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23.ゲネルの暴露

「え?当然だろう。ゲネル。礼なんて必要ない。戦いの最中のことだ。しかも正直言えば、あれは、本当に間一髪の偶然だったんだ。お前に何も無くて本当によかったよ」


それを聞いたゲネルは苦しそうな顔をしてしばらく無言だったが、突然、絞り出すような声を出した。


「・・シェイン、お前はやっぱりそういうやつだよな。最初入団してきた頃から全く変わってない、まっすぐで正直で。そんなお前を・・。俺は・・何を見ていたのか・・。許してくれ!」


ゲネルは叫ぶようにそういうとシェインの前で膝をついた。そして頭を床にこすりつけるようにして土下座を始めたのだ。


様子がおかしいと、思いながら話を聞いていたシェインはびっくりした。となりのベッドで寝ころんでいたアーサスも起き上がり、口をあんぐり開けている。


「どうしたんだ、一体。ゲネル・・?」


ゲネルは泣いていた。


「俺は・・とんでもない間違いを犯すこところだった。シェイン、俺は・・お前を殺せと命令されてきたんだ!」


シェインが何か言う間もなく、アーサスがはじかれたように立ち上がり、ゲネルの胸倉を掴む。


「なっ、何だと?!シェインを殺す?どういうことだ!」


「やめろ!アーサス!落ち着け」


シェインは興奮しているアーサスを引き戻してゲネルに向き直る。


「とにかく、説明しろ。全部だ。誰の差し金だ」


ゲネルは、まだ泣きながら、話し始める。


「昨夜、シェインに偵察隊に加わるよう声をかけられた後だ。騎士長のサージャ様が来られたんだ。そして、お前について裏切り者だという確かな証拠があると言われた・・」


「サージャ?」


予想外の名前に、シェインは眉を上げる。サージャは、シェインたちより10歳以上年上で若手騎士を指導、育成する立場の上級騎士の1人だ。人格者で通っている。そう、もちろんカーサの信頼も厚い・・。


「シェインが?裏切り者?あるわけねーだろ!おい、ゲネル。寝ぼけるのもいい加減にしろよ。一体どうしたらそんな話を信じられるんだ!」


アーサスが再び激昂する。それにつられたかのようにゲネルも声を張り上げる。


「俺だってそう思ったよ!でもあのサージャ騎士長、だぞ?普通に考えて疑うか?怖い顔をして、シェインが金欲しさに賊と通じている、この偵察隊も偵察のふりをして、賊に金をもらい、王朝の領土内に手引きする計画だということまでわかっている、と言われた。だから、王朝を危険に陥れる前にシェインを、隙を見て始末しろと・・!」


そこまで一気に言って又泣き出した。シェインは言葉がなかった。


「もし本当にシェインが賊と通じているなら、俺を賊から助けるはずがない。それで初めて疑ったんだ。俺はサージャ様に騙されていたのかもって。シェイン、本当に悪かった。許してくれ・・」


そう言ってゲネルは又頭を下げた。


「ゲネル・・。正直、何といえばいいか今はわからない。だが、話してくれてありがとう」


シェインは言葉少なにそう言った。そんなシェインにアーサスが言った。


「でも、何でサージャがそんなウソまで吹き込んでお前を亡き者にしようとするんだ?理由が見当たらない。そういう意味では、確かにゲネルがサージャの言うことを疑わなかったのも仕方なかったのかもしれないな」


・・これは2人には伝えておいた方がいいのかもしれないという気がした。シェインは、


「僕にはその理由がわかる気がするんだ。いいか。今からする話は、絶対に他言無用だ。お前たちにだけは話しておく。巻き込んでしまったからな。」


そしてシェインは2人にリアのこと、カーサのこと、この数日間で起こった全てのことを話したのだった。



「・・なんてこった・・。おい、それは本当の話なのかよ?」


アーサスが信じられないというように首を振る。ゲネルも唖然としている。


「まさか、そんな因縁話のもつれが原因だったなんて・・」


「まぎれもなく本当の話だ。僕だってまだ信じられないくらいなんだから」


「もしかすると、賊に通じているのはサージャってことだってありうるんじゃないのか?あのタイミングでの襲撃はどうもおかしかったからな」


偵察のルートを指示したのはカーサであることを考え合わせると、確かに可能性は高い。しかし、証拠がない。しかも、刺客に使っているゲネルを狙うのはおかしくないか?

・・それとも、何かが計画を乱れさせた・・?シェインは無意識に制服の上から光石に触れた。


とにかく、ゲネルの刺客命令は試みたが失敗したと言うことにする。そして、今後アーサスとゲネルは常にシェインの傍で、それとなく目を配ると請け合ってくれた。味方がゼロだった昨日までより、ずっといい。


「リアか、神殿にいるんだよな。顔は見たことあるけど、話したことはないな」


アーサスは言う。


「無事に帰ることができたら会わせてくれよ。お前の片割れに挨拶しておきたい」


「ああ、是非。」


シェインは微笑んだ。今日初めて笑えた気がする。


「シェイン。俺にも会わせてくれるかい?今日のことを謝りたいし・・」


強い目をしてゲネルはシェインを見た。


「俺は今世も、そしてもし、来世でも会うことがあれば、俺は命がけでリアさんの魂を守ると決めた。変な意味じゃないぞ。大きな借りがお前にできちまったから、その罪滅ぼしにお前の大事な女性を守らせてもらうんだ」


「ゲネル?お前、何か変な方向にこじらせてねー?いくら罪滅ぼしって言っても来世まで言わなくてもいいだろう」


アーサスが敢えて軽い口調で宥めるようにいう。しかし、ゲネルは真面目なだけに思い込んだら止まらないところがあった。


「いや、そうさせてほしい。もちろん来世では騎士としてではなく、きっと、友人として力になるし、お前が現れるまで絶対に彼女は守るから」


・・なぜ、シェインではなく、リアの魂、限定なんだ?それに、何で僕が出会う前にお前が出会ってる前提なんだ?


とゲネルの奇妙に確信めいた言葉を不思議に思ったが、それもゲネルとリアの魂の関係に理由があるのかもしれない。魂とはかくも複雑に絡み合っているのだろう・・とあらためてシェインは感じた。


「ま、まぁ、ゲネルの気持ちはもう充分わかったから。気にするな」


と受け流し、ようやく明るさが戻ってきた仲間たちに


「もう寝よう。明日も早い」


と告げたのだった。


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