: 二.五限目
『十分経過、ニ限目の時間になりました。せっかくですのでディベート授業を飛ばし、このまま佐原井くんが自身の能力を正確にコントロールできるようにするための、実戦を交えての授業に変更します。』
「マジか、やったぜ!」
「海野くん、なんか楽しそう…」
「楽しいね、実戦の方がわかりやすいから。知識がいくらあっても、本番でやれるかは別だし」
「な、なるほど…?」
「ってなわけで、本気できていい。制服は…きちんと着てるな。おい、教室全体でいいか?」
『構いません。今回は『盾』の能力持ちの海野くんがいるので訓練所への移動は無し。この1E教室内全てが実践フィールドです。一応こちらでも用意しますが、防御結界をお願いします。』
「おう」
二人…いや、一人と一機?で話がどんどん進んでいく。
そして、瞬く間にさきほどまで教室に在った机や椅子が、ヴンッと小さな電子音を伴い消えてしまった。まるで、初めから存在していなかったかのように。次にふわりと何かに包まれているような感覚。横に立っている海野少年が拳を握り、開いていた。さっきと違うことといえば、立てなくなることはなく、何かに守られているような感じがしたこと。俊輔はその結界内で、安心感すら覚えた。
(防塵、防電じゃないだけでこんなに変わるんだ……そうか、結界にも種類があるんだ)
『ちなみに、匿名参加者さんは見学するそうです。』
「そんなこったろうと思ったよクソが!」
(そういえばもう一人いるんだった!)
そんな俊輔の状態なぞ知らないAIは淡々と続けた。心の準備が全く整っていなかった俊輔は少し泣きそうになった。
『では、始めます。佐原井くん、海野くんにあるいはこの空間のどこかへ『雷』の能力を使ってみて下さい。』
「え、えっと、じゃあ……とりあえず、壁に」
やり方は間近でみた、方法も簡単にとはいえ、教えてもらった。大丈夫、できる。一つ、深く息を吸って、手を前に出した。
(このまま、力を込める…!)
…───パリッと。小さな乾いた音がした。
『……?』
「………………あ、あー、静電気?みたいなのはこっちにきた」
『方向、違いますね。』
「しかも、静電気…?!も、もう一回!」
「お、今度は光った。お前の体が」
『うーん、神々しい。』
「え、ええ?!え?!なぜ?!なら、今度は左手に集中して…!」
『雷というよりは…ただの光ですね。あまり力まないでください、リラックスリラックス。』
「おうその発光引っ込めろよ、笑うだろ」
「ぐうう…!」
で、出ない…!あの時の雷、天から突き抜けるような雷が!海野くんのように、自由に自分の力を制御できていない。…なんとか、体の発光は止めることができたけど。
(ど、どうすれば…!)
……焦る。焦ると余計に思うようにいかなくて、もっと焦ってしまう。手に汗が滲んだ。背中を変な汗が伝う。
おそらく相当余裕のない顔をしたのだろう、AIが静かに語りかけてきた。
『思い出して下さい。検査時、貴方は何と思いましたか?』
「え、検査時…?」
『あの時。あなたがここにきて間もない時。あの時の貴方には一瞬とは言え、“欲”があったはず。』
「欲……」
『貴方はどうしたいですか?佐原井 俊輔。』
“───これを、放出したい。これを、使いたい。これを使って、何かをしたい。”
AIの言葉で、あの時思ったこと、感じたことが脳裏に蘇る。
「そうだ、俺はあの時……これを解き放ちたい、これで壊したい、これを使ってみたいって、そう思ったんだ」
「その言葉が原動力か。じゃ、一回早速やってみろ」
「う、うん……!俺の能力なら、俺に従え!」
目を閉じた。
足を少しだけ開いた。
イメージする。目の前の壁を、粉砕するイメージを。
深呼吸をして呼吸を整えて。
目を開いて、手を壁に向かい翳した。
「壊れろ!!」
───それは激しい音を伴った、一瞬の光。攻撃性を孕んだ、破壊の自然現象。まさに天からの裁き。
ドオオオオン、と大きな音を立てて、1Eの壁の一部は破壊されて消し炭となった。




