41.仲間の作戦会議③
「・・いよいよ明日だな」
アーサスが入ってくるなり言う。明日の作戦本番を控えて少し興奮気味だ。
「結婚式の噂はだいぶ浸透しているようだ。今日、宮殿の侍女たちが話しているのを耳にしたぞ。もちろん、誰のことかは特定されていない」
「そうか。ゲネルの方の守備はどうだ」
シェインが酒を注いだグラスをゲネルに差し出しながら尋ねる。
「こちらも上場だ。サージャには明日の夕刻、例の噂を引き合いにだし、調べてみたら、どうやらお前が巫女と結婚式を挙げる計画をしているようだと伝えた。何かおかしい。神殿の巫女を抱き込んで何か企んでいるかもしれないとな。サージャは少しも疑わず、聞いていたぞ。おそらくその後すぐにカーサに上げたと思う」
ゲネルはそう言って、グラスの酒を飲んだ。
「よし。準備は整ったな。後は、明日20秒間で光を出し、術の闇に投げ込むだけだ」
「けど、その20秒間はお前とリアしか動けないんだよな?2人だけで20秒のうちに光を創り出すってけっこう難易度高いよな・・」
アーサスが心配する。
「確かに簡単じゃない。でも僕はシャーマンの家系でエネルギーは扱い慣れているし、リアも巫女の卵だ。2人で協力すれば何とかなると信じるしかない。やるしかないんだ。明日で全てのケリをつける」
「おう。俺たちが気づかないうちに終わってるんだろうが、成功することを祈ってるぞ。時間が止まるまでのガードは任せとけ」
「同じく」
ゲネルも言葉少なに続く。2人の友情に本当に感謝した。
「今夜は早めに解散しよう。全ては明日だ。よろしく頼む」
シェインは強い目を2人に向け、立ち上がる。そして、右手を差し出し、握手を求めた。
2人とも神妙な顔で握手に応じたが、アーサスが、シェインの反対の左手の薬指に光る細い銀の指輪を目ざとく見つけた。
「お、それが例の結婚の証の指輪か。リアにも渡したのか。なんかいいな。俺も結婚する時には作るかな」
「お前と結婚してくれるという奇特な女性が見つかるといいな」
「なんだと?お前、しらねーだろ、俺はモテるんだぞ?」
「・・はいはい。わかったから、アーサス、帰るぞ」
アーサスのおかげで最後の作戦会議は笑いでの解散になった。
*
「リア、いよいよね。大丈夫?」
左手薬指の指輪についてリアを散々質問攻めにし、ようやく気が済んだアリスが言った。
「ええ。今からすごく緊張してるの。今夜眠れるかしら・・」
言葉通り、リアは既にひどく緊張しているように見えた。
「だめよ。ちゃんと寝ないと、明日を乗り切れないわよ」
確かに明日は何が起きるかわからない。心身ともに消耗を覚悟しておく必要があった。
「そうね。何があっても明日から逃げるわけにはいかない。頑張らないと」
「リアは真面目過ぎるのよ。そんなに気負っては余計固くなるわ。ここまでできることは全てやったのだから、後は全て委ねましょう。起こるべきことが起こるだけよ。大丈夫。もうある意味結果は出ているのだから」
アリスは時々難しい言い回しをする。何となく言いたいことはわかるのだけど。リアを励まそうとしてくれているのはよくわかったから、リアは微笑んだ。
「ありがとう、アリス。本当にあなたがいてくれてどんなに救われたことか。明日、式の執り行い、よろしくお願いします」
「わかったわ。もうあなたたちは既に結婚したみたいだけどね」
アリスが笑う。リアは真っ赤になった。やっぱりエネルギーに出ているのか。
「わかるわよ。とてもきれいな虹色の愛エネルギーが出ていて、おそらくシェインの所まで伸びているもの。昨日までより強固で輝きを増している。リア、おめでとう。あなたたちはまぎれもなく、真実の愛で結ばれた魂の夫婦よ。その指輪は間違いなくその証ね」
「アリス・・ありがとう」
感極まってリアはアリスに抱き着いた。
「泣くのはまだ早いけどね・・」
と苦笑されつつも、泣けたことでリアの緊張が少し緩んだ。
「じゃあ、明日。まずは神殿で会いましょう。寝不足の顔で来ちゃだめよ」
アリスが笑って部屋を出た。全ての下準備は終わった。アリスにはエネルギー的にかなり協力してもらっている。彼女がいなかったら本当にどうなっていたことか。「全てはこの時のために」そのフレーズがふっと心に浮かぶ。瑠璃子かもしれない。
全てはこの時のために。大事な瞬間がいよいよ来る。




