37.仲間との作戦会議②
「作戦の決行は2週間後の今日だ。その日にリアとの結婚式を挙げる」
シェインが彼の部屋で、アーサスとゲネルに告げた。このところ毎晩、食堂での夕食が済むと恒例のように、2人がやってくる。そういうわけで毎晩酒を飲みながら作戦会議が始まる。
「あと2週間だな。了解。ぼけてる暇はないな。2週間なんて、あっという間に来ちまう。」
「ああ。まずサージャへのご注進と、噂を流すことから始めよう。当日の詳細は、リアがラドゥとかいう例の光人に呼び出されているようだから、その報告を待って最終的なことを詰めていこう」
酒を飲みながらシェインが言う。アーサスはそれを聞いてため息をついた。
「全く、俺がそんな話を黙って受け入れてるのが信じられないが。本当だってお前が言うんだから仕方ねーよな。信じないと話が進まねーし。ところで、結婚式の準備の方は進んでるのか?そっちも大事だろう」
「ああ。僕の方は大体終わってる」
そう言いながらシェインは小箱を取り出した。
「なんだ、それ?」
「これが僕の結婚式の準備だよ。ちょっと思いついたことがあって。ちょっと変わってると思うが、これならずっと結婚式のことを覚えていられるからな」
シェインは意味ありげに笑って見せた。
*
「あと、2週間か。まるで本当にリアがお嫁に行っちゃうような気がするわね」
アリスが笑った。
「私もそんな気分よ。今世でこんな気持ちを体験できるなんて思ってもみなかった。そういう意味ではカーサ様に感謝かもしれないわ」
「悪い事も、ただ嘆くだけでは終わらせないのがいつもながらにあなたのいい所ね。転んでもただでは起きないというか」
アリスが又笑った。
「結婚式に着る衣装はできたの?」
「ええ。瑠璃子が送ってくれたイメージのドレスを思い出しながら縫ってみたわ。ヴェールっていうストールのようなものもなんとなくだけどね。あとは花だけね。アリスには式を執り行ってもらいたいの。お願いできる?」
「もちろんよ。私の人生で一番大切な儀式を任された気分だわ。謹んで務めさせていただきます。・・あと、エネルギー的なガードとサポートも引き続きね」
「ありがとう。よろしくお願いします」
リアは心からの感謝を述べた。
「今夜、ラドゥに会いに行ってくるわ。呼び出されたの。明日又報告するわね」
「計画の本番に関して何か連絡事項があるのかしらね」
「そうだと思う。今日瑠璃子が何回か、思考の断片を送ってくれたの。多分、ラドゥの呼び出しと関係あると思うわ。受け取ったキーワードは「時間停止」「20秒」の2つよ」
「それだけでなんだか緊迫感が出てくるわね・・」
アリスの笑顔が固まる。
「まぁとにかく、話を聞いてきてから話しましょう。明日の夜又来るわね」
アリスが立ち上がりかけ、少し気がかりな表情でこう付け加えた。
「今日、カーサ様を偶然見かけたのよ。なんだか雰囲気が以前と違っていて怖かった。頭の周りから黒いエネルギーが噴き出していてね。ハートの周辺も真っ黒で・・。まだ結婚式の噂は出していないはずだけど、カーサ様も魔術学を修めたエネルギー使いですものね。あなたとシェインの気持ちの深まりを感じ取ったのかも。それにしてもあのどす黒さは・・本当にとんでもなく強い恨みの念ね。尋常じゃない。なぜ急にここまで堕ちたのか、不自然なほどよ」
リアはゾクッとした。カーサの不自然なまでの急激な堕ち方は、それを本人が心から欲したからではないか。自分を闇に堕としてまで、なりふり構わず私とシェインを打ちのめそうとしている。
恋愛が自分の思い通りにならないからと、そこまで恨みの念を持つカーサ。怖いと思う反面、なんだか哀れにも思えて来る。けれど、同情している場合ではない。向こうはついに今回も堕ちるところまで堕ちた。これはやり直しても変わらないのだ。本人に変える意思がないからだろう。
「そう。もう闇に堕ちているのね。やはり、急がなきゃね。早く結婚式話の餌を撒いて耳に入れないと、その前にシェインを襲ったりしたら大変だから」
「思ったより冷静に受け止めたわね。本当にあなたは成長しているわ。それじゃ明日ね」
アリスは微笑んで部屋を出て行った。
「本当に成長している・・のかしらね。だとしたら、この計画を成功させられるほどでありますように」
リアはつぶやいた。




