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086話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編②:ゲーム本番開始準備③】

<イツキ・ルノワール サイド>


「ぐぉあああああああああああーーーー!!!」


・・・くっさい瘴気垂れ流すだけで進展ないわね。

黒鬼父が体中から瘴気を吐き出し始めたので、どうなるか観察していたが進展はない。

どうやら周囲を瘴気まみれにしたいようだが、まだまだ時間が掛かりそうだ。

暇だし、相手隙だらけだし、試しに攻撃してみましょう。

避けやすいように助走してからの右ストレートを腹部に叩き込む。

「ぐがぁ!」

その衝撃で黒鬼父はくの字の形で数メートル吹き飛んだ。

だが、瘴気で怪我が修復されるようで黒鬼父はすぐに起き上がる。

こちらの攻撃にも無関心なのは瘴気散布を優先・・・ん?

拡散していた瘴気が黒鬼父の周囲に留まって鎧になっていく。

あの瘴気には自己防衛の機能もあるのね。。

戦闘もレベルアップしてくれるなら面白そうなんだけど、まだ動きはない。

それならと、鎧の強度を確認するために蹴りを数発与えてみたけど、硬くてびくともしないわ。

魔力密度が非常に高く、さっきの【魔抱まほう】のように私のエネルギーで侵食する事も無理ね。

でも・・・ふふふ、これなら次の技のテストができそうね。

だけど、まだ準備中のようなのでもう少し待ちましょう。美味しいものは最後に食べるのが一番だから。

その間、周囲に瘴気が満ち、瘴気まみれの剣とタワーシールドを瘴気で生成したところでようやく終了のようだ。

結局10分ほど待ったわ・・・準備長すぎ。


「・・・お前は殺す!」

「散々待たされたのよ?詫びすらないの?」

「お前は殺す!お前は殺す!お前も・・・すべてを殺す!」

「なに?言葉も通じないの。使えないスキルね」

「があぁああ!」

黒鬼父の周囲を覆う濃密な瘴気が5本の腕になって私に襲いかかる。

え?私がエネルギーイーターだって知っているのに、それを使うの?

