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085話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編②:ゲーム本番開始準備②】

<イツキ・ルノワール サイド>


「黒鬼父、最終調整がしたいので私と模擬戦をしましょう」


最終調整は頑健な戦士と行いたいので、黒鬼父が適材だろう。

「調整?・・・私は手加減は出来ませんぞ」

「それは私のセリフよ。【電離氣体プラズマ】は使わないから安心しなさい」

そう言うと黒鬼父の体から黒い闘気がモヤのように沸き立つ。

私の発言に殺気立っているようね。これは楽しめそうだわ。

全身に電気を巡らせ【エレ氣】を発動させて身体強化をすると、体全体が青白く発光する。

うん、初めてフィーネ相手に使った時より細胞レベルで馴染んできたわね。


「では私も・・・魔抱まほう

身体強化のようだけど、闇属性の粘液状の魔力が体を包み込むような感じね。

「殺したとしても・・かまわないな」

「ふ、口だけは達者のようね。あなたは全力で私を殺しなさい」

正面から突進してきた黒鬼父、移動速度はいまいちね。

右足ローキックが襲いかかってきたので、バックステップで避ける。

空振りして無防備な右足に、左の拳を『バチッ!』叩きつける。

この打撃でバランスを崩したところを追撃する予定だったけど、黒鬼父を包み込む液状魔力に威力を吸収されてしまった。

しかも威力を吸収されて一瞬動きが止まったところを狙われた。

空振りしたローキックを反転したかかとでの蹴り上げで、腹部に痛撃を受けて吹き飛ばされる。

空中で体勢を立て直し距離を取って着地して、黒鬼父に話しかける。


「まほう、だったかしら?なかなか面白い技ね」

「イツキ殿の体格では攻撃は軽い。たとえ電撃を付加してもこれを抜くことは出来ぬぞ」

「まあね、でもそれも対策済みよ」


<黒鬼父 シュティーム サイド>


イツキ殿は【電離氣体プラズマ】を使わない。

そう宣言したことで私の勝率は100%になった。

【エレ氣】自体も素晴らしい技ではあるが、私とは相性が悪い。

私の【魔抱まほう】はあらゆる魔法を十分の一程度に軽減してくれる。

イツキ殿の電撃や打撃は物理効果ではあるが、それでも半減出来る。

そもそも、【魔王】スキルを現魔王であるチワワ・デ・アルソーネに継承していないので、戦闘では私のほうが強いのだ。

だが、魔王アルと戦えばスキルがあっても必ず私が負ける。

その理由は、彼女が持つスキル【美貌】にある。

男であるというだけで美の魔王たる彼女に魅了されてしまう、非常に恐ろしいスキルなのだ。

しかも、彼女が美を磨けば磨くほどにその効果は強固になるのだ。

以前の女装趣味のむさ苦しい男だった時は効果は低かったが・・それでも私は魅了され惚れた。

私はノーマルなのに、魔王時代は、男に愛?私は狂ったのか?と苦悩したものだ。

そして、魅了の苦悩の最中に裏切りで殺されたが、今では良かったとも思っている。

男同士の行為など考えるだけでゾッとするのに、あのままだったら男時代のアルを襲っていただろう。

まあ、真実のアルは女性だった。

見た目に囚われず、しっかりと見定めた私の真眼を褒めてあげたい。


色々言ったが、要は【惚れた弱み】という理由で勝てない。いや、勝ちたいとも思えない。

ようやく耐性が出来た今では、伴侶になろうがなるまいが生涯隣で彼女を守り抜く事を自身の心に誓っている。

そして・・・アルこそがこの世の頂点である魔王であるべきなのだ。

それなのにゲーム世界?という訳のわからない理由で、我が主がイツキ殿に振り回されている。

今回は千載一遇の機会、我が至高の存在を酷使しようとするイツキ殿。


・・・その生命、ここで刈り取る!!!


