第25話 商人
黒衣賊の人は、合計で9人捕まえることが出来たのでその9人を縄で縛っていたら商隊のリーダーっぽい人が現れて私達に声をかけて来る。あまり多くは身に付けていないけど、高級そうな首輪と腕輪をしているからお金はいっぱい持ってそう。
「げっ、メイの商隊だったの?」
『知り合いか?』
「……昔、用心棒をしていただけよ。凄くケチなお嬢様だったわ」
メイさん?が降りて来る時に、オラージュちゃんがケチなお嬢様と言ったから、何となく人となりはイメージすることが出来る。……オラージュちゃん、私より2つ上で、冒険者歴が長いからこういう知り合いは多そう。ディスモアを活動拠点にはしていたみたいだけど、クラウスや王都には何度か滞在しているみたいだし。
「貴方達が黒衣賊を追い払って、捕まえたの?」
「はい、襲われているようだったので、加勢して黒衣賊を9人捕らえることが出来ました」
「あらそう。
最初に戦っていたのは、私達よね?何で貴方達が黒衣賊を持って行こうとしているのかしら?」
「……え?」
「貴方達が加勢しなくても、私達だけで黒衣賊は倒せた。そうよねルデック?」
「は!我らだけで撃退することは可能でした」
「え、ちょっと」
さっきまで一緒に戦っていた商隊の護衛のリーダーのルデックさんは、メイさんの問いかけに対して肯定する。確かに、商隊の護衛はみんな強かったし、助太刀が無くても無事だったかもしれない。だけど……。
『だけど、何だ?フレイがやったことは、獲物の横取りと同じだぞ?だから加勢する前に交渉しろと言ったじゃねーか』
(そんな、私はただ助けたかっただけで)
『ただ助けたいなら、既に商隊の無事は確認出来たわけだし、黒衣賊を連行するのは商隊の方でも問題ないよな?
ほら認めろよ。押しつけがましい救援行動でお礼が欲しかった、最低限でも黒衣賊を捕らえて王都に連行して報奨金が欲しかったと』
(……うー!)
パルマーさんに諭されるも、捕まえた黒衣賊の半分ぐらいは私達が持って行っても良い権利があると思う!縛られた黒衣賊を、メイさんが指示して護衛の人達が持って行こうとするけど、呼び止める。
「待って!追い払う時に戦った黒衣賊の人数は私達の方が多いから、せめて半分だけでも」
「何故ですの?貴方達に分け与える義理はありませんわ。特にオラージュ、貴方は冒険者でしょう?他人の獲物の横取りには人一倍五月蠅かった貴方が、今では獲物の横取りをする側とは落ちぶれたものですわね」
「……っ!?」
『おー、あのお嬢様めっちゃ煽るな。全員殺して荷台と馬車を奪おうぜ』
(パルマーさんも落ち着いて!?それやってること黒衣賊と同じだよ!?)
『今なら全部黒衣賊に罪を押し付けられるだろ。
あと交渉の仕方が弱腰過ぎる。最初は全部持って行くでも良いんだよ。折半が最終的な目標ならそれより上を吹っ掛ける癖をつけろ』
何も言い返せずに黙っていると、メイさんは馬車に戻ろうとするのでせめて義勇軍の評判を上げるために、宣伝して貰おうと思いつく。
「あの、せめて義勇軍のフレイ隊が黒衣賊の捕縛に協力したことは宣伝して貰えますか?」
「幾ら?」
「え?」
「だから、貴方達の宣伝をするとして、貴方達は幾ら払えるのか聞いているの。宣伝させるなら、お金を出しなさい。お金がないなら、目障りだからさっさと去ってくれる?」
だけどメイさんは断って、馬車の中に戻っていってしまった。……私の行いが、軽率だったのかな。そもそも、恩着せがましかったよね。手柄を全部持って行かれるのも、当然と言えば当然なのかな。
しょんぼりしていると、私の肩を叩いてオラージュちゃんが「今回は運が無かったと思いなさい」と言って来る。オラージュちゃんは、メイさんの知り合いらしいけどオラージュちゃんもこういう想いをしたのかな?
とりあえず今日はもう遅いし、この地で野営することを伝えて私も野営の準備に取り掛かろうとすると、また馬車から降りて来たメイさんがオラージュちゃんの方に話しかける。そしてすぐ後に、私の方に近づいてきて、先ほどまでの冷酷な表情は何処へやら優しい笑顔を向けて来た。
『オラージュの知り合いだと聞いたから、いつかは気付くとは思っていたが、案外早かったな』
(え、何が?)
「義勇軍隊長のフレイ様、先ほどの件で話し合いの余地が出来ましたので私の馬車の中で話し合いをしませんか?」
「え、あ、はい。良いですけど……」
「ではこちらにどうぞ。3人で入ると少々手狭ですが……」
何故か、私に対する言葉遣いも丁寧になっているし、オラージュちゃんが何か言ったのかなと思ったらオラージュちゃんが凄く冷ややかな目でメイさんを睨んでいたし、何でこんなに豹変したんだろう。メイさんに言われるがまま、馬車の中に入ると夢見亭で泊まった良い部屋より更に広くて、外見からの広さと一致しない。
『金かかってんな。この馬車を奪えれば軽く1年分の軍資金にはなるぞ』
(パルマーさんはどうしてそんなに蛮族思考なの!でも凄い……)
馬車の中をキョロキョロしていると、丁寧にお茶を出される。う、凄い高そうだけど飲んで良いのかな?どうぞって言ってるし、飲んでも大丈夫だよね!?




