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PASS!  作者: 寛世
第1章
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未知との出会い



 ───程なくして、俊輔を乗せたシャトルは第三の地球と呼ばれている星へ到着した。重力場に乗ってぐるぐると惑星軌道上を周回し、瞬く間に大気圏を抜けて、ゆっくりゆっくり降下する。やがて地上に小さな滑走路らしきものが見えてきた。がたん、と僅かに車体が揺れる。…どうやら着陸したらしい。


 俊輔が窓の外をよく確認しようとした身を乗り出した時、タイミングが良いのか悪いのか、添乗員らしき者がやってきて荷物ごと外へ降ろされた。その人は帽子を恭しく取ると会釈した。「じゃあね少年。また会えるといいね」


 あまりにも突然のことに、俊輔はただ呆然と立ち尽くして見送ることしか出来なかった。シャトルが自動(オート)で何処かへ格納されていく。添乗員の姿はもうなかった。煙のように、ふっと消えてしまった。


(………ここから、どうしろと…?)


 ここで少し、彼の身の上話をしておこう。彼、佐原井俊輔は、とある実験の実験体であった。彼は十六年間そうだと知らず生きてきた。

 そう、体から電気を暴発させるまでは。


 「覚醒したのだよ」

 授業中に突然現れた現れた、黒ずくめの男性は言う。苦い顔をする教師と、不思議そうに見ている友人やクラスメイトたち。彼は周りが引き止める前に、恐ろしい速さで俊輔を車に乗せ、俊輔の家まで連れ帰った。いつも通り学校へ行き、いつも通りの授業中に、()()()()()()()()。それが実験体として覚醒した証だと、男性は繰り返し言う。

 無機質に、悲しげに、しかしどこか確信を持ったような瞳で。


『こんにちは…残念ながらあなた方の息子さんは覚醒してしまいました。これより機械兵に見つかる前に、第三の地球へ護送します』

『そ、そんな………いえ、「私たちの罪」ですね』

『不思議なもので……いつか、こうなる予感はしていました。……俊輔、最後に渡したいものがある』

『最、最後ってなんだよ…!?というか機械兵って何?!父さん、母さ』

『おっと、まだ力が不安定なのだから近寄ってはいけないよ。…ほら、今のうちに生活に必要な、最低限の荷物をまとめてくるんだ』


 男性は優しく俊輔にそう言うと、両親に頭を下げて何かを話していた。母はその場に泣き崩れた。俊輔は訳もわからないまま、けれど、心のどこかで両親とはもう二度と会えない気がして、大粒の涙をぼろぼろと溢しながら、必要最低限の荷物をボストンバッグにつめた。父は母を抱きしめた。そして愛息子に、涙を流しながら一冊の本を渡す。


『これはきっと、お前の役に立つ。 …ごめんな俊輔、たとえ実験体だろうとなんだろうと、お前は俺たちの自慢の息子だよ、これかもずっとそうだ。愛してる』

『…父さん、×××、×××××…』

(あれ、泣きながら抱きしめてくれた父さんに、俺はなんて返したんだっけ?)


 ───その後、男性は俊輔を丸くて小さなスペースシャトルに押し込むとどこかへ消えた。添乗員に座る様促され地球から脱出し、束の間の宇宙遊泳をして、見知らぬ地に放り出されたのが今。いきなり途方に暮れてしまった。とにかくまずは状況を整理すべきだと俊輔は周りを見渡してみる。

 今日からは、一人でなんとかしなくてはならないから。


(ここは……地球の、エリアに似てる?ということは、居住区があるかもしれない。ひとまず人を探そう)


 周囲に広がる光景は、彼が住んでいたエリアとほぼ変わらなかった。少し離れたところに校舎のようなものがある。かなり遠くに、ショッピングモールらしきものも見える。てっきり怪しい研究所にでも連れていかれるものだと思っていた俊輔は、少し肩から力が抜けた。


(……地球とあまり、変わらないのかな?でも居住区らしきものが見当たらない…滑走路?はあるけど。人もいない…)


 校舎にショッピングモール、ビルのような建物。まるで、(エリア)のようだと思った。

 景色も俊輔が知っているものだった。さっきまでの暗い銀河とは違う、青い空。白い雲、優しいそよ風、生い茂る自然。目を閉じると感じる、暖かい日差し。そして、普通にできる呼吸。


(どこでも空は綺麗なんだなあ……あ、いや今はそれよりどこに向かえば…)


 再び足を止めた俊輔の背後に、音もなく忍び寄る影があった。


「見ーーーーつけた!こんにちはー、噂の転校生って君であってるよね?!」

「う、うわっ!?」

「おっと、驚かせちゃってごめんねー」


 俊輔は突然話しかけられ、驚きつつも後ろを振り返る。

 そこには鍔のある帽子を後ろ向きに被り、ヘッドフォンを首に掛け、ブカブカのブレザーを腕まくりし、空中にぶらぶらと足をばたつかせて浮かぶ少年の姿があった。


 空中に浮かぶ、少年の姿が。


「え?え?う、浮い…」

「あーわかるわかる!わかるよ、やっぱりそこ気になるよねえ!みんな同じ反応するから大丈夫。それに説明はあとでキチンとするから安心して」

「あ、わ、わかった…?」


 少年はニコニコ笑って空中からとん、と軽やかに降りた。風が微かに凪ぐ。見た目的に、小学生か中学生くらいか…?うーん、説明してくれるなら良い、のか?そもそもこの子は、迷子?と俊輔が混乱しているうちに、先に少年の方が口を開く。


「そんなことより!君、地球から来たんでしょ?!教えてよ!今の地球の文化とか生活とか文明とか!ボク、地球から人が来るのをずっーーーーと楽しみに待ってたんだあ!いやあ嬉しいなあ君が来てくれて!本当にありがとう!」

「ちょ、ちょっと近い近い!落ち着いて少年!そんなに一度にたくさん聞かれても答えらないません!あと君は一体誰?!お名前は?!迷子?!」

「あっ名乗り忘れてた!じゃまずは自己紹介からね」


 質問を囃し立てる少年になんだこいつと根負けしつつ、なんとか落ち着かせようと俊輔は慌てる。名前を聞かれた少年は一瞬ポカンとしたあと、何か思い当たったかのように笑顔で名乗った。


「ボクは湖礼薫!あそこにみえる学園では古株の生徒らしいよ、よろしくねシュンスケ」



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