<イツキ・ルノワール サイド>


ふむふむ、本当に黒鬼父は私を殺すつもりね。

魔抱まほう】からまで強烈な殺意を感じる。

黒鬼父の【魔抱まほう】はカウンタータイプなのでこちらから攻め続け、数十度拳を交わした。

やっぱり殴り合いは最高よね。

さて、せっかくの機会なので、もうしばらくは遊びましょう。


今度は周囲の【魔抱まほう】を削るように打撃を与えてむるが、スライムのようにぷるぷるとして手応えがない。

方や黒鬼父のほうも、少し速度を上げた私に付いてこれずに私に打撃を与えられていない。

まあ、既に【魔抱まほう】に対しての仕込みは済ませたので実行すれば簡単に終わる。

だけど、それじゃ面白くないし黒鬼父はこんなものじゃないはず。

そろそろ本気を出させたいところだわ・・そうだ!これならきっと怒髪天よね。

戦闘中に思いついたことを、早速オーラルと共に実行するのだった。


「流石はイツキ殿ですな。私の予想より数段動きが早い」

「そう?ならあなたの様子見は終了かしらね」

「・・・そこまで分かりますか」

「まだ手札を隠してるわよね。私は模擬戦なのでそれに合わせるだけど」

「それでしたら次の段・・・は?」

話の最中に、黒鬼父シュティームはイツキの開けた大穴がいつの間にか無くなっている事に気づいて絶句した。

「い、いつの間にあの大穴が?」

「ああ、あれ?退屈だからオーラルと二人で塞いだのよ」


<黒鬼父 シュティーム サイド>


「ああ、あれ?退屈だからオーラルと二人で塞いだのよ」


戦闘中にいつの間にか大穴が塞がったこと、しかもそれに気づかなかった事に驚愕した。

おそらく、認知されないように力を隠蔽しながら修復していたのだろう。

だが、それよりも何よりも「退屈だから」という言葉で脳内がどす黒く塗りつぶされる。

確かに様子見ではあった。だが、私との戦闘が退屈?意味がわからない。

現魔王より強い私との戦闘中にだぞ?意味がわからない。


「それは・・俺が・・貧弱だからと・・そういうことなのか!?」

「もちろんそうよ。【魔抱まほう】も飽きたし、はい解除」


イツキ殿が指を鳴らすと全身の【魔抱まほう】が強制解除された。

容易く私のスキルを・・貧弱だから?・・

その怒りに、封印していたスキルの抑えが崩壊する。

俺の封印が・・真の魔王たるスキル【魔王】の封印が解放される。

俺が愛する美の魔王たるアルには、この醜悪な証は引き継がせなかった。

だからこそ、死してもなお魂が現世に残っていて復活出来たのだが。


スキル【魔王】解放とともに邪悪なる魔王の証たる【瘴気】も解放される。

この瘴気には【闇属性の大幅強化】【魔物の隷属・強化】【魔物以外の生物に対する腐敗】がある。

幸いアル達は竜の結界に守られているので問題はない。


この屈辱は・・くくく、まずはイツキ殿配下の魔物達の支配権を頂こうか。


<イツキ・ルノワール サイド>


煽りに煽ってみたら、黒鬼父の体から瘴気が噴き出してきた。

瘴気をぺろりと試食してみたけど、これは属性強化系ね。

体内に入ったら、魔物達もこの瘴気にはあがらえないでしょう。

あの小竜よりも濃密なのは流石前魔王というところだろう。

だけど私は煽ればもっとこう、楽しい殴り合いが出来るかな?なんて思ってたのよ。

その結果が、瘴気なんて面白くもなんともないわ。

もっと脳筋かと思ってたのに、期待ハズレもいいところだわ。

しかも、ただ瘴気をたれながしているだけ。

瘴気という大きな力に振り回されて使いこなせていないし。


「あなた達にはアレは毒よ。発氣で全身をガードしなさい」

「「「はい!」」」

これで魔物達が影響されることはないだろう。

「アンリはこっちに来なさい」

そう叫ぶと、慌てて逃げ出すであろう黒竜アンリの先回りをして、その首根っこを掴む。

「ぎゃ!・・イツキ様違うのです!準備運動で体を仕上げてから行こうかと・・・あと3時間ほどお待ち願います」

「いい心がけね。でも大丈夫。あなたなら即戦力よ。この瘴気を耐えてみなさい」

「(げぇ!?)・・・アリガト・ゴザイマス」


まったく、反骨心の欠片も無くなったわね。

なんでこんなヒキニートみたいになったのかしら?

それだけイツキの内部はエネルギー体にとって居心地の良い場所なのだが、本人は知り得ない。


さて、私を失望させた罰・・・黒鬼父の心身に刻み込ませないとね。



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