: 二限目
『それでは「能力の扱い方について」授業を始めます。』
ゴクリと息を呑む。AIはただただ淡々と言葉を紡ぐ。人間ではない…どこか機械らしいそれに、背中に水滴を垂らされたような冷たい緊張感が走った。
『佐原井 俊…すみませんいちいち長いので佐原井くんと呼ばせて頂きます。なかよぴ』
「ん、え?!は、はい?」
「なかよぴってなんだ」
『仲良しということです。』
「あーもう、解説いらんから早く進めてくれ」
と、思っていたらいきなりころっとフランクになって俊輔は困惑した。なんなんだ一体。
というよりあれは、AIの意思なのか?というか意志を持つAIってなんなんだ。本当に大丈夫なのだろうか。
『佐原井くんは自身の能力を扱えますか?』
「い、いえ、全く使えません」
『わかりました。ではまずは、見てもらいます。海野 茂…うーん、海野くんで行きますか。私が合図をしたら、教室内に簡易な防塵、防電結界を張って下さい。』
「了解」
『さて、良いですか、佐原井くん。いまから海野くんが『盾』の能力をゆっくり使用しますので、視線や体の動かした方、力の込め方をよく見ていて下さい。』
「は、はい!」
『良い返事ですね。では開始。』
「了解。シールド展開、開始する」
───機械音声に合わせて海野少年が右手を胸元へと持っていき、ゆっくりと何かを溜めるように拳を強く握りしめた。その拳を前へ突き出し、ゆっくり開く。まるで何かを解き放つかのように。そしてその鋭い眼差しから、強い意志を感じとった。残念ながらその意志までは汲み取ることはできなかったが。海野少年の瞳が一瞬だけ、気のせいか赤くなったように見えた。
その直後、教室内に変化が起きる。薄いガラスのような、シャボン玉のような、ギリギリ可視化できるくらいの透明な結界が教室内を覆った。これが、結界内?と、周囲を確認しようとしたその時、俊輔は何かに脳を激しく揺らされているような前後感覚に陥った。椅子からずり落ちる。
「うわ、なに…っ?!座ってられなっ…きもちわる…い!」
「これが俺の『盾』の能力。本来の使い方じゃねーから、よくわかんねーと思うけど」
「いや、というか立てないんですけど…?!こんな状況で説明されてもわからないんですけど?」
「まあ『雷』と『砂』の能力使いのお前を、俺が防塵、防電作用のある結界内に閉じ込めてるわけだから、辛いし苦しいだろうし立てないだろうなあ」
「た、楽しそうでむかつく……っ、!」
『さて、そろそろ結界を解いて下さい。』
「了解」
海野少年が再び手をかざすと、嘘のようにあっという間に楽になった。脳以外は。
(まだぐわんがわんしてる……基本的な使い方っぽいのはわかったけど、なんで俺はこんなにダメージ?を受けたんだろう。俺の能力特化の結界っぽかったし、それか…?)
『さて、これで基本的な使い方は学びました。体に力を込めて放つだけ、ね?簡単でしょ?』
「で、できるかーーーーー!!」
『バイタル、メンタルのダメージを確認。10分間の休憩をします。また、これにて扱い方の授業は修了です。』
ピーという音が聞こえ、画面の文字が消えた。
ご丁寧に『お休みなさい♡』と一瞬残してから。
「じ、自由か!!」
「こんなもんだ、ここのAIどもは」
俊輔は吠えた。海野少年は笑っていた。




