第22話 義勇軍
「や、やっと王都に着いた」
「違うわ。あそこは王都の西にあるクラウス城塞よ。
でも、もう黒衣賊の心配はないかしら」
ディスモアから脱出した集団は、道中で力尽きた人を回収して、王都の西側にある大きな城塞都市、クラウスに到着した。レイナール王国の中で、王都に次ぐ2番目の人の多さということで、黒衣賊に襲われていないし、私達がクラウスに着いたのとほぼ同時に、王都から大軍が派遣されて来た。
『ざっと見ると5万人ってところだな。騎馬が多いし、間違いなく主力級部隊だ』
(凄い……ずらーって、甲冑を着ている人がいっぱいいるよ!)
『あー……この中で純粋に戦闘力が高そうなのは先頭の男だけだな。それ以外は牢屋であった爺さんの方が強いぞ』
(え、嘘!?)
集団の一番前を、騎乗して先導している最中に、そのレイナール王国軍と接触。先頭の男の人が話しかけて来るけど、まだ若いしめっちゃカッコいい。
「大丈夫だったか!?どこから逃れて来た難民だ?」
「ディスモアからです。
『ちゃんと避難民誘導部隊のリーダーのフレイですと言え』
あ、避難誘導部隊のリーダーのフレイです。ディスモアからの避難民768人を護衛の部隊654人と共にここまで連れて来ました」
「ディスモアか……西への街道からは外れた位置だな。
ここまでご苦労だった。水と僅かだが配給食がある。しばらく休むと良い」
軽く二言三言だけ話した後、去ろうとする軍の男の人を引き留めるため、大きな声で私は喋る。
「あの!私達黒衣賊に対抗するための義勇軍を立ち上げるつもりなんです!ですから王国軍と一緒に、黒衣賊と戦っても良いですか!?」
『よし満点。演技指導が生きたな』
「道中、夜中に抜け出して何をやっているかと思えばそんなことをしてたのね」
『一応、戦闘訓練もしてたぞ。まだかなり戦闘は不慣れだけど、初心者にしてはよくやれてる方だな』
「あの靴、靴底に刃が仕込んであるのよね?全然戦闘慣れしていないように見えるのに、奇襲が出来るのは詐欺だわ」
「ああ、分かった。一緒に戦って、街を取り戻そうではないか」
『にしても胡散臭いおっさんだな。見た感じこの軍のトップだけど、どこぞの貴族の馬鹿息子感が否めない』
「5万の軍の大将ならそれなりに素質も求められる……はずよ」
『どーだろ、鎧とか無駄にピッカピカだし後続の軍もほとんど鎧に傷1つないのは笑うわ。1万人の黒衣賊にすら負けるんじゃね?』
「……ディスモア周辺だけでも5千人は居たことを考えると、1万人は十分にあり得る数ね」
何か後ろがずっと小声で五月蠅かったけど、一緒に戦おうと言ってくれたのを確認して後ろの集団に義勇軍を立ち上げることを説明。みんな最初は戸惑っていたけど、仇討ちに乗って来る人は意外なほど多く、まだ一段落していない内に希望者は300人を超えた。
(あばばばば、希望者がいっぱいいるんだけど管理出来ないよ!?)
『俺が全員覚えておくからフレイは1人1人に握手して一緒に頑張りましょうと声をかけていけ。アイドルは握手するのが仕事だ』
(アイドルって何!?っていうかこの人数の命を私が預かるの!?)
『そうだな。384人のこれからの人生を左右するのはお前だな。とりあえずもう一回あの男に会いに行って兵糧の確保をしてこい』
クラウス城塞の中に入って、たくさんのお水とパンを貰って一段落したころには義勇軍の数は384人になっていて、そのトップが私になったということに嬉しさよりも怖さを感じる。……たぶんこれは、先に言い出した者に集まる。特に私の場合、王国軍の人と話して義勇軍を立ち上げることを伝えているから、他の人が立ちあげた義勇軍よりも人が集まったんだ。
「……オラージュ班も参加するわ。頼りにしてくれても良いわよ?」
「え、本当!?凄く頼りになるし、嬉しいよ。
それじゃあ義勇軍の数は、これで合計393人かな?」
『400人には届かなかったか。まあこれからどんどん増やせば良いし、その過程でフレイの名前を売って行け』
(……ねえ、何かどんどん表情を取り繕わないといけなくなってきたんだけど?)
『それが大人になるということだ。良かったな。また1つ大人への階段を上ったじゃないか』
義勇軍に入ってくれた人は、避難時に非戦闘員だった人もいるし、出身はバラバラだけどみんな黒衣賊に居場所を奪われている。路地裏で知り合った30人の中で、私の義勇軍に参加してくれた人の数は26人もいたし、彼らが最初に参加すると声を上げてくれたから結果としてピアネリさんが立ちあげた傭兵団や、他の人が立ちあげた義勇軍よりも多くの人が参加した。
……ちょっと前の私なら、素直に人が増えたことを喜んでいたと思うけど、パルマーさんに憑りつかれてから少し頭が良くなったせいで考えられることが増えてしまった。何か寝ている間とかに、変なこととかされてないよね?
『してないしてない。まあ最初の学習装置で知識が詰め込まれたから、それをゆっくり消化しているだけだろ。あれが成功して良かったな』
「あれ、失敗することあるの!?そういえば確かに、丸1日ぐらい寝てたっけ」
『下手したら永遠に起きなくて餓死していたな』
(!?!?!?)
パルマーさんに衝撃の事実を聞かされながら、今後のことを考える。今すぐ戦場に出て行って、王国軍と戦うのも1つの手ではあるけど……そのまま戦場で戦い始めて、良いのかな?




