第10話 4人目
「色々と突っ込みたいことはあるけど、とりあえず悪い霊じゃなくて良かったわ」
「悪い霊じゃなければそれで良いのかよ」
「悪い霊だと、何人にも憑りついては殺しを繰り返すのよ。
ところで、もっと質問しても良いかしら?」
「フレイが寝ている間なら、大体の質問には答えるぞ。それをフレイに伝えたら怒るけど」
「……怒ったら、何をするつもり?」
「相手の考えていることがある程度分かるから、黒歴史や隠し事なんかを読み取って世界中の至る所で暴露する。
というわけだから盗み聞きしているネーヴェは部屋に入って来い。今なら声が届いているだろ」
パルマーは、ネーヴェにも自身の姿が見えるように調整し、ネーヴェの前にも姿を現す。もっと前からネーヴェにも姿を見せることは出来たが、とある予想からパルマーはネーヴェの前からは姿を消した状態を維持していた。
「……何で、分かったの?」
「うわ、本当にいた!扉の前で盗み聞きとかあり得ないわよ!」
「オラージュは少し黙ってろ。1つ確かめたいことがある」
パルマーの呼びかけに、扉を開いて入って来るネーヴェは観念した顔をしていた。そしてネーヴェは災厄の魔王と呼ばれた存在が、ただのおっさんであることにちょっとばかり驚愕した。
「ネーヴェとフレイは同じ村に住んでいたんだよな?そこに盗賊団が襲って来て、逃げ切れたのはネーヴェを含めても数人。この認識は間違っているか?」
「間違ってないけど、正確に言うなら逃げ切れたのは私とフレイを含めて5人」
「じゃあネーヴェが盗賊を村に手引きした、というのは間違いないな?」
「え?ちょ」
「違うけど、何でそう思ったの?」
「財産持ち出す余裕があっただけでも怪しいのに、村の中で上の立場じゃないと手引きするのは難しいことを考えたら答えは一択だろ。あとはお前が俺と同類だと感じたからだな」
「……同類?」
「目的のためなら人を殺しても、何なら大量殺人や身内殺しをしても何とも思わなさそうなところ。
というわけでネーヴェはフレイが災厄の魔王を解放したことを周囲の人間に言うと、漏れなくネーヴェも犯罪者になるからフレイと俺に協力しろ。お前の目的については周囲に喋らないからさ」
パルマーがネーヴェに対して確かめたことは、盗賊団を手引きした存在がネーヴェ本人であるか否か。それにネーヴェは否定の返事をするも、その後のパルマーの言葉に黙ってしまった。唇を噛み締めるその姿は、盗賊を手引きしたことを肯定しているようなものだった。
そもそもパルマーは相手の思考がある程度読み取れることを事前に話している。この確認作業は、意味のない確認であり、目的はオラージュにネーヴェの本性を知らしめるためだった。そのことにネーヴェが気付いた時、思わず拳を握りしめていた。しかしネーヴェよりも強いオラージュが一方的に打ちのめしていたことを思い出し、ネーヴェはため息をつく。
「と、盗賊を手引き!?やっぱり悪い霊と、悪人?だわ!その交渉は何なのよ!私の部屋でヤバそうな話をしないでよ!」
「歴史上のヤベー人物から残っている遺産を聞き出そうとする胆力のある奴にそれを言われたくはないな。あ、話は終わったからオラージュは質問どうぞ」
この話を聞いていたオラージュは、警備隊にこの話を伝えようか考えるも、ここで2人の悪事、存在を暴いたところで一銭の得にもならないと判断し、こちらもため息をついた。
「すっごく気になることがついさっき増えたけど……とりあえず憑りついた人物の名前は全員覚えてる?」
「1人目がジュディット、2人目がガルロン、3人目がウージニーで4人目が今回のフレイだな」
「……全員有名人だけど、隠す気はなかったの?」
「お前ら2人とも、目的のためには金が必要なんだろ。なら手っ取り早く味方に付けたいから、実績をアピールするわ」
パルマーが告げた3人の名前は、時代は違えど全員が有名であり、良くも悪くも大陸中に名を轟かせた人物名である。そのことを知ってしまったオラージュとネーヴェは、もうフレイを普通の目で見ることは出来なくなってしまった。
特にネーヴェはパルマーに悪事を暴かれているため、しばらくの間フレイと同行すると決めなければならなかった。一方でオラージュは、フレイがどう考えているのか、どういう人間なのかをよく知った上で、フレイのパーティーメンバーになるかどうかの返答をするとパルマーに伝える。
この3人が騒いだり話し込んだりしている最中、宿屋の高級ベッドにダイブして以降、ぐっすりと眠っているフレイは、朝まで目を覚まさなかった。
翌日になり、朝食をフレイとネーヴェとオラージュの3人で食べている時、自然と3人で一時的にパーティーを組む流れとなる。水属性魔法が使えるネーヴェと、雷属性魔法が使えるオラージュ。この中で一番戦闘力が低いフレイは、この2人とパーティーを組めたことを、ラッキー程度にしか思わなかった。




