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悪魔を人間にする方法 〜うちに来た悪魔は、常識だけがなかった〜  作者: 蒼


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3/22

3話 まずは見た目から

 朝起きると、体の節々が痛かった。

 床の冷たさに身震いする。

 自分の部屋なのに、自分だけ床で寝ていた事実が腹立たしい。


 起き上がると、ベッドではレグがすやすや眠っていた。

 こいつ、いつの間に俺の寝床を奪いやがったんだ。

 その姿に手が震えたが、ひとまず胸に手を当てて深呼吸した。


「おい、レグ! 起きろ!」


 布団をバシバシ叩く。

 レグは目をこすりながら、のろのろと起き上がった。


「悪魔も寝るんだな」

「練習している」


 真顔で言うから、冗談なのかどうかわからない。

 でも、少なくともまったくやる気がないわけではないらしい。


「まあいい。言いたいことは山ほどあるけど、とりあえず今日は会社も休みだ。一回話し合おう」


 レグはふわりと浮き上がると、ベッドの上に座り直した。

 一応、ちゃんと俺のほうを向いて座っている。


 昨日はそれどころじゃなかったが、改めて見るとレグは妙に顔がいい。

 しかも体格までいいのが腹立つ。


「お前のビジュアル、なんかムカつくな」

「なぜだ」

「俺が床で寝てんのに、お前だけ顔も体格も仕上がってるからだよ」


 レグは自分の体を見回した。


「変えたかったら、変えられるぞ」

「えっ、そうなのか?」

「ああ。女にもできるぞ」

「……いや、やめとくか」

「いいのか?」


 引き下がったのに、そこで引き留めるなよ、と思った。


「……一旦、見たりはできるのか」

「できる」


 そう言ったきり、レグは動かない。


「変わらないのか?」

「詳細がわからない」

「詳細?」

「髪型とか」

「ああ、じゃあ、肩ぐらいの長さで」


 それを聞いたレグは、空中で指を左右に動かした。


「あとは?」

「えっと、それなら綺麗めで」

「わかった。服装はスカートでいいか」

「あ、ああ」


 レグは答えを待つたびに、わずかに首を傾げながら指を動かした。

 試しているというより、入力待ちの機械みたいだった。


「あ、待った!」


 俺が言うと、レグの指が止まる。


「服にドクロ柄入れるなよ」


 レグの指が動いた。

 絶対入れる気だっただろ。


「じゃあ、いくぞ」


 レグは目を伏せ、少し集中しているようだった。


 少しだけ鼓動が速くなる。

 何を待っているのか、自分でもよくわからないのが、一番居心地が悪い。


 前に見たのと同じように、レグの周りで一瞬、空気が弾けた。


 目の前には、肩までの髪をした、綺麗な顔立ちの女の子が立っていた。


「要件は満たしたぞ」


 要件は満たしたのかもしれないが、どう見ても幼すぎる。


「いや、そうだな。俺が年齢指定しなかったのが悪かったな」


 雑な注文で伝わると思った俺も悪い。

 こいつは空気を読まないくせに、条件だけは妙に律儀に拾う。


 だが、目の前にいるのは、どう見ても幼い女の子だった。


「お前はこんなのが好きなのか」

「違う!」


 一気に肩の力が抜けた。


「……とりあえず元に戻れ。なんかいろいろ事故ってる」

「わかった」


 レグは元の姿に戻った。


「とりあえず、格好をどうにかしないとな。服でも買いに行くか」


 俺はため息をつきながら、レグのダメージまみれの服を見た。


「服はあるぞ」

「その服のこと言ってるなら却下だ。ここで暮らすなら、人間っぽい格好が必要だ」

「なぜだ」

「俺が困るからだよ。お前が悪魔丸出しで歩いてたら、また俺が呼び止められる」


 レグは首を傾げた。


「ちなみに、お前、お金は持ってるのか」

「持ってない」

「それこそ、お金を出したりはできないのか」

「それはできないようになっている」

「悪魔も真面目だな」

「そういうものだ」


 悪魔のくせに、そこだけコンプラは厳しいらしい。

 こっちは服代で地味に財布が痛むというのに。


 ひとまず俺の大きめの服をレグに着せて、玄関に向かった。

 靴だけはサイズが合わないから、ドクロ柄の靴を履かせて外に連れ出す。

 その時点で、もう帰りたかった。

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