未知への理解①
──こうして、俊輔がぽいっと検査室(のちに少年に聞いたところ、保健室と兼用らしい)から追い出されると、どこからともなく湖礼少年が「やっほー!終わった?」と現れた。…気配が全くなかった。え、君、今どこから現れたの?などの疑問がいささか残るが、そんなことは些事。とにかく今起きた出来事を聞いて欲しかった俊輔は、少年に口早に話した。それはもう必死に。
少年は腹を抱えてその場で大笑いした。
「あっははは!わかるわかるー!先生ほんと容赦ないよねえ!大丈夫、みんなあんな感じでやられてるから安心して!シュンスケおつ、あはは!」
「正直やばい人なのかと思ったし、めっちゃ怖かった」
「よーしよし、あの検査を頑張ったシュンスケくんには、お兄ちゃんが飴ちゃんをあげようねえ、はい」
「あ、ありがとう」
「どーいたしまして☆」
───お兄ちゃんというより、どっちかというと弟って感じだけどなあ…と言いかけて、止めた。見た目が小中学生に見えても、ここでは先輩なのだ、彼は。知識も経験も、自分よりずっと。
「あ!でもね、でもね?悪い先生じゃないんだよ?さっきの検査も、本当に悪意は、一切ないんだ」
「……?」
ここで少しだけ、少年が困ったように眉を下げた。彼に先ほどまでの元気はもうない。思わず目を見開く。少年は少しだけ悲しそうに、困ったように、ポツリポツリと話し始めた。
「───…地球や月からきた子たちは、今までとは生活環境が全く変わる。だから、少しでも負担にならないように、あえてああしてるんだ」
「うん」
「精密検査をガッツリやるってなったら、まる一日か、下手したら二日くらいかかることもある。まあ、検査される方の負担が大きいよね。だから先生は、きたばっかの子たちにストレスと負担を極力かからないようにしたい、と考えた」
「うん…」
「それで、あの超スピード検査が出来上がったのでした☆」
思い返してみれば、部屋に入った時から、あの保健医は忙しなく動いていた気がする。それにしてもあの注射はないけど。
「とーっても良い先生なんだよ、名無先生!」
「名無先生って、言うんだ」
「そう!ちなみに、一応第一線からは退けてるけどちょっと前まではバリバリ腕利きのカースドワンで『治癒』の能力もちで、とてつもない数の任務をこなしてたんだよ。怪我とかは先生が治してれるから、何かあったらここきてね」
「え、にん…ちょっと待って、情報量が多い!」
「ごめん!ゆっくり、最低限、基本的なことから教えていくね。わかんないことあったらすぐボクに言って」
「わ、わかった…宜しくお願いします」
俊輔が頭を下げると、湖礼少年はきょとんと目を丸くして、
「シュンスケってなんかお堅いなあ。同級生なんだし、そんなにかしこまらなくていいよー、じゃ次はボクらが授業を受ける教室へ、ごーーー!」
と、言った。
「……同級生?!」
「そうだよ〜!あ、教室はこっち!はやくはやくー!」
「早!!ま、まって!」
てっきり、年下だと思ってた…!
人は見かけで判断しては行けない、俊輔は心の奥に刻み込み、少年の後を追いかけた。




