。
そろそろケーキとか砂糖でゴリゴリに甘いお菓子を食べたかったのよね。
今では雑草を食べても【完全消化】できちんと栄養になるのだが、やはり美味しいものがいい。
「ねえイツキ?魔力量たった10でしょ?なんで大量生産出来るの?」
オーラルが質問してきたけど答えは簡単。
「魔力を使う際に、使用する分の魔力を都度生産しているからよ。だから貯蓄量なんて関係ないのよ」
「でもさ、力の源である放射能?も取られたでしょ?」
ふふふ、色々実験した結果、最終的にすべての細胞をエネルギー生成機関としたのよ。
だからもう、あれは用済み。
ついでに、ゲーム世界の一時的な体だけど、こちらでも不老の体になってしまった。
さて、夜の宴会は大盛りあがりだったんだけど・・・新郎の黒鬼父がふた周り程小さくなっていたのは気のせいだろうか?
かたや魔王チワワはその美貌で光り輝くよう・・いや実際に輝いていた。
しかも、何故か姿が変化しているのよ・・ダークエルフよね?あれは。
私が体を再構築した際にエルフだと言うことは知っていたけど、今は漆黒の髪に瞳、肌も浅黒くなっている。
まるで、高貴な黒ダイヤのようで・・チワワ、闇属性が開花したわね。
黒鬼父に影響されたのかしら?
これは本物の魔王に鍛えるのもありね。これから1年間が楽しみだわ!
ついに魔王チワワもターゲットに!?




