授業終了
───全ての授業を終える頃には、すっかり日が傾いていた。
「……よし、授業終了だ」
『授業終了受託。お疲れ様でした。』
機械音を立ててホワイトボードから文字が消える。溶けるように机の上に伏した俊輔を見て、元気づけようとしたのか海野少年が軽く背中をこづく。結構痛かった。
「痛いし疲れた……あー…一生分くらい頭使った気がする」
「大袈裟な…あと一週間はこのコースなのに、今からそんなんで大丈夫かよ」
「あああ、そうだった……もう心折れそう」
「…まあこれから慣れていけばいいさ、まだ初日だからな。ああ、メンタルリセットの仕方も教えないとな……よし、街行くぞ」
「はい…」
「ほら、佐原井、しっかり立てって」
「はい……」
「………ったく」
疲れ果てて「はい」しか言えなかった。
校舎から出るまでの記憶が全くないが、おそらく海野少年がどうにかして連れてきてくれたのだろう。気がつけば俊輔は夕暮れの街の中にいた。
地球の通常区画、或いは街とそっくりな街に。
案内された場所はショッピングモールだった。ガラス張りで横長な三階建ての建物の中、奥の方にいくつものブティックが所狭しと並んでいる。遠くにフードコートらしき文字も見えた。アパレルショップや普通の雑貨屋らしきものもある。違うところと言えば、人がそんなにおらず閑散としていて、店員の姿もあまり見えない、といったところだろうか。
入ってすぐ目の前にある案内掲示板には、【武具屋】【アイテムストア】【カウンセリングルーム】【シュミレーションルーム】等、全く耳慣れない店が並んでいた。
「なんだこれ、武具屋?」
「この店は主に戦闘服や装備を売ってる」
「ふうん…?」
「訓練に使うものとか必要なものが売ってる場所って覚えて」
「わ、わかった」
「地球にはないだろうし、物珍しいだろ?」
「うん、ショッピングモールで武具屋なんて初めて見た。あ、文房具屋ならあったけど」
「そっちの方がレアな気だろ。ここには一件ならあったかなかったか」
「えすくなっ」
「文字書くことなんてねぇし…ああ、文明先取りしててワリィ」
「近未来ジョークっすか…」
「なんか元気になってきたじゃん」
「全然元気ないです」
確かに、第三の地球が地球よりはるかに文明というか技術というか、何かが先に進んでいるのは嫌というほど感じている。こんな、『能力』と言われている…超能力?みたいなものも使えるし。地球では使える人いなかったよな……地球では機械兵がいるから秘匿情報なんだっけ…あれ、わかんなくなってきたな。明日復習しよう。
「ここすげー広いし、見て回るだけでも時間かかるからそのうち誰かと遊びに来るといいよ。別に俺でもいいけど。普通のアパレルショップもあるし、なんならゲーセンもある」
「スゴイ、スゴーイ」
「目がヤバそうだし目的のカウンセリングルームに行くか。案内図だと…東棟のここな」
「ふぁい」
「──あ、まてよ、この時間はあいついるかも……今の佐原井にはキツイか?……遅かれ早かれ会うことにはなるし……うーん」
「…あの、海野くん?」
足を止め、腕を組み立ち止まった海野少年を見て、俊輔は少しだけ嫌な予感がした。数秒考え込んだ後、彼は笑顔で言った。
「何事も経験、だよな!」
「いやなにが起こるのか教えてくれよ!」