瘴気の塊なら美味しくいただけるけど、まずは威力を確認してみましょう。

まず、2本の腕が私に襲いかかり両手で掴むように私を拘束する。

この拘束だけでも瘴気耐性のないものは腐敗で体を削られる訳ね。

周囲のエネルギー密度を高めている私には効かないけど。

しばらく拘束されたけど、瘴気の効果がないと分かると空中に持ち上げられた後に地面に叩きつけられ、そのまま抑えつけられる。

次に、残り3本のうちの2本が鞭形状になって私への攻撃を開始する。

へー、抑えつけている手をすり抜けて攻撃できるのね。

そのままビシビシと鞭で打たれていると、最後の1本の腕が私の背中に突き刺さり瘴気を注入していく。

実際には私の周囲のエネルギー密度が高くて突き刺さってはいないんだけど。

瘴気は・・濃厚ではあるけど味付けは最悪ね。

制御されていない力なんてこんなものか。

「垂れ流し程度の瘴気なら・・スパーク!これで十分ね」

高圧電流を一気に全身から放出して瘴気の腕を消し去る。


瘴気の腕が無くなると、剣を構えて黒鬼父が向かって来るが動き自体は強化されていないようだ。

剣での攻撃を執拗に受けるが軽く躱していく。

瘴気まみれの剣なので躱しても付帯する瘴気の渦に体力をごっそり削るんでしょう。

私の攻撃はすべてタワーシールドで受け止められる。


ふむ、防御は私の動きについてこれる。

魔王の戦闘スタイルは防御主体のようね。

これもシールドで防御することで付帯する瘴気で武器や体力をごっそり削るんでしょう。

勝負を決める大技はないが、瘴気で弱らせて反撃の可能性を無くしてからトドメを刺すのね。

そもそも瘴気に対抗するには聖属性が一番効果的なのだが、聖属性は希少属性で使用者は限定的。

そういう面で魔王スキルの戦術は非常に効果的なのだ・・私でなければね。


「じゃあ、私の技を披露するわ。名付けて【雷光剛撃】よ」

「がははは!お前は殺す!お前を殺す!」

はぁ、言葉が通じない弱者なんてつまらなすぎるわ。

トコトコと無造作に黒鬼父に近づき、薙ぎ払われる剣をスパークで弾き飛ばしタワーシールドで守る黒鬼父に雷光を纏った拳を叩きつける。

その拳はその勢いのまま、黒鬼父の左腕ごとタワーシールドを破壊する。

最後に強烈なスパークで黒鬼父を吹き飛ばす。

うむ、予想通りの一撃。これは使えるわ。


「エネルギーで腕の密度を上げたのよ。電撃も加えて破壊力抜群でしょ?」

エネルギーを収縮して密度を高めた腕は、超巨大なアダマンタイト塊と同様の質量だ。

それを高速で叩き込むのだから破壊も容易い。

なお、雷光については重量化した腕を電磁で制動する為に使用している。


「ぐはっ・・我は不死身!がはは!殺す!殺す!」

「・・・って、自慢しているのに聞いてないわね」

その言葉の通り、瘴気が黒鬼父の体をあっという間に修復、鎧とタワーシールドも再生した。

「なるほどね、瘴気がある限り再生出来るのね。しかも、体を粉砕してもそれが瘴気に戻り再利用される。まさに不死身ね」

普通のものなら瘴気で体を蝕まれる中で、壊しても再生する果ての見えない戦闘に疲弊する事だろう。

だが、その事実に唯一歓喜をするものがここにいる、それがイツキだ。


「すごいじゃない!ついに見つけたわ。myサンドバッグ!」

「ころ・・・は?どういう事だ?」

あまりにも想定外の言葉に瘴気に酔いしれていた黒鬼父・・いや魔王スキルが素に戻る。

どうやら意思を持ったスキルのようね。

「前言を撤回し謝罪するわ。【電離氣体プラズマ】に対抗できる逸材に手加減など不要よね。これからは【全力】で相手おもちゃにしますわ」

「ちょ!?・・待て!流石にそれは・・『プラズマブラスター!』ぎゃーーー!!!」


・・・・1時間後


「ようやくコントロール出来るようになったわ。【電離氣体プラズマ】改め【猛蛇雷神タケミカヅチ】にするわ」

私の方は大満足だったが、黒鬼父側はなにやら一人で揉めている。


「おいシュティーム!主導権を俺と交代だ・・何?いやだと?そんな事言うなよ助けてくれよ!はっちゃけたのは悪かった。だって久しぶりなんだしそれくらい許してくれよ。それに不死身ではあるが死ぬほど痛いのだ・・このイツキってのヤバすぎだよ。お前が模擬戦了承したんだろ?ならさ、一緒に謝ってく『プラズマストーム!』ぎゃああああーー!!!」


魔王スキルは、コントロールの難しい瘴気を行使するために5感すべてを一時的にスキルに奪われるが、スキル保持者は視聴者として戦闘に参加している。

今までの惨劇を見ている黒鬼父ことシュティームも、こんな死地に戻りたくないだろう。

イツキは力を行使出来て大満足のようだが、即死攻撃の連続で魔王スキルの精神はもはや崩壊寸前だ。だが【魔王】であるがゆえに敗北を宣言することが出来ないのだ。

「あら?饒舌。魔王のメッキが剥がれているわよ。そろそろ可哀想だから最後にしましょう。殲滅奥義【落地オロチ】」

体に蓄積したプラズマを(本来なら)すべて放出し、天空に紫色のミニ太陽を生成する。

それを敵の最中にぶち落とし熱で蹂躙する・・まあ、今の全力でもゲーム世界崩壊しちゃうから今回は1%程度で。

けど、1%といえども魔王国が滅んでしまうので、防御もしっかりしておきましょう。


「フィル、ティエ。フィナーレに最大の技を使うわ。私のエネルギーを最大限に使って防御しなさい!」

「そのヤバいのを使わない、という選択はないのか?」

「自然破壊をやめろ〜!このバカ神が〜!環境を保全しろ〜!」

私の言葉に文句を言いながらも、しっかりと防壁を張ってくれた。

「模擬戦のごほうびよ・・今後もよろしくね!前魔王サンドバッグ

イツキの言葉を合図に、天に輝く紫のミニ太陽が黒鬼父を目指して落下する。

その太陽を膨大な瘴気で受け止めようとする黒鬼父。

当然だが、そんな紙装甲など容易く拡散されて紫の太陽に触れた黒鬼父が蒸発する。

それでも不滅の黒鬼父はすぐに別の場所で再生されるのだが・・・紫の太陽は落下した地面にいまだ鎮座して健在だ。

そして、紫の太陽から放たれるコロナ・プラズマが周囲を這い回り、再生する黒鬼父を何度も何度も蹂躙し消滅させるのだ。

その地獄のような拷問を10分ほど受けた黒鬼父。

体は変わらずに頑健であるが、おぞましき太陽の暴威についに恐怖で塗りつぶされる。

そして最後に・・歓喜した。


<魔王スキル サイド>


もういや!・・彼女こそ次代の魔王・・助けて!・・いや大魔王の逸材だ。

何度も恐怖に塗りつぶされた魔王スキルだが、イツキの体を乗っ取るという思考にたどり着き、最終的に歓喜した。

瘴気が通じないイツキを支配するなど不可能なのだが、唯一の選択肢であり恐怖からの現実逃避だった。

欲しい・・彼女が欲しい!・・くくく、喜べ!我が居城として選ばれた行幸に感謝しろ!


「模擬戦は終了よ」

イツキの言葉に、倒れていた黒鬼父は目を覚まし立ち上がる。

「分かった。瘴気解除!」

その言葉を受けて、すべての瘴気が黒鬼父の体に吸収されていく。

「イツキ殿、私の完敗だ。最後の切り札が全く通用しないとは」

「あなたの【魔王】スキルは使えないからやめたほうが良いわよ」

ピクリ、と黒鬼父のこめかみが一瞬反応した。

「更なる研鑽のため、またお相手願います」

「大事なサンドバックですもの当然よ」

苦笑いした黒鬼父が右手を差し出したのでイツキも応じて握手をする。

すると、黒鬼父の右手から瘴気が溢れ出してイツキの手を拘束したのだ。

「何!?」

「ふふふ、あなたは新たな魔王に選ばれた。感謝するがよい!」

「え!?・・きゃあ!」

瘴気で拘束された二人の腕を通して、魔王スキルがイツキの体内に移動していく。

そして、イツキの意識を司る場所に瘴気の根を貼り移転完了だ。

魔王スキルに乗っ取られていた黒鬼父は、魔王スキルの移動に伴いドサリとその場に崩れ落ちる。


「『はははは!次代の魔王誕生だ。さあ、私と一緒に世界を滅ぼし尽くしましょう!』」


五感を乗っ取られたイツキの周囲から瘴気が発生してフィルとティエが作った結界を破壊し、周囲の生きとし生ける者達への蹂躙を開始する。

その数時間後には阿鼻叫喚の地獄が魔王国に現出するのだった。


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