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PASS!  作者: 寛世
第1章
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未知への理解②




「どこにしよーかなー」

「…なにを?」

「説明する場所!」


 白く長い廊下を、少年は鼻歌を口ずさみながらご機嫌に足を動かす。その足取りは風のように軽やかだ。

 検査室を出て向かって左側、先ほどやってきた方向とは真逆に進み、ひたすら真っ直ぐに廊下を歩く。人の気配はなく、辺りは恐ろしいほどに静まり返っている。BGMは湖礼少年の鼻歌のみ。俊輔は少々不気味に思いながらも、道中に二つほど二階へ上がる階段、六部屋くらい無人の教室があることを視認した。さらに何部屋か通りすぎた、その時。


「ん、ここにしよーっと」


 少年がピタリと足を止め、プレートに「空き部屋」と書いてある教室の扉を開けた。少年が部屋に入るのに続き、俊輔も中へと足を踏み入れ……驚いた。そこにあったのは───夕日が教室に差し込む、放課後の教室。見慣れたはずの日常の風景。ついさっきまで自分がいた場所と、ほとんど同じ場所。思わず、「綺麗だな」と小さく声がこぼれた。少年にはそれが聞こえていたらしい。


「わかるーーーー!!綺麗だよねえ、ここから見える景色、全部!!ほら見て、夕焼けの窓から見える、優しく微睡む太陽を!あっちには真白い月が空から顔を覗かせて、夜の時間がやってくることを教えてくれる!ねえねえ、地球と変わらないでしょ?!太陽は平等にボクらも照らしてくれるし、月は平等にボクらを隠してくれる…なんだか嬉しいよね!素敵だと思う!」

「そ、そうだな……地球と同じ、だと思う。というか、地球と同じ見え方、なんだ」

「それはこの第三の地球がね、月とは近いけど地球とは月の真逆に位置してるから見えるんだよ」

「……………んん?それはつまり」

「えっと、その辺の話は長くなっちゃうので、おいおい説明しまーす!」


 俊輔の言葉を遮り、少年は教壇の上に腰をかけた。何か今、誤魔化されたような気がする…。少年は足をぶらつかせながら、再び窓の向こうを見る。少年の周りの雰囲気が変わった気がした。


「…?」

「さて、世界史と生物化学、どっちがいい?」
















「……………生物化学で」

「おっけー!えー、ではシュンスケくん、テキトーな席にお座りください!」


 …体感で、五分くらい経っただろうか。散々悩み、結局彼は生物化学を選択した。世界史も気になったが、数時間前にシャトルの中で読んだ少冊子に大まかな流れが書いてあったことを思い出し、後でも良いと思ったからだ。

 今はまず自分がどういう状態で、これからどうなっていくのか、それが知りたい。知らなくてはならない。


「んー…まずは簡単に。はい、ボクらは人間じゃなくなりました、なぜでしょう?」

「………機械に対抗するために、生まれてくる人間に、特殊な施術をした…それで、覚醒?したから?」

「だいたい正解!正確には地球生まれの一部、月、第三の地球にいる西暦で2910年以降生まれの人間は()()()()()()()()()()()()()()()。でも、覚醒できる者はそのうち一割弱の十代までの子ども、しかも男性のみと統計で出てるんだ。現段階では、だけどね」

(…は?!全員?!俺のじいちゃん世代から?!でも、地球は機械に支配されてるんじゃ…?!いや、俺もさっき知ったんだけど)


「地球や月で覚醒した者は、速やかに現地の工作員によって、密やかに『第三の地球』に送られる。シュンスケも会ったよね、黒い服の人!あの人たちは仲間。送る時は機械たちに絶対にバレないように、特殊電磁波や重力制限付きの高機能ステルスシャトル…とかを使用して、徹底的に対策してる。『人間に超常的な力を与え兵器にするという能力施術法』を、敵に漏らすわけにはいかないでしょ?これは、切り札なんだから」


「さて、覚醒した者はまず、この学園でそれぞれの能力を磨くんだ。能力は覚醒して検査を受けるまで、詳細はわからない。あ、ちなみに人よっては特別任務が入ったりするよ。一例だと……地球で行われてる、機械による人間排除を秘密裏に妨害することとかね。これは先の話だから軽く流してくれてオッケー!えっと、シュンスケは覚醒したてだから、当面はボクたちと一緒にこの学園で普通に勉学に励みつつ、自分の能力をコントロール、強化しまーす!」


「あと、これも大事なこと。覚醒したら、生殖能力がなくなるよ。人間のもつDNA細胞が変化することで、ボクらは覚醒に至るからなんだ。ボクたちは子供は作れない。覚醒者は基本男性が九割。覚醒する時に細胞変化が起きるんだけど、男性は染色体XYのYに異常が起きて生殖能力を失う。女性は染色体XXだとそもそも変化しないから、ほぼ覚醒しないんだって。Yに影響を与えて生殖能力をなくす代わりに超常的な能力を手に入れる…ってことだね。そして能力は人によっては副作用があるし、大人に近づくにつれて弱くなることもある。あと若いほど覚醒しやすいらしいよ。

能力が弱くなったら前線からは退くことになるけど、この学園都市の施設で働けるから安心して★…まあ、戦いが終わるまで、生活は第三の地球がメインになっちゃうんだけどさ。お給料はいいらしいよ!」


「さて、ここまでで質問はある?」

「ぜんっぜん頭に入ってこないんですけど!!!」


 俊輔は吠えた。


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