エピソード8 「黒く塗りつぶされた村」
「……黒く?」
聞き返した声が自分でも分かるくらい掠れていた。
レオは小さく頷く。
「うん。ほかの村は普通だったのにここだけ真っ黒だったって」
「…………」
嫌な感じがした。胸の奥がざわつく。
でも、”それ”が何なのかは分からない。
レオは困ったように笑った。
「まぁ、ただのイタズラかもしれないけどな!」
多分、空気を軽くしようとしてるんだろう。
でも、僕の頭の中には、昨日見た数字がこびりついていた
【生存率:3%】
偶然だと、そう思いたかった。
けど、もう無理だ。
「その地図、今どこにあるの?」
「村長んとこじゃね?なんか大人たちで話してたし」
「そっか」
そこまで言って、会話は途切れた。
井戸の近くを風が吹き抜け、村人たちはどこか落ち着かない様子でひそひそと話をしている。
旅人が死んだ。
それだけで村の空気はこんなに変わるんだ。……まぁ小さい村だし、そんなもんか。
「なぁ、水蜜」
「ん?」
「今日さ、森行かね?
「森?」
「そう!剣の練習のついで!」
レオは木の棒をぶんぶん振る。相変わらず元気だ。
【レオ・グラン】
【感情:友好】
【生存率:24%】
24%。その数字だけが場違いなくらい重かった。
「いいけど」
「よっしゃ!」
レオは嬉しそうに笑った。その笑顔を見ていると、少しだけ安心する。
でも、安心すればするほど”24%”が気持ち悪かった。
昼過ぎ。僕たちは村の近くの森に来ていた。
木漏れ日。土の匂い。そして、鳥の鳴き声。自然が溢れている。
前世じゃ、まず来なかった場所だ。
「せいっ!!」
レオが木剣を振る。あたりに乾いた音が響いた。
「どうだ!?」
「……まぁまぁ」
「なんだよその反応!」
レオが笑う。僕も、少しだけ笑った。
その時だった。
ガサッ。
「……っ」
森の奥で何かが動いた。レオも気付いたらしい。
「……なんだ?」
空気が変わる。さっきまでの穏やかな森じゃない。静かすぎる。鳥の声も風も無くなっていた。
「水蜜、後ろだ」
振り向く。
木々の間。そこに”何か”が立っていた。
黒いフード。旅人のような服装。顔は見えない。
でも、頭上の文字だけははっきり見えた
【???】
【敵意:73】
【生存率:89%】
「——っ」
旅人。いや、違う。昨日の男じゃない。
でも、同じ匂いがした。
そいつは、ゆっくりこっちを見る。
そして、掠れた声でこう言った。
「——見つけた」




