087話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編②:ゲーム本番開始準備④】
<イツキ・ルノワール サイド>
五感を乗っ取られたイツキの周囲から瘴気が発生してフィルとティエが作った結界を破壊し、周囲の生きとし生ける者達への蹂躙を開始する。
その数時間後には阿鼻叫喚の地獄が魔王国に現出するのだった。
「・・・という夢を見ているのよ。魔王スキルが」
『うゎーーーーん!よかった!よかったよ〜』
「それで今はこの魔石に?・・魔王スキルから解放して頂きありがとうございます。これで先に進めます」
『ひぐ・・ぐず・・ティム、本当によかった〜』
「こっちも使い道のありそうなスキルを貰ったからお互い様よ」
『ううう・・二人が冷たい、とっても心配してたのにーー!!!』
「魔王!ブサイク顔でうざいわよ!」
『ぴ!?わたわたわたわたわたわたしが・・ぶちゃいく!?』
イツキと話しているのは魔王スキルから解放され、まともに戻った黒鬼父だ。
あと、黒鬼父にすがってピーピー泣いているのは美の魔王ことチワワ・デ・アルソーネだ。
なんでも黒鬼父がスキル魔王を使用したことで、自ら黒鬼父討伐を決意していたらしい。
その決意が無駄になって、黒鬼父が無事に生還した事を泣くほど喜んでいるのだ。
それほどに魔王スキルは使い勝手が悪いらしい。
そのようなやり取りをしているところに割り込みが入る。
『我は人族の女神、ムーア。【電離氣体】は危険すぎる。そしてその元となる原子力共々、封印指定とする!』
またお前かよ。先程は姿を見せなかったが、早々の2度目の再訪に今回は姿を現した。
青髪で軽鎧で補強しているドレス。輝く銀色の神槍を持つ精悍な顔つきで無骨な戦神という印象を受ける。
「あんた恥ずかしくないの?ついさっきも『(褒美を理由に)あなたの力がすごいのでルールかえてくだちゃい〜』って泣きついてきたわよね。今度は『いつきちゃまの技、こわーなの!やめて』って言うの?」
『・・・そのような話し方では言ってないし、先の訪問はあくまでも褒美の授与だ』
はぁ、また戦闘スタイルを変更しないと。
こう、度々横槍が入るとゲームにすらならないわね。
対応を考えていると、援軍としてオーラルの横槍が入る。
どうやら、オーラルは相当にご立腹のようだ。
「言い方はどうでもいい。ただ、一方的にルールを決めておいて、気に入らないと盤上をひっくり返す。神として恥ずかしくないの?・・・不義で私の神力を汚すなよ!」
その言葉にビクリと反応する女神。
形は違えど女神オーラルの神力から生まれた存在だからか?効果は抜群ね。
しかも・・ふふふ、女神ムーアの顔と耳までが羞恥で赤く染まっている。
女神自身、無茶を言ってる自覚はあるようね。
「まあ、【さっきもやった】ので手順は把握しているわ。私の願いを聞いてくれたら受け入れていいわよ」
「・・・聞こうか」
オーラルはご立腹だけど私的には想定内でもあるのよね。
で、私が提案する内容は下記のとおりだ。
提案① ルール①から【魔力】を除外する。
提案② ルール⑥に除外条件追加
先方から一方的に攻撃(物理攻撃以外の策略も含む)を受けた際は殺害可能
提案③ 今後、イツキとオーラル両名の了承がなければルール変更はしない。
上記3つが受け入れられる条件として【電離氣体】の出力源である左腕を封印する。
<女神ムーア サイド>
イツキから提案された条件は悪くない。いやエネルギー発生体の【原子力】が無くなるだけでも十分こちらに利がある。
こちらが過剰に利があるが、この狡猾な幼女が損をするはずがない。
ふむ・・・試しにもう少しきつい締付けをして様子を見るか。
提案③については致し方ないだろう。短期間に2度も修正するのだからな。
だが縛ったとしても、次から次へと新たな戦闘方法が出てくる。
別のアテもあるのだろうか?興味がある・・探るか?
