未知の解析
外履きのまま入って大丈夫だよ、と促され、恐る恐る学園に足を踏み入れる。俊輔はまたもや驚いた。
玄関、ロッカー、廊下、掲示板、少しだけ見えた階段。この学園の内装は、地球で彼が通っていた学校とほとんど変わらなかった。技術や発展が、と記された冊子を読んだあとだったこともあり、てっきり想像を絶するようなテクノロジーが使用されているとか、サイバネティクス、ハイファンタジーな世界を想像していた俊輔は、少しだけ拍子抜けした。
「ねぇねぇ、期待はずれだった?それとも驚いた?やっぱり安心した?」
「その中なら、安心した、かな」
「でしょでしょ!この学園はなんと、地球の学校をモデルにして作られてるんだよ!」
「モデル?どうして?」
「みんな、慣れ親しんだ場所の方が落ち着くし、リラックスできるからね」
まあ、確かに全く知らない場所よりかは多少なりとも知っている場所の方が安心できるし落ち着くかも。
さて、まずははじめに精密検査が必要だということで、検査室とやらに案内された。道中、廊下から見えた何室かの教室も俊輔が知っているそれだった。窓がありカーテンがあり、教壇があり、電子黒板があり、机と椅子が規則正しく並んでおり、教室の後ろ側には私物を入れるロッカーがある。なぜか酷く懐かしい。…ただ、人の気配はなかった。
検査後に学園や施設について詳細を教える、と少年は言った。
「そんなに時間かかんないと思うし、そのへんブラついて待ってるね」
「う、は、はい」
「もー、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。行ってらっしゃい、ふぁいおー」
「ふぁい、おー」
少年に軽く背を押されて、意を決して目の前にある保健室のような白塗りの扉に手をかける。が、俊輔が扉を開く前に扉の方がガラッと音を立てて開いた。
「え」
「やあいらっしゃい!遠路はるばる地球からよく来たわね!じゃあ早速体調その他諸々に異常がないか調べるから、その空いてるベッドに横になって!早く早く!」
「は、はい!」
「ワタシは準備してくるから、ちょい待ってて!秒でくるから!」
───白髪に紫がかかったような不思議な髪色をした、眼鏡をかけた女性とも男性ともとれる綺麗な保健医らしき人は、早口で捲し立てると足速にその場を離れた。言われた通りにベッドに横になり、ふう、と一息つき目を閉じる。これからどんな検査をするんだろう…痛くないといいな…うわ、緊張して変な汗出てきた……というか何者なんだろうあの人。
視線を感じて目を開くとすぐ横にさっきの保健医がいた。
「うわあああ??!」
「ヤダ!そんなに驚かなくても良いじゃない!まぁいいわ、じゃ採血するから腕出して!痛くても我慢してね、えい!」
「い、痛い!!」
「じゃ次は能力区分の調査ね、寝たままでいいからこれ飲んでくれる?はい飲ませました、数値は……ヤダ、超高い!これはトゥーフェスで間違いないわ!」
「ごっふげほ、げほっ!」
「むせてるところ悪いんだけど、お次はこれよ。何の能力か調べる液体。これを打つことで最初は痛みが出るけど、すぐに能力が一時的に発現するの。さ、注射よ!えい!」
「本気で痛い!!泣きそうなんですけど!?」
「ごめんなさい、ちょっと我慢してね……どう?何か込み上げてこない?!ぶわーーーって!!」
「え、え?!…あっ」
な、何だこのめちゃくちゃな人は!?
抗議する隙さえあたえられず、あわれ俊輔は血を抜かれ、何かよくわからないものを飲まされ、緑色の液体が入った注射を勢いよく打たれた。しかし謎の注射を打たれてから確かに、体の奥底から力が溢れてくるような不思議な感覚があった。
これを、放出したい。これを、使いたい。これを使って、何かをしたい。
「…ふふふ。いいのよ、我慢しなくて」
その囁きは魔性の声。俊輔は自分でもわからないうちに能力と言われるものを、解放していた。
───瞬間、あたりが光によって激しく照らされる。幾つもの激しい轟音を伴った、目が眩むような閃光。少し触れただけで大怪我をしかねない、攻撃性を孕んだ、破壊の自然現象。
それはまさに、『雷』そのものであった。
「……うん、視認完了。一つ目は『雷』で間違いないわね」
「あ、せ、先生?これ、は」
「おっとお、無理にコントロールしようとしてはだめよ。力を抜いて。ほら、まだあるでしょ?もう一つの力が」




