エピソード6 「黒い数字」
最初は、ただの見間違いだと思っていた。
【生存率24%】
そんなもの、人の頭の上に浮かぶわけがない。
けど、次の日になっても、そのまた次の日になっても、文字は消えなかった。
「……」
僕は井戸の近くに座りながら、人を見る。
【農民】
【疲労:63】
【生存率:71%】
【薬師】
【不安:48】
【生存率:82%】
みんな違う。
数字も、文字も。
でも、レオだけ異常に低い。
【レオ・グラン】
【生存率:24%】
理由は分からない。
何が起きるのかも知らない。
というか、知りたくない。
だって、”それ”を知ったところで、どうにもならない気がしたから。
「水蜜?」
「っ」
気付けばレオが隣に座っていた。
「最近ぼーっとしてんな」
「……そう?」
「そうそう。なんかずっと考え事してる」
レオは笑いながら空を見る。
青空。平和な村。どこにでもありそうな日常。
なのに、この中の誰かは、いつか死ぬ。
当たり前のことだ。
でも、数字で見せられると、妙に現実感があった。
「なぁ、水蜜」
「ん?」
「お前ってさ、たまにすげぇ遠く見てるよな」
「……は?」
「なんつーか、俺と違う景色見えてる感じ」
心臓が止まりそうになった。もしかして…バレた?
けど、レオはすぐに笑った。
「まぁ、昔っから変なやつだけど!」
「なんだそれ」
僕は苦笑する。
その時、村の入口のほうが少し騒がしくなった。
旅人だ。
フードを被った男が、村へ入ってくる。
自然と文字が見えた。
【???】
【敵意:12】
【疲労:91】
【生存率:3%】
「……え?」
3。低すぎる。思わずその男を見る。
すると、その旅人はふらりと倒れた。
村人たちが慌てて駆け寄る。
ただ、僕だけが動けなかった。
そして、頭の中でぼ~んやりと考えていた。
——あぁ、この数字、本当に当たるんだ。