ふ、我は【ゲームマスター】に「ゲーム崩壊しちゃう」とお願いされただけだ。
これ以上深く探ると気分を害しそうなので、やめておこう。
「ふむ、悪くはないが・・一部修正がしたい」
そして、私が示した修正内容は下記のとおりだ。
提案① ルール①から【魔力】を除外する
→ 修正案 ただし、最大魔力保有量は【10】とする。
提案② ルール⑥に除外条件追加
先方から一方的に攻撃(物理攻撃以外の策略も含む)を受けた際は適用外
→ 修正案 事前にオーラル様より女神ムーアに殺害許可を得る。
提案③ 修正なし。
追加提案④ ルール⑤の文言修正
原文【この世界は7歳時に神よりスキルが与えられますが、貴方に恩恵はありません】
改定【この世界は7歳時に神よりスキルが与えられますが、貴方には『無能』を与える】
・・・どうだ?
最大魔力保有量【10】は一般的な平民の魔力量だ。
生活魔法が数回使える程度で中級魔法は使えない魔力量だ。
これで魔法はほぼ使えないが、イツキはどう出るか?
<イツキ・ルノワール サイド>
女神ムーアからの修正提案は概ね予想通りだけど・・追加提案?
「スキル授与の儀式で何も表示されないよりも『無能』と出るほうがしっかり周囲に認識される。我の目的とより一致するのだ」
ふーん、『何も与えられない』から『【無能】スキルを与える』か。スキルで縛って魔力も奪うつもりなのね。分かり易すぎて笑えるわ。それともわざと挑発しているのかしら?
その挑発に乗ってしまっオーラルは横でプンスカ怒っている。
けど、特に問題ないし追加提案は2年後の話。十分に対策可能だ。
「それでいいわ・・出来れば③を削『却下だ』・・まあ、いいわ」
「うむ、なら改定合意で終了だな」
①発氣、神力の使用及び、あらゆる力の周囲への放出を禁ず(ただし魔力保有量は10)。
削除:魔力 追加:魔力保有量は10
②肉体は人族
③貴方の存在がすべての男性に好かれる。
④年齢は4歳からスタートします(現在5歳)。
⑤この世界は7歳時に神よりスキルが与えられますが、貴方には『無能』を与える。
追加:『無能』スキル
⑥戦闘で敵を殺すことは禁止です。ただし先方から一方的に攻撃された場合は除外(女神ムーアの事前許可要)
追加:除外条項
改定付帯事項:今後、イツキとオーラル両名の了承がなければルール変更はしない。
改定施行条件:【電離氣体】の出力源である左腕を封印
「じゃあ、この左腕を渡すわね」
左手を腕ごと外して、女神ムーアに引き渡す。
「うむ、しっかり封印しておこう。失った左腕はこちらで治せるが?」
「こちらで改造するから不要よ」
「そうか?・・・次はお手柔らかにな」
「それは無理。今度は神器でもつけようかしら」
「な!?どうしてそのような・・いや、聞かなかったことにする。さらばだ!」
女神ムーアは呆れたように去っていった。
今回の配慮は悪くないわね、好意的だし。
ムーアも部下候補にしておきましょう。
「さて、これで魔力を使い放題よ!」
「え?力の源を取られたのに?」
オーラルの疑問はごもっともだが、イツキにはなにか対策があるのだろう。
<女神ムーア サイド>
一方・・・その対策をワクワクしながら観察しているのが女神ムーアだ。
「ああ、やはり彼女は面白い。今回の私は戦女神なのだが・・彼女こそが戦神の名に相応しい」
ゲームが終われば解体され、別の何かに変わる身なれど可能ならば彼女の配下になりたいものだ。
すっかり諦めて、役割を演じることにも慣れたと思っていたが、彼女の姿を・・その戦闘能力を見て、更に強くなりたい!という願望が心の中で燃え盛ってしまった。
「焦ることはない。どうせこの世界すべてがイツキ様のものになるのだ。その時に臣下になって鍛えていただこう」
そのために、追加提案の目的も分かりやすくしたし、魔力の件も黙認した。
彼女は既に私の想いを理解しているだろう。ああ、いずれ来る未来が楽しみで仕方がない。
裏切りの女神様はイツキの配下になれるのだろうか?




