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54.取り戻した日常の幸せ

「・・・さて。そろそろ食材の買い出しにでも行くか」


私は椅子から立ち上がり、大きく伸びをした。


春来市に越してきてもう3か月が過ぎた。早いものである。引越して色々落ち着くまで

けっこうドタバタ大変だったけど、この頃ようやく少しこの生活に慣れてきた。


実家が近いので頻繁に行き来できるし、精神的にすごく楽になった。両親もけっこう喜んでくれている。

仕事は、まだ見つかっていない。単発でバイトは1、2回やったけど、本格的なものは、今回は少し腰を据えて、探してみたいと思っている。


「あんまりのんびりもしていられないんだけどね」


心の声を小さくつぶやき、立ち上がる。出かけるといっても、歩いて10分の近所のスーパーへ食料の買い出しに。特にどうってこともない日常。だけど、なんだかとても穏やかで幸せだ。


関西にいた時は、同じことをしていても嫌々に、ただ生きるためだけの義務感で行っていた。住む場所が変わっただけでこんなに変わるものなのか。


いや、住む場所が変わっただけ、ではないんだろう・・。私は胸のスカイブルーのガラスのペンダントに手をやる。あれから3か月経っても、これは変わらず私の一番のお気に入り。やはり一連の夢は、こちらに越してきた時点で全く見なくなった。ラドゥたちからの通信も切れた。今では、関西での生活すべてが、遠くなっていて、本当にずっと夢を見ていたかのよう。


でも、夢ではなかった。確かに私はあの1年を生き抜いた。壮絶な日々だったけど、おかげで何かが大きく変わった自分がここにいる。相変わらず独身で、仕事もないけど、でもそんな自分に焦りを感じなくなったみたい。


もちろん、魂の片割れには出会いたいし、結婚もしたい。「来世の結婚」を成就させるという約束も果たしてあげたい。でも、もう何歳までに結婚しなきゃとか、自分を追い込むようなことは思わなくなった。


結婚適齢期なんか、関係ない。ちゃんとその時がきたら結婚出来るでしょ。死ぬまでに結婚出来ればいいやって思えるようになった。なんか、極端な気もするが。


この心境の変化が吉と出るか凶と出るか、わからないけど、もうどうでもいい。流れに任せる。今は本当にそういう心境。


悩むのは関西でさんざんやってきた。もう本当に疲れたのもある。しばらくは何も考えたくない。


10分ほど歩いてスーパー到着。割引食材を中心に買い込む。歩いて持って帰れる分だけ。もう3か月も通っている店だから、売場の位置も把握済み。


手早く店内を回り、レジに並ぶ。さっきまでPCで作業していたので目が痛いし、ちょっとぼうっとするなぁと思いながら。


会計の済んだ物をマイバッグに移し、カゴを片付けて。さて、帰ろうと2、3歩歩きだした所で、ふと背後から声がした。

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