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集合的無意識が私達に与える影響について  作者: 10MA
夢の覇王

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092 共同戦線3


「自分が何をしているのか分かっているのか!?」

「そっスよ!あの大男は正義の味方なんかじゃないんスからね!」


男は構えを解かない。

細長い棒を持つ男の体もまた、まるで棒のように細長い。

だというのに、パワータイプの多田に押し勝った。


「正義でメシが食えんのか?こんなおもしれえ世界無くそうなんざ、どうかしてるよお前ら」

「なるほど、事情はよく知っているようだな。そのうえでそのポジションを取るなら、容赦はしない」


食満が男に向けてナイフを構える。

その姿を見た多田も、拳を握ると細長い男に向けた。


「翔太、ここ少し頼んだ!二人に加勢して来る!」


天城はそう言うと、距離を一気に縮めるために深く腰を落として脚に溜めを作る。

しかしハウザーはそれを阻止するように天城に拳を落とす。

天城は難なく躱したものの、二人の元に行くための道筋にハウザーが立ち塞がってしまった。


「くそっ!頭の悪い化物みたいなナリして、共闘とかするのかよ!」

「共闘、ではない」

「喋った!?」


天城はハウザーの声を初めて聞き、驚愕する。

その動きをハウザーは見逃さない。

天城は振るわれた拳を自分の腕でガードをするが、衝撃と苦痛に顔が歪む。


「光!」

「大丈夫だ!折れてない!」


近付こうとする相馬を、天城は手を挙げて静止する。

そして追撃が来る前に、ハウザーの胴をめがけて蹴りを放つ。

攻守が代わる。

しかしハウザーの丸太のような腕が、天城の蹴りを難なく受け止めた。


「くっそ」


天城の顔に冷や汗が滲む。

辛うじて笑顔を浮かべてはいるが、苦し紛れの強がりでしかない。

食満、多田の両名は棒を構えた男と向かい合って動かない。

相馬、天城はハウザーに阻まれその場を動けない。


膠着状態。


しかしそれも、長くは続かなかった。

圧倒的なパワーを持つハウザーは、人数の差など意に介さない。

まるでプログラムされた機械のように、当然のように近い標的へとその剛腕を振るう。


「くっ!」


天城は素早く身を捩らせてそれを躱す。

それを見てか、食満達と対峙している細長い男も動いた。

食満に向けてその武器を叩きつける。

だがその攻撃は、間に入った多田の腕に当たっていた。

ナイフを翳して攻撃を受け流すつもりだった食満は、舌打ちをした。


「まひる!俺のことはいい!」

「はっは!仲間想いだなぁオネエちゃん!」

「くぅぅ、おらあっ!」


多田は痛みに顔を歪めながらも、反撃の拳を繰り出したが、その腕は棒に叩き落とされる。

バランスを崩した多田の顎を、細長い男の棒は正確に捉えた。

多田の足元から力が抜け、その膝を地面についた。

それでも男の棒は止まらない。

風を切る音がしたかと思うと、直後に鈍い音がした。


「まひるーっ!」


食満の叫びが虚しく響く。

多田は頭から赤い鮮血を散らし、ゆっくりと地面へと倒れた。


「おいおいおい、弱いなー!?もう終わりかよ」


食満は倒れた多田の前に出ると、男に向けてナイフを構える。

一刻も早く多田の容体を見たいが、この状況では難しい。

多田の頭部から地面へと血が流れ、その血だまりは少しずつ広がり続けている。

目の前で見せられた圧倒的な実力差に、食満は内心穏やかではない。

思いがけない乱入者の、その軽薄そうな男の態度に、食満と多田のペースは乱れた。

連携を忘れ、思わず体が動いた多田の油断もあった。

だとしても、明け方の中でも戦闘要員筆頭である者が、こうも簡単に倒されるとは思ってもみなかった。

動きあぐねている食満の耳に、離れた所から天城の声が届く。


「優征!まひるは大丈夫か!?」


だが食満は言葉を返す余裕も無い。

焦りを表面化させず、向かい合う敵に隙を見せないようにするので精一杯だった。

天城からしても、こうまで余裕の無い食満を見るのは初めてだった。


不安が伝播していく。


相馬は不穏な様子を察したが、元々付け焼き刃の連携だった、事前に考えられていたパターン以外では、出来ることなんてほとんど無い。


「光!そのまま踏ん張っていてくれ!俺が行く!」

「すまない、頼んだ!」


ハウザーの猛攻を躱しつつ、反撃の機会を伺う天城は動けない。

声をかける相馬へと視線さえ向ける余裕が無い。

相馬は跳んだ、棒を武器とする男へと。


「めんどくせっ」


男は短く言うと、後ろへ跳んで相馬の攻撃を避けた。

それで止まる相馬では無かった。

着地と同時に男を追い、再び蹴りを放つ。


「あーはいはい、さっきの女よりは動けるワケだ」

「くっそ!」


男は余裕を持って相馬の追撃を避け続ける。

機動力は相馬に及ばないものの、巧みなフェイントや動きの緩急によって攻撃を当てさせない。

それでも、相馬は手を止めるわけにはいかない。

視界の隅で食満が多田を抱き起こしている姿が見えた。

まだ時間が欲しい。


「・・・そうやって他人に気を使ってるヤツがオレに勝てるとでも?」

「俺達が勝ちたいのはお前じゃない。あっちの大男だよ!」

「オレには興味ねえってか?オレの名前は陸(リク)ってんだ。覚えとけよ、冥土の土産ってやつだ」


そう言うと陸と名乗った男は棒で相馬の拳を止めた。

ようやく久しぶりに拳に伝わる手応えだったが、もちろん陸にダメージは全く無い。

陸は棒を引き、相馬の拳をいなした。

不意に力の行き場を失って、バランスを崩す相馬。


(まずい・・・!)


思った瞬間にはもう遅かった。

陸の膝が無防備な相馬の腹部へとめり込む。

腹部から背中へと突き抜ける衝撃と痛み。

遅れてやって来る強烈な吐き気に、相馬はその場でうずくまるしかない。


「がっ、はっ・・・!」

「はい、おつかれー」


陸は気だるそうな声からは想像できない鋭い蹴りを、容赦なく相馬へと叩き込む。

目の前が暗くなる。

痛みに思考が支配される。

相馬の耳には何かの音や声が届いているが、それの意味までは思考が届かない。


「はい、もう一人いっちょあがりっとぉ!はっはー、明け方をこんな気持ちよくボコせる日が来るなんて思わなかったなぁぁ!?」


男は倒れる相馬から目を離すと、次に食満を見据えた。


「逃げろ!優征ぇぇぇぇ!!」


夜の街に、天城の声が響き渡る。

相馬の耳には辛うじてその声は届いているが、遠のく意識の中、どこか遠くの出来事のように感じていた。


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