090 共同戦線
次に見た夢で早速、明け方と相馬達は行動を共にした。
基本的に現場の指揮は加藤が執っている。
そう決めたわけではないが、明け方の面々は加藤を中心に動いていた。相馬達も自然とそれに倣う。
リーダーは天城だが、彼はどちらかと言うと精神的支柱の役割が大きいらしい。
それでも、話がまとまらない時は天城が最終的な決断をした。
そして行動は誰よりも早く、先陣を切っていた。
(あれは俺には真似できないな)
相馬達四人は、危ういバランスの上に成り立っている。
お互いの事を思い合ってはいるが、団結力と言われると自信が無い。
特に相馬には、凛や真壁を無理矢理に奮い立たせて、巻き込んだという罪悪感もあった。
「翔太、難しい顔をしてどうした?」
「いや、光は立派なリーダーだなって」
「ははっ!やめてくれよ。そんなガラじゃないのは分かっているんだ」
天城はビルの屋上を駆ける相馬の隣を、全く同じペースで駆ける。
街はすっかり暗くなっていた。
この世界で目覚めた時点ですでに暗かった。
街灯や建物から漏れる明かりが照らす大通りを、多田、食満が走って頭上の二人に着いてきている。
「あの二人はどれくらい動けるんだ?」
「まひるはパワータイプ。優征は武器の扱いが得意だ。まあ見ての通り、僕達みたいに飛んだり跳ねたりはそこまで得意じゃない。それでも戦闘では本当に頼れるから心配しなくていいよ」
地上と頭上から、街を探索する。
目標はもちろんハウザー。
初めは個々で手分けをして行動を提案した食満だったが、反して加藤は団体行動を提案した。
それぞれの意見にメリットもデメリットもあり、相馬達を含めチーム内で意見が二分された。
それをまとめたのが天城で、今こうして四人で駆け回っている。
意見が通らなかった食満にも特に不満な様子は見られなかった。
その食満は、通りの人々の中からハウザーを探そうと絶え間なく視線を動かしながら、足も動かしている。
時折頭上を跳ぶ二つの影と、すぐ後ろを走る多田の気配にも気を配りながら。
「優征〜!本当にこんなガッツリ走って本当にハウザー見つけられるんスか〜!?」
「俺がちゃんと見ているから、まひるはとにかく着いてくればいいよ。そもそもあの巨体を見逃す事は無いしね」
多田の顔には、隠そうともしない疲労の色が見えていた。走ることはそこまで得意ではない。
「てかこれ、歩いても一緒じゃ!?」
「菫の話を聞いていなかったのか?目立った方が敵を釣りやすいだろ。それに走った方が、1日で探せる範囲も広くなって効率もいい」
「そうっスけど〜!自分は戦いになってから呼んで欲しかったス〜!」
「いいから足を動かせ。きっとこれでも加減してくれてるぞ」
ちらりと相馬達の姿を見る。
上の二人も移動しながら言葉を交わしているようだ。
食満は相馬にまだまだ余裕があると感じていた。
食満はこの団体行動について、多田にも言っていない事がある。
加藤から、相馬がどれほどの能力を持っているのかを見てくるようにと言われている。
(だからこその団体行動か。俺はハウザーを探す事しか頭に無かったが、やはり菫には敵わないな・・・)
「まひる、君から見て相馬は強いと思うか?」
「そんなのやってみないと分からないっスよ!体に聞くのが一番っス!」
「君に聞いた俺が馬鹿だったよ」
背後から聞こえるクレームを受け流し、再び街ゆく人々の観察も怠らない。
行けどもハウザーらしき姿は見当たらない。
相馬はビルの屋上から、隣のビルへと跳び移る。
着地してすぐ一歩目を踏み出すと、すぐ隣に天城が着地した靴の音。そして声。
「なかなか見つからないな!来て欲しくない時には来るくせに、探すと現れない!」
「天城達は、ハウザーと何度戦っているんだ?」
「2回だな。あれを戦いというかは微妙だけど」
天城は前を見たまま、苦笑した。
「一方的だったよ。1度目は街中で僕とスミレが追われた。地獄だったよ。ホラーゲームそのものだったね」
「2度目は?」
「僕達から挑んだ。その前に、タケさんにハウザーの存在を聞いていたからね」
「タケさんに・・・」
「そう。悪夢そのものみたいなあれも、一人の人間なんだって。自分達のために、この世界のみんなのために、タケさんはハウザーを倒すつもりだった。僕らも役に立ちたかった」
「それで、自ら挑んだと」
「そう、まあ結果は散々だったなー!よく全員生きていたもんだよ」
自覚があるかは分からない。その軽快な口調は、後半になるにつれてトーンが落ちる。
あえて深掘りせずとも、さすがの天城でも笑い飛ばせないような出来事だった事が伝わる。




