第9話 問答
パルマーさんとオラージュちゃんの戦闘は、オラージュちゃんが3度目のパンチを繰り出し、それを真正面から受け止めたパルマーさんがオラージュちゃんを後方に投げたことで終わった。地面に伸びるオラージュちゃんに大丈夫か聞くと、冷静になったみたいで私に視線が合う。
「あれ、何なの?とてつもない悪霊だと思ったんだけど」
「えっと、パルマーさんと言って昔この大陸の王様だったみたいだよ」
『さて、金を払うと2回も言ったんだ。持ち金の半分は出して貰うぞ』
「待って、そんなお金受け取らないよ!パルマーさんも意地悪し過ぎ!」
『は?唐突に殴られたのこっち側なんだが?慰謝料ぐらい貰わないと割に合わないのだが』
パルマーさんが凄い目で私を睨んで来るけど、とりあえずオラージュちゃんの手当てをする。パルマーさんが集めた薬草を取っておいて良かった。
「ところで、名前を教えて欲しいかな?たぶんオラージュちゃんって名前なんだと思うけど」
「……オラージュ・フードルよ。得意な魔法は雷属性魔法。4等級冒険者で、年は15歳よ」
「15歳!?4等級!?
あ、私は名前はフレイ。13歳で今日冒険者になったばかりだよ」
周囲の人が名前を言ってたから、確証は持ってなかったけど、名前はオラージュちゃんで確定。年齢は私より2歳も年上で、4等級冒険者ということはかなり強い冒険者なんだね。
確かディスモアには3等級冒険者までしかいないし、上に行けば行くほど人が少なくなることを考えると、この街で上から2番目って凄い。パルマーさんが見えているし、声も聞こえているのかな?
『ついでに言うと、フレイは昨日故郷の村が盗賊団に襲われて壊滅し、唯一の肉親である母親が生死不明で、現状一文無しだ。だから迷惑をかけたと思うなら今日の宿代だけでも貸してくれないか』
「……分かったわ。私もあなたやこいつに聞きたいことがあるし、宿代ぐらい払うわよ。私の部屋は広いから、1人増えたところで変わらないし」
慰謝料とかは受け取らないよと伝えたら、パルマーさんが『じゃあ宿代だけでも』とオラージュちゃんと交渉して、今日の宿を確保してくれた。もう依頼を受けるには遅い時間だったし、助かった。
……でもこうして振り返ると、昨日と今日だけでも私の人生、とんでもないことになったと思う。う、昨日は寝れなかったせいで、今になって眠気が来たよ。
『昨日からほとんど寝てなかったし、早く宿の方に案内してくれ』
「分かったわよ。じゃあ夢見亭まで連れて行くわね」
「え、そこネーヴェちゃんと同じ宿屋だ」
「ネーヴェちゃん?あの子?」
「うん、そこで青ざめている子。……ネーヴェちゃん、パルマーさんが見えないから」
ネーヴェちゃんとオラージュちゃんに助けられながら、夢見亭へと移動する。一泊3000円だけど、それは一番ランクの低い部屋で、オラージュちゃんは一泊1万円の高い部屋に泊まっていた。私のために追加料金を払ってくれて、食事まで奢ってくれたからとても良い人なのは分かった。
「財布の中、あと83円ってどういう生活してたのよ……。
あ、ネーヴェさんも食べて良いわよ。私こう見えて、結構稼いでいるし」
「あ、はい……ありがとうございます」
「お肉おいしー!ねえ、もっと食べて良い?」
「……3000円までね」
お腹いっぱいになるまで食べて、そのままオラージュちゃんの部屋まで移動してベッドに飛び込んだらもう眠気には耐えられない。ぐぅ……。
フレイが寝静まったあと、オラージュは改めてフレイの横で浮いているパルマーに対して話しかける。
「パルマーって名前は聞いたことがあるわよ。邪教パル教の教祖で、かつ史上最悪の魔王の名前がパルマー。その本人という認識で間違いない?」
「間違いないな。何か聞きたいことでもあるのか?」
「単刀直入に言うと、この大陸を支配した魔王、パルマーの隠し遺産というのがあるのか聞きたいわね」
「あったぞ。もう使ったけど」
「……まあ、あったらこの子のために使ってるわね。それで、何が目的なのかしら?」
「いや、目的なんか無いぞ?強いて言うなら、他人の四苦八苦波乱万丈な人生を安全な場所でニヤニヤしながら眺めるだけだな」
オラージュが一番最初に気になったことは、パルマーが史上最悪の魔王、その本人かということ。そして遺産か何か隠し持ってないかということ。もしも持っていれば、その地までの護衛と財産を持ったことで狙われるフレイの警護を買って出るつもりであった。
しかしそのような遺産はなく、パルマーの目的を聞いてドン引きしたオラージュは、若干フレイを憐れむ。そして次に気になっていたことをパルマーに尋ねた。
「……もしかして、フレイさんの前にも憑りついた人というのはいるのかしら?」
「そりゃ1100年の時間があったしな。何人かには憑りついたし、その生涯を見届けている。だから勝てないのは当然だな。ただここ200年は外に出ていなかったから色々と新鮮だ」
それはフレイの前にも憑りついた人がいたのかということ。この質問に対してパルマーは頷きながら答え、フレイの前の犠牲者がいたことを明らかにした。




