: 二.五限目②
「……や、やった!できた!」
「おおー、やるじゃん。今のはかなり良いな」
『お見事。素晴らしいですよ。』
俊輔はついガッツポーズを取ってしまうほどに舞い上がった。後ろで見守っていた海野少年とAIの賛辞に、更に嬉しくなった。───よし、なんとかやれそうだ!コツも掴んだ気がする!…気がするだけだけど!
今の感覚を忘れないうちにもう一回、と手を再び前に向けたところで、自身の足が震えていることに気づく。立っていることさえままならなくなり、ついには床に片膝をついてしまった。
「っはあ…あ、あれ、なんか力が、入らない」
『あ、そのまま聞いて下さい。佐原井くんはまだ能力の扱いに慣れていませんから、疲れるのは当然。数分は力が入らないと思いますので、そのままで。説明が抜けていました、申し訳ない。』
「慣れるまで能力を使う度にその疲労感に苛まれる。が、まァ、慣れだ慣れ」
「慣れ……」
……確かに、普段やらないことをやるとその分疲れるもんな。
妙に納得しつつもふいになんとなく消し炭にした壁の方を見てしまい、俊輔は青くなった。
「か、壁!壁壊しちゃいました!すみません…!」
「いや何のための結界だよ。よく見てみ、」
「…?」
海野少年に促されて、目を凝らして壁の方を見る。
なんと言うことだろう。みるみるうちに壁が元に戻ってゆくではないか。まるで時が巻き戻るかのように、少しずつ破壊されたはずの壁が元通りになっていく。その光景に俊輔は開いた口が塞がらなくなった。
「…夢でも、見てるのかな」
「よし、そろそろ動けるだろ?次は俺に向かって放て。おい早くしろ、休憩は終わりだ」
「こっちには鬼が見える…」
「ああ?」
「ひぃ、すす、すみません!」
「…俺も悪いんだけど、お前、すぐ謝るのやめろ。同級生だろ」
「は、はい」
「あとハンパな敬語もいらねえ」
「それは…うん、頑張る」
「とりあえず、やるぞ」
肩を回しながらやる気満々の同級生を見て俊輔は遠い目をした。この同室者、思っていたよりスパルタなのでは?と。
「俺は物理防御結界と防電結界を俺と俺の半径一メートルに張る」
「え?なんて??」
「ってなわけで、やれ」
「そ、そうは言っても、いきなり人に向けるのはちょっと抵抗が」
『ふふ、安心して下さい。そこの海野くんは防御のエキスパート。遠慮なんていりませんよ、ぶっぱなせー!』
「そういうことなら…」
「なんか悪意ねえかコラ」
海野くんは、防御のエキスパート。その言葉を信じ、腕を前に突き出し手に力を込める。
「───堕ちろ!」




