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42.私たちの出陣

とうとうこの日が来てしまった。リアとシェインの結婚式の日。私たちの運命を変えるための大作戦決行の日。


外は大雨と暴風。大型の台風が関西地方に近づいているという。だんだん不穏な天候になってきた。まるで・・何かと共鳴しているかのような?・・いやいや変な方向に考えるのはもうやめておこう。


準備はできているのだから。シェインに送った結婚指輪のビジョンはちゃんと伝わっていた。よかった。結婚式と言ってもお互いの合意でしかなく、後に形として何も残らない2人のために、これからの人生を生きていく支えになれば、と思った。2人ともとても喜んでくれた。


リアとシェインと見ていると、お互いを思いやる深い愛に感動する。そんな愛を体験すべく、私も早く片割れに出会いたいと思う。そのためにも明日の計画を成功させて過去を完全に変える必要があるのだ。


ラドゥに、今回の全ては私が起こしている、自分のために動いてほしい、と言われてから、その意味を考え続けている。


私は今回、リアたちを助け、カーサの呪いから2人を解放することで、私自身をも、その過去生の呪縛から解き放つことができるような気がする。長く続いた過去のしがらみから自分を自由にする。私にとってはそういう意味もある大事なミッションなのだ。


緊張感で集中しきれない荷造りを、なんとか少しずつやっていたが、昼過ぎから外の様子が、段違いのレベルに酷くなってくる。台風が上陸したのだ。しかも、私の住む地域直撃。


部屋の窓もドアもガタガタ揺れ、地響きもして、今にも窓が割れてしまいそうで、本当に恐ろしかった。人生でこんな恐怖を味わったことは初めてだった。何もできずに部屋でおろおろするだけの私。


怖すぎて1人で耐えられる限界を超えてしまい、電話で実家の母に電話して泣きついた。声だけだけど、誰かと繋がっていると思えるだけで少し落ち着く。あらためて人間は1人では生きられないのだと感じたのだった・・。


そのうちに雨風の勢いもほんの少しずつ弱まって来た。30分ほどで最悪の時は過ぎたらしい。

まだまだ恐怖感が残るけれど、ようやく人心地がついてきた。朝から何も食べられなかったから、軽く食べることにする。ハムトーストとコーヒーで、少し落ち着く。


それにしても、よりによって今日という日にこの大嵐。さっき、ちらっと思ったことが、なんだかあながち妄想じゃない気がしてくる。


この大荒れの天候は、もしかして、時空を超えて5000年前のカーサの恨みのエネルギーが現象化しているのでは・・と。何かが変わりつつあることを彼の魂が察知しているのかもしれない。


そんなことを考えていると、頭の中に声が響いた。


「瑠璃子、そろそろですよ。待っています」


ラドゥの声だ。もうそんな時間か。朝から緊張していたのに、台風のおかげで忘れるところだった。それでは、そろそろ出動します。どうかうまく行きますように。



「瑠璃子、調子はどうですか」


いつもの宇宙空間に着くと既にラドゥが待っていてくれた。


「ラドゥ、こんにちは。遅くなってごめんね。台風がすごくて怖くて」


遅れたことを謝ると、ラドゥが同情するように言った。


「こちらでも感じていました。大変な念エネルギーが荒れ狂っていたようですね」


「え・・、やっぱり、そうだったの?!あれ、カーサの念なの?」


「彼だけではないでしょうね。今は色々な形で過去を清算する時なのです。カーサの魂はきっと何かを感じ取って荒れ狂ったのだと思います」


「私たちの計画の存在をどこかで感じ取った・・?」


「・・かもしれませんね」


突然、後ろから違う男性の声。あ、もしかして・・。


「ナイーシャ?」


「はい。ナイーシャです。瑠璃子、初めまして。あなたの時代の“僕”より先に、あなたに会えることになるとは思ってもみなかったけど、会えて嬉しいよ」


この人、ずいぶん茶目っ気があるな。こんな日に緊張感のない挨拶をしてきたナイーシャに苦笑する。


「そうなの。私も、私の時代のあなたに早く会いたいんだけど・・」


「うん。ごめんね。君の時代の僕、まだ眠ってるみたいだね。でも色々なことが変わって来てるから、もうすぐだと思うよ」


ナイーシャはなぜかくだけた言葉遣いで話し出した。なんだろう。リアにも敬語だったはず。私、リアより年上なのに。でも言葉が変わるとぐっと若い印象になる。彼は思ってるより若いのかもしれない。


「そうね。諦めないで待ってみる。でも、もし出会えても、ちゃんとあなたの魂だってわかるか、それも心配で」


そう答えると、ナイーシャは


「僕たちが出会えば、必ずわかる。間違えることは絶対にないよ。心配しなくていいし、諦める必要もない。全てはこれからだよ、瑠璃子」


優しく私の頬に手を伸ばし、なでながら言う。慰められてるのか?そこへラドゥが声をかけてくる。


「そろそろ行きましょう。結婚式が始まります」


「どうすれば行かれるの?」


私が訪ねると、ラドゥは、


「私たちが連れて行きますから、瑠璃子はただ心をからっぽにしていてください」


そう言うと、私に向き直り、


「瑠璃子、いよいよ最後の大勝負です。向こうに着いたら、説明している暇も余裕もないと思います。とにかく、ここまで来た自分を信じてください。そして私の合図で自分の光を一気に解放することだけに集中してください。では、行きますよ」


そう言うと、ラドゥの光が強く放射される。意識が薄れる直前にナイーシャの


「瑠璃子、一緒にいるからね」


の声が聞こえ、手が握られる感覚があった。そしてホワイトアウト。



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