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第5話 邪教

「安心しなされ。先ほどのは冗談じゃよ。……はて?ところでさっき、儂は何の冗談を言ったのかの?」

「お爺ちゃん……何も覚えてないの?」

『フレイは優しいな。本当にボケ老人でも、演技をしている爺でも、どちらにしても碌でもない老人なのに構うとかエネルギー有り余ってるな』

(……は!演技の可能性があるのか!)


初対面で笑えない冗談を言われたけど、お互いの姿は鉄格子を介して見えてしまう距離だし、他に何もない牢屋の中、お話するか寝るぐらいしかすることはない。だったら、隣の人と仲良くなる方がお得だよね。


「ところで、お爺さんは何で捕まっていたの?」

「朝早くから市で布教活動していただけなのに、大勢の警備隊の人間に囲まれて、抵抗虚しく捕まったのじゃ。信じられん街じゃのお」

「ええ、酷い。布教しただけで捕まるなんて……あの、もしかして邪教の布教をしていましたか?」

「パル教じゃが?」

「あっ」

『パル教?』

(この国一番の邪教で、崖から飛び降りたり、毒を飲んだり、子供を虐待することで有名な宗教だよ)


でも邪教の布教をしていたって、とてもじゃないけど仲良く出来なさそう。パル教が親の子供はよく泣くことで有名だし、勧誘の仕方が強引なことでも有名。なんか唐突に話しかけてきて「あなたのカルマは汚れてませんか!?」とか言い出すし、勧誘しまくる割には秘匿にされている部分が多くて怪しい……あれ?そう言えパルマーさんの名前に似ている?


『俺が作ったパルパル教が生き残ってるな。おもしれー』

(そう言えば邪教の教祖だった!何で虐待が教義の密教なんて作ったの!)

『いや別に、作った当初はクヌート教を駆逐するための宗教だったから教義なんて適当だったぞ。にしても、パルパル教徒の老人か。……たぶんあの爺さん、めっちゃ強いぞ』

(え?嘘。そうは見えないけど……)


パルマーさんに聞くと、パルマーさんの作ったパルパル教という宗教が元だろうということで、パルマーさんがちょっと嬉しそうだった。そう言えばこの人、邪教の教祖でもあった……。この国の国教であるクヌート教を駆逐したかったとか言ってるけど、それを成し遂げていたらこの世界は凄く変わっていたんだろうなあ。


パルマーさんがこのお爺さんは凄く強いとか言い出したので、恐る恐る聞いてみる。もし本当に強い人なら、もっと地下の厳重な牢屋に入れられてないとおかしいはずだけど……。


「あの、お爺さんって強いんですか?」

「お嬢さん、それは何処で知ったのかな?急に会話を止めたと思ったら、空中を向いて喜怒哀楽して随分と楽しそうじゃないか」

(あっ)

『この爺さんボケたフリするの上手いな。たぶん俺の存在にも勘付いてるぞ』

「えっといえ、そんなに表情変わってましたか?亡くなった祖父に似ていたものでつい……」

「どうやら嘘が苦手なようだね。儂が強いか否かか。誰から聞いたのじゃ?」


お爺さんは私とお爺さんの部屋の間にある鉄格子を掴むと、ぐいーと伸ばして簡単にこじ開ける。え、嘘でしょ。どこにそんな力があるの!?というかこの人初対面で処女かどうか確認するヤバイ人じゃなかった!?逃げ、何処に!?


「さあ喋るのだ。何かしらお嬢さんは普通ではないのだろう?じゃあその理由が必ずあるはずじゃ。だから牢屋に入れられた。儂がここに来たのは、パルマー様のお導きだったのかもしれぬ」

「う、えっと、その……」

『隣に浮かんでいるパルマーさんのせいです、で良いぞ。後は俺から交信する』

「と、隣に浮かんでいるパルマーさんのせいです!」

「はぁ?パルマーさん?

……あ、ああ。声が!いえ、姿までは……。…………そうですか。こちらのお嬢さんが封印を。ああ、念じるだけでよろしいのですね」


う、何喋っているのか分からないけど、パル教の教祖とパル教徒って引き合わせたらダメなんじゃないの?しかも途中から念じるだけの会話になったのか、2人ともうんうんと頷いているだけだし、話しているんだろうけどその話の内容が伝わって来ないのって凄く気持ち悪い。


2人が話し始めてから、しばらくすると2人は唐突に笑ったりジェスチャーが大きくなる。仲良くなるのが早いよう。2人とも人生経験が豊富そうだし、同じパル教徒同士、分かり合えることとかあるのかな。


「いやー、お嬢さんを置いてけぼりで悪かったのう。じゃが事情は呑み込めた。今から儂は脱獄するから、お嬢さんはついて来なされ。パル教の本拠地まで連れて行ってあげよう」

「え、いや、その……」

「遠慮することはないぞ。

おっと、少し下がっておれ。……はあ!!」


話が終わったと思ったら、お爺さんは奥側の壁まで近づいて行き、脱獄の示唆をする。え、脱獄って重罪のはずじゃ、と思う間もなくお爺さんが力を溜め、壁を殴る。


するとドカンと大きな音が立ち、壁に大きな穴が空く。この牢屋は地下なので、城壁の向こうにあるのは当然土砂なんだけど……続いてお爺さんは、魔法でその土砂を吹き飛ばす。今のはたぶん、風属性魔法のはずだけど、凄い威力だ。そして私の牢屋から、地上までの、大きな一本道が出来上がってしまった。

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― 新着の感想 ―
[一言] フレイちゃん完全にパル教の巫女じゃん
[良い点] 大陸を股にかけていたパルパル教が邪教として迫害されてるのは悲し···どう考えても邪教なので残念ながら当然ですね。にしてもあそこまで滅族させてもなお主教として復興するクヌート教がダイオウグソ…
[一言] 面白い展開になってきました。
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