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43.リアのウェディングドレス

リアは急ぎ足で例の池のほとりに向かっていた。神殿での今日のお勤めが終わって彼女は弾丸のごとく神殿を飛び出した。今朝リアはちょっと早く部屋を出て、神殿に行く前にここに立ち寄り、大きい木の根元に結婚式で着る衣装と花束を隠しておいたのだ。


「早く着替えなきゃね。誰も来ないうちに」 


来るのは待ち合わせをしているシェインぐらいなのだが、彼にだって着替えの姿なんて見られたくない。リアは辺りを見回し、手早く巫女服を脱いだ。結婚式の衣装を隠した木の根元から取り出そうとしゃがみこむ。


「これ探してるの?」


「きゃあっ!」


後ろからシェインがのぞき込んでいた。リアの白い結婚式の衣装を持って。


「いやー!」


真っ赤になってリアは両手で胸を隠す。下着姿なのだ。なんでいるのよ?泣きそうになっているリアにシェインは困ったような顔をして赤くなり、


「ごめん、気が急いてしまって仕事にならなくて・・。少し早く休憩にしてもらったんだ。リアがここで着替えようとしているとは思ってなかった。ほんとにごめん」


誠実に謝られて、リアも落ち着いた。


「わかったわ。わざとじゃないなら許してあげる。着替えを見られるなんて女性は本当に恥ずかしいのよ。着替えるから向こう向いていて」


「気を付けるよ。でも・・僕には何も恥ずかしがらないでほしいんだけど・・。」


と言うと、まだ下着姿のリアを抱き込んで来たのだ。素肌にシェインの腕が触れている。

固まったリアを抱きしめたまま、頭頂に口づけを落とす。さすがのリアもこれには動揺する。


「シェイン!ダメだってば!恥ずかしいって言ってるでしょう!」


思わずキツイ口調になってしまった。


「ごめん、もう少しだけ。本当は君と布一枚でも隔てられていたくないのに」


切ない口調に胸がズキンとした。顔を上げてシェインの顔を見る。スカイブルーの瞳が

真剣な光をたたえてリアを見返してきた。そしてシェインの顔が近づいてくる。リアは目を閉じた。


唇に熱くて柔らかいものが触れ、いつくしむように愛撫してくる。昨日と同じように舌が彼女の唇を割って入ってくる。シェインの手はリアのむき出しの腰や背中を優しく撫でている。彼が触れた部分が燃えるように熱い。


恥ずかしくてリアは身をよじって逃れようとするが、シェインの腕はしっかりリアにからみついて離さない。口づけはますます深くなる。


「んん・・んーっ!」


リアはもう羞恥と未知の感覚に失神寸前だった。その様子を感じ取ったのか、ようやくシェインが唇を離した。しかし、背中に回った腕はそのままで2人の身体はぴったりくっついている。


「ごめん、リア。ちょっとだけ理性のタガが緩んだ。欲望に負けそうになった」


「・・・まだ勝ててないでしょう」


やっとのことで呼吸を整え、リアはシェインの胸をこぶしでポカポカ叩いた。


「・・この自制心に感謝すべきか、恨むべきか。非常に悩むな・・」


名残惜しそうに彼女を抱きしめていた腕を解いた。今度こそ後ろを向かせてリアは手早く着替える。衣装は白い柔らかい艶のある布地で、襟元が大きく開いており、袖はないシンプルなデザイン。ウエストは太いリボンで絞られ、足元まで隠れる長いすそが広がっている。


それらしく作ったヴェールもかぶって花束を手に持つ。シェインにもらった白いムーストーンのネックレスだけを着けて、スカイブルーの光石は今は外すことにした。


「できたわ。シェイン、見ていいわ。どうかしら」


何とか気分を切り替え、向こうを向いていたシェインに声をかけると、シェインがくるりとこちらを向いてそして・・固まった。


「・・?シェイン?どうしたの?・・何か変かしら?やっぱり瑠璃子の一瞬の映像の記憶だけで縫ったから・・うまくできなかったのかも」


気に入ってもらえなかったらしい。ガッカリだが仕方ない・・ってえ?!又いきなり、ヴェールごと抱きすくめられてびっくりする。

「・・リア、綺麗だ・・!本当にお姫様だよ!」


そのままリアを高く持ち上げて回りだした。子供みたいだ。


「シェイン!目が回るってば!」


リアの悲鳴にようやく下ろしてくれた。


「ごめん。今日は謝ってばかりだな。でも・・綺麗だよ。とても美しい。この女性が僕の妻なんだと思ったら・・ごめん。すごい浮かれてる。本当に信じられなくて」


「シェイン、ありがとう。気に入ってもらえて嬉しいわ。あなたも素敵よ。騎士の制服の正装ね。いつもよりカッコいいわ」


本当にシェインは素敵だった。いつもの制服と違い、正装の服は白基調で、本当に格好いい。


「よし、準備できたな。幸せに浮かれるのは残念だけど、ここまでにしよう。ここからは、気を引き締めていこう。リア、がんばろう。2人でならきっと成功させられる。信じよう。運命を変えるぞ。」


シェインは真剣な目でリアに手を差し出した。その手には指輪が嵌められている。もちろんリアの手にも。


2人は指輪と同じように手をつなぎ、結婚式の場所へ向かって歩き出した。皆が待っている。


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