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エピソード3 「無適性の居場所」

 帰り道は、妙に静かだった。

 母さんは何度か僕に話しかけようとして、でも結局何も言えずに口を閉じる。その繰り返し。

 村の空気も、行きとは違っていた。

 すれ違う大人たちの視線。

 ひそひそ声。

「あの子が……」

「本当に?」

「無適性なんて初めて聞いたぞ……」

 聞こえないフリをした。前世の経験上、“聞こえないフリ”だけは得意だった。

「……」

 胸の奥が少しだけ痛む。

 たった数十分前まで、僕は普通の子供だったはずなのに。

『無適性』。たったそれだけで、人ってこんなに態度を変えるんだな。

 ……まぁ、知ってたけど。

 家へ着く。木の扉を開けた瞬間、母さんがようやく口を開いた。

「水蜜」

「……うん?」

「その、なんていうか……元気出して?」

 無理に笑っているのが分かった。

 その笑顔が、逆に苦しかった。

「母さん」

「な、なに?」

「“無適性”って、そんなに変なの?」

 聞いた瞬間、母さんの表情が固まった。

 やっぱり、か。少しの沈黙。

 やがて母さんは、椅子に座りながらぽつりと呟いた。

「……この世界はね、“適性”で全部決まるのよ」

「全部?」

「どんな仕事に就けるか。どこまで出世できるか。どれだけ魔力を持てるか……何をするにも、適性が基準」

 つまり、生まれつき人生が決められてる世界。

「無適性の人は……?」

 母さんは少しだけ目を伏せた。

「……ほとんど、いないわ」

 空気が重い。聞いちゃいけないことを聞いた気分だった。

「でも大丈夫! 水蜜は優しい子だし、頭もいいし――」

「母さん」

「っ……」

「ありがとう」

 それ以上言わせたくなかった。

 慰められるの、苦手なんだ。

 前世で散々経験したから。

『お前は悪くないよ』

『そのうちいいことあるって』

 その言葉のあと、大抵何も変わらなかった。

 だから、期待するのが怖い。

 その日の夕方。

 僕は一人で村の外れへ来ていた。

 小さな丘。草が風で揺れている。

 前世なら絶対外に出なかっただろうな、なんて考える。

「……はぁ」

 寝転がる。空が広い。やっぱ異世界だなぁ、と思った。

 その時。

「よぉ」

「うわっ!?」

 飛び起きた。

 レオだった。

「び、びっくりした……」

「こっちのセリフだわ。なんでそんな驚くんだよ」

 レオは僕の隣にどかっと座る。

 しばらく沈黙。風の音だけが聞こえる。

 やがてレオが頭を掻きながら言った。

「……悪かったな」

「え?」

「村長んとこ。なんか、お前だけ空気変だったし」

「……別にレオのせいじゃないだろ」

「でも、なんかムカついた」

 レオは空を見上げる。

「適性がなんだよって思う。水蜜は水蜜だろ」

「……」

 その言葉に、胸が少しだけ熱くなった。

 あぁ、こういうの、久しぶりだ。

 “僕自身”を見ようとしてくれる人。前世には、ほとんどいなかったから。

「ありがと」

「おう!」

 レオは笑った。本当に太陽みたいなやつだ。

 その時だった。

 ――ドクン。

 胸が脈打つ。

「……っ?」

 視界の端に、黒い文字が浮かぶ。


【観測開始】


「なっ……」

 そして、レオの頭上に、文字が現れた。


【レオ・グラン】

【剣士適性:A】

【将来生存率:24%】


「……え?」

 思わず息を呑む。二十四パーセント?低すぎる。というか、生存率ってなんだ?

 さらに文字が増える。


【死亡予測】

【時期:三年以内】

【原因:未確定】


 ぞわり、と背筋が冷えた。

「み、水蜜?」

 レオは気付いていない。

 当然だ。見えてるのは僕だけなんだから。

 でも、どうして。

 なんでこんなものが見える?

 そして。

 どうして僕は――。

 ”レオが死ぬ未来”を見せつけられてる?

やぁやぁこんにちは!ちょんだよ!読んでくれてありがとう!多分恐らくきっともっともっと続くからどんどん読んでってね!

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