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集合的無意識が私達に与える影響について  作者: 10MA
夢での詭謀

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072 裏話〜凛と透〜

タマキを誘き出す作戦を聞いたその時、凛と真壁は揃って『自分の出番が来た』と直感した。

大袈裟な言い方かも知れないが、これはある種の情報戦だ。

相馬が自分を頼ってきてくれている。これに応えない訳にはいかないし、待ち望んでいたとも言える。


相馬に用意して欲しいと言われたのは、過去に消されたニュース。そしてタケさんこと新井武臣の情報。これを週刊誌や、SNSでゴシップを扱うインフルエンサーに渡す。

一度消したはずの火を、改めてつけられるのは相当なストレスだろう。

そして2度目の火は、1度目のそれを大きく上回る。しつこくて、なかなか消火できないはず。

と、いう(てい)で準備を進めていく。

本当に炎上させても良いが、あくまで本命はタマキを誘い出す事にある。

あえてタマキに勘付かせる。

相手は狡猾だ。生半可な情報では相手にされないだろう。

情報の精度は高くなくてはならない。

言葉にすると簡単に聞こえるが、全くの一般人である二人が、消えた情報を探り、まとめるという難易度は非常に高い。


「透くんは会社に潜り込むんだよね?」

「まずはそうだね。あまり期待はできないけど。いくらネットを探っても何も出てこないなら、足を動かすしか無いかなって」

「ですよねぇ。私はそういうのに詳しい親戚を頼ってみる。あと大学の友達とか」


気合いだけはあるが、できる事があまりに少ない。

いつもスマホを持ち、欲しい情報はネットからすぐに手に入る。

逆にそのネットが頼りにならないと、こんなにも雲を掴むような話になるものか。


「助かるのは翔太さんに派手に動いても大丈夫って言われていることだよね」

「そうですね。最後の日以外は、身を隠す必要も無いってたから、ガンガン聞き込みできるはず!」


凛は力強く腕に力こぶをつくるような格好で気合いを入れる。もちろんその細い腕に力こぶは無いが、彼女の覚悟は見て取れた。


「僕は新参だけど、みんなから恩は誰よりも受けている。覚悟を決めるよ」


二人で固く握手を交わす。勢いでやってしまったものの、真壁は少し照れた。


それから二人はたまの情報交換を挟みつつ、それぞれ必死で情報をかき集めた。

ほとんど知らないような人にも頭を下げて、話を聞き、過去のニュースを読み漁り、必要とあらば図書館や古本屋にも行った。

すでにタマキに狙われているのではないかと不安になっても、その歩みは止まらない。

学校終わり、仕事終わりに情報を求めて歩く。


得た情報は少しずつ真壁のパソコンへ貯まっていく。

凛は学校のレポートのように情報をまとめていく。

その行為そのものに意味があった。


おそらくこのパソコンは監視されている。

もちろん監視しているのはタマキ。

西岡オフィスのパソコンを、わざわざ残していく意味はないはずなのだ。

自分のデスクは不自然なほど、綺麗に痕跡を消していたというのに、複数あるパソコンはご丁寧に初期化をして残していった。


それを逆手に取る。


日に日に自分が携わった事件、人物のデータが増えていく。

そしてそれをまとめたレポート。

誰かに見せる前提で作られたそれを、誰に見せるというのだろうか。

疑念は尽きないはずだ。


かくしてレポートは二人の手によって完成された。

不自然に消えたニュースの数々。

新井武臣の死と、それを取り巻く会社の不自然な動き。この街で度々起きている不審死。どれもこれも共通する『原因不明の死』

点と点を線で結ぶ事によって、浮かび上がる作為的な現象。

これが注目されないわけが無いという会心の出来になった。

これはいくら口止めしたところで、SNSに放り込んでしまえば広がる事は間違いない。

レポートが完成した瞬間、凛と真壁は思わずハイタッチをした。


それをファイルにまとめてデスクの引き出しに入れておく。

出版社の人間の名刺を添えて。

その名刺は、凛が映画のロケで渡されたものだった。

モデルとしてスカウトするために渡した物を、まさかこんな使い方をされるとは思わなかっただろう。

それでも、利用させてもらう。

名刺には意味深に翌日の日にちと、時間を書いておく。

全ての準備が整った。

結果は明日、名刺に書かれた出版社に行けば分かる。


「これで少しは役に立てたかな」

「ばっちりでしょ。翔太さんには悪いけど、あの人がこれをできたかと言うと無理だと思うな」

「わ、透くんひどいな。玲奈さんに報告しなきゃ」

「え、なんで玲奈さんの方なの!?やめてよ!」

「あはは、考えとくね」


そうして凛と真壁はデスクに祈るように手を合わせて、部屋を後にした。




そしてその夜。集合的無意識の層、夢の世界で誰もいない西岡のオフィスに影が揺らぎ、張本が姿を現す。

かつて自分もいた部屋を懐かしむように見渡すが、目的は思い出に浸るためでは無い。

すぐに真壁のデスクの引き出しを開け、中を物色する。

目的のものでは無いものは、雑に床に投げ捨てる。どうせ現実には反映されないのだ、コソコソするだけ馬鹿らしい。

そうして目的の物を見つけて、手に取る。

ファイルをパラパラと捲り、中身が予想通りである事を確認する。

その途中で小さな紙切れが床に落ちる。

舌打ちをしてそれを拾い上げた。


「これは・・・タマキさんに報告だな」


その名刺に書かれた出版社と日時を記憶すると、部屋を後にした。

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