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PASS!  作者: 寛世
第1章
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  : 二.五限目



『十分経過、ニ限目の時間になりました。せっかくですのでディベート授業を飛ばし、このまま佐原井くんが自身の能力を正確にコントロールできるようにするための、実戦を交えての授業に変更します。』

「マジか、やったぜ!」

「海野くん、なんか楽しそう…」

「楽しいね、実戦の方がわかりやすいから。知識がいくらあっても、本番でやれるかは別だし」

「な、なるほど…?」

「ってなわけで、本気できていい。制服は…きちんと着てるな。おい、教室全体でいいか?」

『構いません。今回は『盾』の能力持ちの海野くんがいるので訓練所への移動は無し。この1E教室内全てが実践フィールドです。一応こちらでも用意しますが、防御結界をお願いします。』

「おう」


 二人…いや、一人と一機?で話がどんどん進んでいく。

 そして、瞬く間にさきほどまで教室に在った机や椅子が、ヴンッと小さな電子音を伴い消えてしまった。まるで、初めから存在していなかったかのように。次にふわりと何かに包まれているような感覚。横に立っている海野少年が拳を握り、開いていた。さっきと違うことといえば、立てなくなることはなく、何かに守られているような感じがしたこと。俊輔はその結界内で、安心感すら覚えた。


(防塵、防電じゃないだけでこんなに変わるんだ……そうか、結界にも種類があるんだ)

『ちなみに、匿名参加者さんは見学するそうです。』

「そんなこったろうと思ったよクソが!」

(そういえばもう一人いるんだった!)


 そんな俊輔の状態なぞ知らないAIは淡々と続けた。心の準備が全く整っていなかった俊輔は少し泣きそうになった。


『では、始めます。佐原井くん、海野くんにあるいはこの空間のどこかへ『雷』の能力(アビリティ)を使ってみて下さい。』

「え、えっと、じゃあ……とりあえず、壁に」


 やり方は間近でみた、方法も簡単にとはいえ、教えてもらった。大丈夫、できる。一つ、深く息を吸って、手を前に出した。


(このまま、力を込める…!)


 …───パリッと。小さな乾いた音がした。


『……?』

「………………あ、あー、静電気?みたいなのはこっちにきた」

『方向、違いますね。』

「しかも、静電気…?!も、もう一回!」

「お、今度は光った。お前の体が」

『うーん、神々しい。』

「え、ええ?!え?!なぜ?!なら、今度は左手に集中して…!」

『雷というよりは…ただの光ですね。あまり力まないでください、リラックスリラックス。』

「おうその発光引っ込めろよ、笑うだろ」

「ぐうう…!」


 で、出ない…!あの時の雷、天から突き抜けるような(いかずち)が!海野くんのように、自由に自分の力を制御できていない。…なんとか、体の発光は止めることができたけど。


(ど、どうすれば…!)


 ……焦る。焦ると余計に思うようにいかなくて、もっと焦ってしまう。手に汗が滲んだ。背中を変な汗が伝う。

 おそらく相当余裕のない顔をしたのだろう、AIが静かに語りかけてきた。


『思い出して下さい。検査時、貴方は何と思いましたか?』

「え、検査時…?」

『あの時。あなたがここにきて間もない時。あの時の貴方には一瞬とは言え、“欲”があったはず。』

「欲……」

『貴方はどうしたいですか?佐原井 俊輔。』


“───これを、放出したい。これを、使いたい。これを使って、何かをしたい。”


 AIの言葉で、あの時思ったこと、感じたことが脳裏に蘇る。


「そうだ、俺はあの時……これを解き放ちたい、これで壊したい、これを使ってみたいって、そう思ったんだ」

「その言葉が原動力か。じゃ、一回早速やってみろ」

「う、うん……!俺の能力(アビリティ)なら、俺に従え!」


 目を閉じた。

 足を少しだけ開いた。

 イメージする。目の前の壁を、粉砕するイメージを。

 深呼吸をして呼吸を整えて。

 目を開いて、手を壁に向かい翳した。

 

「壊れろ!!」


 ───それは激しい音を伴った、一瞬の光。攻撃性を孕んだ、破壊の自然現象。まさに天からの裁き。  

 ドオオオオン、と大きな音を立てて、1Eの壁の一部は破壊されて消し炭となった。


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